かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 41

2022-04-03 10:22:37 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の6(2017年11月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【夢監視人】P32~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放
     

41 永遠の静止のごとく月は泛き荒船山は狸あそばす

     (レポート)
 39番歌(夢監視人われすこしまだ若ければ星尾峠の名に引かれ来し)に詠われた星尾峠のある荒船山にいま月がのぼり、月光のもと狸たちがあそんでいる、そんな詩的な風景が目に浮かんだ。
 渡辺松男の短歌は、哲学を語ることも抒情することも、ユーモアでたのしませることも風景を描くことも巧みで、読者はすっかり松男ワールドに酔うのだが、この一首などは特にそう思う。「荒船山」の固有名詞が静寂の夜の童話の世界を引き締めているように思う。(真帆)


     (まとめ)
  荒船山は群馬県甘楽郡下仁田町と長野県佐久市に跨る標高1,423mの山である。南北約2km、東西約400mの安山岩でできた台地で、平坦な頂上部と切り立った崖のある山容が、荒波を割って進む船を思わせることから、その名が付けられたといわれている。(Wikipediaより抜粋)
 40番歌(はるかより木の実匂いて来たりけり二足歩行のけものの乳房)の幻視の古代の女に引き続いて、更に遠い時間を作者は思っている。空には永遠に静止しているかのように月が浮いている。荒船山の頂上は平坦な岩の台地で、月光を浴びて狸が遊んでいる図だろうか。「証城寺の狸囃子」を思い出したが、あの歌詞にもこの歌にも明示されていないが、月は満月だろうか。真帆さんのレポートの荒船山の固有名詞と童話の世界の関連の考察が面白かった。私は宮沢賢治の世界をも連想したが、渡辺松男と賢治とは共通項も多いが違いもたくさんあって、興味深い。(鹿取)

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