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雨の日にはJAZZを聴きながら

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ブラッド・メルドー 『 Anything Goes 』。

2005年09月29日 22時09分41秒 | JAZZ
料理評論家が料理の味を表現するのに「おいしい」と言ったら負けであり,その点では音楽評論家も音楽を「美しい」とか「かっこいい」などと表現したら,その時点で評論家失格なのです。
でも評論家でもない僕のような人間が,音を文字に置き換える作業をこのブログでやっているわけで,感動した音を言葉に転換するのは難しいものだとあらためて実感しています。ついつい,だれだれはエバンス的で美しい音だとか,だれだれのサックスはブレッカーみたくてカッコイイとかといった陳腐な表現になってしまうのです。自分の国語力の無さを痛感しております。
可能なかぎり「超カッコイイ」とか「最高」などといった言葉は使用しないよう努力していこうと思っています。

というのも今日聴いているブラッド・メルドーの『Anything Goes』なんかは,まさに<超カッコイイ>ジャズなんですよね。ありきたりのスケールを行ったり来たりのアドリブや,ストックフレーズの使いまわしばかりしている退屈なソロばかりが横行しているジャズ界にあって,ブラッド・メルドーは常に次を期待させる数少ないミュージシャンではないでしょうか。
正直,以前はあまり好きになれないピアニストでした。全くスウィングしない,トリッキーなフレーズ。汗をかくことを嫌い部屋に籠ってピアノばかり弾いている神経質な優等生のイメージがあって,ちょっと敬遠していました。しかし,1990年代後半の『 The Art Of The Trio 』のシリーズなどを聴いて感動し,ブラッド・メルドーの不思議な魅力にはまっったのです。

ただ2002年の前作『 LARGO 』はあまり馴染めませんでした。このアルバムの中でブラッド・メルドーは,たくさんの実験的試みを行っていました。レズリースピーカー(ハモンドオルガンなどで使用する回転式のスピーカー,詳しくはこちらで)をピアノに接続してディストーションをかけたり,2オクターブ分の低域のピアノ弦に粘土(パテ)をくつけて不思議な音を出したり,また自らビブラフォンを演奏したりと,ジャズの領域から何とか抜け出そうとする気持ちが感じられました。決して空回りに終わらず,アルバムとしての完成度は高く,至高のジャズ・アルバムに仕上がっていました。でも僕としては少々やりすぎの感は否めませんでした。

ですから,昨年発売になった『Anything Goes』(録音は2002年10月)を買うのはずっと躊躇していました。ジャッケトも『 LARGO 』と同様,シュールなイメージで,内容的にも同系だったら嫌だなと思ってました。でも,買って正解です。今回はちゃんとしたジャズを演奏しています。『 The Art Of The Trio 』シリーズに近い仕上がりです。
今回は全曲,ジャズ・スタンダード,ロック,ポップスのカヴァーで,オリジナルは珍しく含まれていません。
6曲目の『 Nearness of You 』でのメルドーのバラード・プレイは彼の真骨頂で,間の取り方,タイム感,ちょっとモンク的な音使いなど,不思議な歌心は彼独特のものです。
7曲目のポール・サイモンの『 Still Crazy After All These Years 』も原曲を知っている世代には涙ものです。夜の闇に消入るような孤独感。ムショウに酒が飲みたくなるバラードです。

さて,ウイスキーでも飲みながら残りを聴きましょうか。


Brad Mehldau 『Anything Goes』2004年 Warner Bros. 9362-48117-2
Brad Mehldau (p)
Larry Grenadier (b)
Jorge Rossy (dr)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Anything Goes (narymusic)
2005-10-01 06:27:22
偶然にも、私もこれを聴きながら一記事書いておりました。

まだ公開していないんですが、Jorge Rossyで明日掲載する予定です。
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narymusicさん,こんばんわ。 (クリス)
2005-10-01 18:58:30
narymusicさんの記事と比較されると恥ずかしいです。

でも楽しみにしてます。
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