
Steve Kuhn (スティーブ・キューン)の新作はロン・カーター,アル・フォスターらとのトリオ編成によるBIRDLAND でのライブ盤です。実はこのメンバーでのライブ録音は以前に一度行われています。それは1986年の VILLAGE VANGUARD での2枚のライブ盤で,1枚は『 Life’s Magic 』(Black Hawk)であり,もう1枚は『 The Vanguard Date 』(Owl Time Line )であります。共に同日別セットでの録音ですが,前者が比較的容易に手に入るのに対し後者はかなりの高額取引商品になっています。因みに2枚とも例の『幻のCD 廃盤/レア盤~』に掲載されています。
前回のVILLAGE VANGUARD盤からちょうど20年。これは偶然のことではなく,キューンが以前から暖めていた20周年記念企画であったようです。今回取り上げられた曲の約半数は20年前にも演奏された曲で,キューンとしてはあの頃よりも今はずっと進化しているので,ぜひ同曲を再演したかったようです。今回の録音にあたりキューンが一番のお気に入りという Hamburg-D Steinway をわざわざ会場に運び入れ,レコーディング・エンジニアにキャサリン・ミラーを迎い入れたようです。
でも,こんな用意周到な準備をしたわりにはリハーサルはしないんですね。
「我々はバードランドでのライブに先立ち,リハーサルというものをしなかったんだよ。我々はただ本番で演奏するのみ。お互いに最大級のリスペクトをしているからね。我々は全員20歳老い,そして少しばかり円熟みを増したみたいだ。いや本当に楽しい一週間だったよ。」(スティーブ・キューン)。
VILLAGE VANGUARD盤(とは言っても『 Life’s Magic 』しか持っていませんが)の印象が薄かったし,なにしろ苦手なロン・カーターがバックですから一抹の不安はありましたが,はたして内容は素晴らしい出来でした。基本的に20年前の演奏と大きく変わっていませんが,キューンの歌心に益々磨きがかかり,紡ぎ出されるアドリブ・ラインが全て歌っているんです。キューンがこんなにも暖かいメロディー・メイカーに変化していったのは90年代のReservior あたりからだと思うのですが。『 Remembering Tomorrow 』や『 Trance 』の頃はもっと温度感が低く,ナルシスティックだったように感じます。それから,本作の方がロン・カーターのソロ・パートが多めです。速いソロでのピッチの悪さは相変わらすですが,ソロ自体はまあまあ面白いです。
兎に角,全編歌心満載で気持ちよくスウィングしています。そう,あれですね,キューンなんかはどんなに体調が悪かろうが,どんなに泥酔していようが,ピアノを弾きだすと自然に美しいメロディーが出てきちゃうんでしょうね。もう体の隅々まで美旋律が沁み込んでいて,無意味なアドリブ・ラインなど弾こうにも弾けない,みたいな。
ということで,近年のキューンの作品の中では一番の愛聴盤になりそうな傑作ライブだと思いました。
Steve Kuhn 『 LIVE AT BIRDLAND 』 2007 Blue Note
Steve Kuhn (p)
Ron Carter (b)
Al Foster (ds)
前回のVILLAGE VANGUARD盤からちょうど20年。これは偶然のことではなく,キューンが以前から暖めていた20周年記念企画であったようです。今回取り上げられた曲の約半数は20年前にも演奏された曲で,キューンとしてはあの頃よりも今はずっと進化しているので,ぜひ同曲を再演したかったようです。今回の録音にあたりキューンが一番のお気に入りという Hamburg-D Steinway をわざわざ会場に運び入れ,レコーディング・エンジニアにキャサリン・ミラーを迎い入れたようです。
でも,こんな用意周到な準備をしたわりにはリハーサルはしないんですね。
「我々はバードランドでのライブに先立ち,リハーサルというものをしなかったんだよ。我々はただ本番で演奏するのみ。お互いに最大級のリスペクトをしているからね。我々は全員20歳老い,そして少しばかり円熟みを増したみたいだ。いや本当に楽しい一週間だったよ。」(スティーブ・キューン)。
VILLAGE VANGUARD盤(とは言っても『 Life’s Magic 』しか持っていませんが)の印象が薄かったし,なにしろ苦手なロン・カーターがバックですから一抹の不安はありましたが,はたして内容は素晴らしい出来でした。基本的に20年前の演奏と大きく変わっていませんが,キューンの歌心に益々磨きがかかり,紡ぎ出されるアドリブ・ラインが全て歌っているんです。キューンがこんなにも暖かいメロディー・メイカーに変化していったのは90年代のReservior あたりからだと思うのですが。『 Remembering Tomorrow 』や『 Trance 』の頃はもっと温度感が低く,ナルシスティックだったように感じます。それから,本作の方がロン・カーターのソロ・パートが多めです。速いソロでのピッチの悪さは相変わらすですが,ソロ自体はまあまあ面白いです。
