かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 317

2024-09-12 14:51:20 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究38(2016年5月実施)
    【虚空のズボン】『寒気氾濫』(1997年)128頁~
     参加者:S・I、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、
        Y・N、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:S・I   司会と記録:鹿取 未放

317 あいまいな部分は風にとびてゆく疾歩にて君はひかる目となる

     (レポート)
 作中の君は性別も年齢も判らない。君は風に疾歩してあいまいな物事には囚われない、なにか人間離れして風の精霊のようでもある。リアルなのは君の目がひかっているということである。風音の「 どっどど どどうど どどうど どどう…」で始まる「風の又三郎」という童話を思い出す。風の又三郎は疾歩して風とともに現れ、去っていく。物の本で読んだのだが、宮沢賢治その人も原野を飄々と疾歩していたという。もしかして君は、宮沢賢治のように現実感の薄く、目を光らせて自然の事物と交感出来る人なのかもしれない。(S・I)


    (当日意見)
★奥さんと歩いている場面。(鈴木)
★ここで「君」と言っているのは作者自身のこと。(慧子)
★君は作者でも解釈はできると思いますが、妻なり恋人なり対象の方が面白い気がしま
 す。「あいまいな部分は風にとびてゆく」はレポーターとは違って、君が「あいまい
 な物事には囚われない」精神性を言っているのではなく、君が速く歩いているので輪
 郭がくっきり〈われ〉から見えなくなって、ただひかる目としてあるということだと
 思う。(鹿取)



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