かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 156

2023-12-11 18:05:45 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究 19  2014年9月 
   【夢解き師】『寒気氾濫』(1997年)67頁~
   参加者:S・I、泉可奈、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
                       

156 抽出しのなかに隠れているわれを大声で呼ぶ満月ありき

     (レポート)
抽出しのなかに隠れている私をかつて大声で呼ぶ満月がいたのだ。前の二首で「われ」は鼠になっている。隠れ場所を探し求めていたが「抽出し」という隠れ場所をみつけたようだ。さて今年、二〇一四年九月八日の仲秋の名月とは生憎の雨で出会えなかったが、翌日は満月が膨張して大きく見えるというスーパームーンに出会えた。ニュースでは世界中で撮影されたスーパームンが紹介された。世界中の人々を魅了した満月。満月には人を呼ぶ不思議な魅力があるのだろう。(真帆)


     (当日意見)
★私は鼠に限定しなくてもいいんじゃないかと思っています。(可奈)
★私も鼠じゃなくて、勉強好きの作者とかいろいろ考えてはみました。でもスペースも
 限られているので鼠を選んだということです。(真帆)
★太陽はそこにあるものを照らすけど、お月さんはそこにないものを照らすってどこか
 で読んだ気がするのですが。月は照らすけど満月だと呼ぶんだと思う。(慧子)
★まあ、隠れていないで出てらっしゃいと呼ぶのよね。鼠って解釈だと、抽出にいても
 あまり面白くないので、私は人間の〈われ〉が抽出に隠れているのだと思うけど、ど
 うして〈われ〉は抽出の中にいるんだろう。仕事が辛いから?他人と会うのが嫌だか
 ら?(鹿取)
★書斎のテーブルか何かに月が射している情景を思いました。自分の位置は光が届いて
 いないので隠れていると表現した。そして光が当たることを呼んでいると表現したの
 かなと。太陽が照らすのは普通だけど、月の光が闇の中から照らしているというのは
 呼びかけているという気がするんです。自分の心の暗闇に月が呼びかけているよう
 な。(鈴木)

コメント
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