兎に角,全編歌心満載で気持ちよくスウィングしています。そう,あれですね,キューンなんかはどんなに体調が悪かろうが,どんなに泥酔していようが,ピアノを弾きだすと自然に美しいメロディーが出てきちゃうんでしょうね。もう体の隅々まで美旋律が沁み込んでいて,無意味なアドリブ・ラインなど弾こうにも弾けない,みたいな。
ということで,近年のキューンの作品の中では一番の愛聴盤になりそうな傑作ライブだと思いました。
Steve Kuhn 『 LIVE AT BIRDLAND 』 2007 Blue Note
Steve Kuhn (p)
Ron Carter (b)
Al Foster (ds)
この作品は’86年の頃のものだと思っていたんですが、新録音だったということを知り、驚きました。
いずれ注文してあるので、届くとは思いますが、クリスさんの記事を読み、聴くのが楽しみになりました。
先に聴いた国内盤の『ジ・アーリー・セヴンティーズ』も一風変わっていて面白かったのですが、個人的には74年『トランス』、89年『オーシャンズ・イン・ザ・スカイ』、97年『デディケイション』などを好んで聴いています。
キューンはいいですね。
それでは、また。
>兎に角,全編歌心満載で気持ちよくスウィングしています。
私もそう思いました。かなり、楽しんで聴いています。
というこで、TBさせていただきます。
その昔六本木のピットインでスティーブジョーダンを見に行った時多分この人だと思います。なんせ、ドラマーを見に行くので、私にとってドラマーがメイン。あとは全てサイドマンです。アルバムをその頃2枚出してますが(同じメンツで?)ライブは迫力あったなあ。
スティーブジョーダンは軟体動物かと思った。2本しかない手が長く、グニャグニャ別の生き物のようでした。このグルーブ感・・・・日本人には無理だと感じました。
スイングって?何って感じです。聞いてみたいアルバムですねえ~こんなに年取っちゃうなんて・・・・ショック!!自分も年とってんだけどね。
>国内盤の『ジ・アーリー・セヴンティーズ』も一風変わっていて面白かったのですが、個人的には74年『トランス』、89年『オーシャンズ・イン・ザ・スカイ』、97年『デディケイション』などを好んで聴いています。
『ジ・アーリー・セヴンティーズ』は数日前に買いましたが,まだ未開封です。<zoo>も演奏しているみたいですね。criss crossの新譜やバッソ+ボッソの新譜などと一緒に,週末まとめ聴きする予定です。
ナカーラさんの愛聴盤の三枚。ボクも全く同じです。もう一枚付け加えるとすると98年の「countdoun」かな。
キューンのmy bestは『デディケイション』です。一曲目のタイトル曲の最初の一音から凄く気持ちがよいです。ボクはオーディオに無頓着ですが,あのピアノの丸みのある厚い音って,好きなんですよね。録音評価としても素晴らしと思うのですが。
もし,この新作が気に入られたら,ぜひ今度は「dedication」を聴いてみてください。すばらしい出来ですよ。
では,こちらからもTBさせていただきます。
あの~,ボクは紹介した人はスティーブ・カーンではなくスティーブ・キューンですが。
スティーブ・カーンがスティーブ・ジョーダンとやっていたのは「eye witness」(目撃者)の頃だと思いますが。ベースがアンソニー・ジャクソンでしたよね。1980年代だったかな。今,仕事中なので詳しくは調べられませんが,きっとそうだったと思います。カッコいいバンドでした。あのすかすか感,浮遊感,どこかへ行ってしまいそうなアウト感。最初聴いた時は衝撃的でした。
ということで,全然キューンの話題と関係ないところに飛んでしまいましたが,カーンは今でも若々しく元気に頑張っていますよ。
ジョーダンの強面のジャケって,2作目ですかね?たぶんそうでしょ。僕は聴いたことはありませんがジャケは知ってます。
ジョーダンって,出世して,今ではプロデューサー業など幅広く活躍しているんですよね。
一緒にピアノトリオやりましょ。
僕の将来の夢はですね,三階建ての家を建て,一階が診察室。二階がジャズ喫茶。三階が住居。昼間はクリニックで患者を診て,夜になったらジャズ喫茶のマスター。なんていうのが夢なんですけどね。まあ,無理でしょうね。