かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 160

2023-12-15 18:59:05 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究 19  2014年9月 
   【夢解き師】『寒気氾濫』(1997年)67頁~
   参加者:S・I、泉可奈、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
                       

160 欠陥とみなされているわが黙も夕べは河豚のようにすずしい

      (レポート)
 私の沈黙を欠陥だと見なしているものがいる。けれどその私の黙しも、夕方ともなればまるで河豚のようにすずしいものだ。結句に清々しさの実感があると思う。(真帆)


     (当日意見)
★皆さん意見がないようですけど、あまり考えすぎないでいいんじゃないですか。〈わ
 れ〉が寡黙なことを周囲では(主に職場でしょうかね)欠陥のようにみなしているけ
 れど、この寡黙も夕べは河豚のように涼しいと素直に読みました。「夕べは」ととり
 たてているのは職場がはねた後ということでしょうか。「すずしい」というのも松男
 さん愛用の感覚表現で、気温や衣服のすずしさとかを超えた、何か手ざわり感のある
 言葉なのですが説明するのが難しい。でも、共感できます。同じような「すずしい」
 はこれまでにも出てきたし、後の歌集にも出てきます。この160番歌は寡黙と河豚
 の取り合わせが余裕があるようで面白いですね。(鹿取)
★河豚刺しを思っちゃうんですよ(笑)。お皿が透けて見えるでしょう。あの涼しさった
 らないですよ(笑)。(鈴木)


      (まとめ)
火口原わが耳となるすずしさよ夏の夜深く落石つづく『寒気氾濫』
透りたる尾鰭を見れば永遠はすずしそうなり化石の石斑魚(うぐい)『泡宇宙の蛙』

コメント
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