
90年代のジャズを語る時,恐らくベスト10に入るであろう名盤中の名盤,スタン・ゲッツ&ケニー・バロンの『 People time 』を今,聴いています。本作はスタン・ゲッツが肝細胞癌で1991年6月6日に亡くなる3ヶ月前に,コペンハーゲンのカフェ・モンマルトルで録音された実況盤です。<癌に体を蝕まれながらの鬼気迫る名演>とか<死期を悟ったラスト・レコーディング>などといったサイド・ストーリーを知らずに聴いても,間違いなく2人の緊張感溢れるすばらしい演奏に感嘆すること必至です。演奏内容も然ることながら,ライブとは思えないほどの録音の良さも特記すべきことでしょう。本作は全14曲の2枚組みで,全て馴染みのスタンダードを演奏しています。チャーリー・ヘイデンの書いた<first song>が誰もが認める名曲にして名演ですが,僕はそれ以外にも<soul eyes>や<east of the sun and west of the moon>などがお気に入りです。ケニ・バロンも単なる伴奏者に甘んじることなく,センスの冴えわたる気品に満ちたソロを繰り広げています。明らかにこの日の2人は乗っていました。さらに観客も高レベルだったのでしょう。拍手のタイミング,歓声でそのことがわかります。演奏者,PA,観客と,3者のベクトルが一致し,信じられない名盤が誕生したわけです。
で,まあ,こんな名盤を今更僕がこれ以上称揚したところであまり意味がないので,この『 People time 』に関して村上春樹の著書『意味がなければスイングはない』の中で触れている箇所を紹介します。
もっとも僕としては,晩年のスタン・ゲッツの演奏を聴くのは,正直なところいささかつらい。そこに滲み出してくる諦観的な響きの中に,ある種の息苦しさを感じないわけにはいかないからだ。音楽は美しく,深い。とくに最後のケニー・バロンとのデュオの緊迫感には,一種鬼気迫るものがある。音楽としてみれば,素晴らしい達成であると思う。彼はしっかり地面に足をつけて,その音楽を作り出している。しかし,なんと言えばいいのだろう。その音楽はあまりに多くのことを語ろうとしているように,僕には感じられる。その文体はあまりにもフルであり,そのヴォイスはあまりににも緊密である。
村上春樹氏は,あまり本作がお気に召さないようですね。
P.S.それにしても亡くなる3ヶ月前でこの音。癌に侵されていたとは信じがたい気迫に満ちた瑞々しい音色です。コルトレーンは,ゲッツの演奏を聴いて「もし我々が彼のように吹けるものなら,一人残らず彼のように吹いているだろうな。」と言ったそうです。ホントone and onlyの素晴らしい音色,フレージングです。
で,まあ,こんな名盤を今更僕がこれ以上称揚したところであまり意味がないので,この『 People time 』に関して村上春樹の著書『意味がなければスイングはない』の中で触れている箇所を紹介します。
もっとも僕としては,晩年のスタン・ゲッツの演奏を聴くのは,正直なところいささかつらい。そこに滲み出してくる諦観的な響きの中に,ある種の息苦しさを感じないわけにはいかないからだ。音楽は美しく,深い。とくに最後のケニー・バロンとのデュオの緊迫感には,一種鬼気迫るものがある。音楽としてみれば,素晴らしい達成であると思う。彼はしっかり地面に足をつけて,その音楽を作り出している。しかし,なんと言えばいいのだろう。その音楽はあまりに多くのことを語ろうとしているように,僕には感じられる。その文体はあまりにもフルであり,そのヴォイスはあまりににも緊密である。
村上春樹氏は,あまり本作がお気に召さないようですね。
P.S.それにしても亡くなる3ヶ月前でこの音。癌に侵されていたとは信じがたい気迫に満ちた瑞々しい音色です。コルトレーンは,ゲッツの演奏を聴いて「もし我々が彼のように吹けるものなら,一人残らず彼のように吹いているだろうな。」と言ったそうです。ホントone and onlyの素晴らしい音色,フレージングです。
「People Time」は、私の愛聴盤でもあります。エヴァンスの「Consecration」と同様、死期を悟った演奏とでもいうのでしょうか、切ないまでも鬼気迫る演奏ですね。久しぶりに聴いてみようかな。
さて、今晩私はBlue Connectionの「The Passenger」を聴きながら、今月号のPLAYBOYを読んでいます。今月号はコルトレーンの特集です。そういえば最近、コルトレーンを聴いていないなぁ。
(別に開き直ってるわけではおまへん)
People time、、私も好きです。
どんな演奏もそうだとはおもいますが、、
特にデュオの場合、お仕事関係以上の親密さ、っていうか、相手への想い、っていうのか、、
作品に出てきますよね。。。
プレーボーイのコルトレーン特集は知ってましたが,どんなんでしょうかね~。どうせ,知っていることばかりのような気がしますが。本屋で立ち読みしてから買うかどうか決めよう。
とんでもございません。すずっくさんのジャズの知識は素晴らしいですよ。
ジャズ好きはみんな偏見の塊ですから。その偏見に満ちた自分の趣味を主張し合うのが面白いのですよね。
People timeは,みんなの愛聴盤なんですね。これを嫌いと胸張っていえる人は余程のへそ曲がりですね。
Anders Lindskog(何て読むの)って,知りませんでした。ヤコブ・フィッシャーが入ってるんですね。欲しいです。
J@Hでレビューを始めた時は、これを記念すべき一枚目にしました。現在のblogでは節目の100枚目をこのアルバムにしようと思っています。その時には是非TBさせて頂きますね。
Blue Connectionの「The Passenger」ですが、これは好みが分かれる盤だと思います。
ピアノトリオとして、演奏しているのは4曲目Bill Evansの「Tune For A Lyric」のみ。全7曲中4曲が、ピアノトリオ+tp,tb,ts、2曲がピアノトリオ+congという構成。
全体的にグループ名を象徴するかのように、伝統的なバップ&ブルースを、スモーキーなブルーと明るいブルーが交錯するが如くの演奏。明るさの中にも翳りがあるジャズバーに迷い込んだあなたは、入れ代り立ち代り現れる女性に、媚薬を含まされた酒を注がれ、逃れなくなる。そんな気にさせてくれる1枚です。でも、この世界に酔えない人もいるのも確かでしょうね。
http://catfish-records.ocnk.net/product/847
で購入可能です。
catfishでも在庫切れですね。
それにしてもこのCatfishのレビュー書く人って,凄い文章書きましよね。いつも驚いています。
ところで、東京のDUでやっている週末セールって、結構凄そうですね。500円とかで掘出し物が出るなら、当たり前かな。羨ましい限りです。
クリスさんのお奨めがあれば教えて下さい。
私の食わず嫌いかもしれません。ではでは。
ちなみに僕はリサ・エクダール好きです。かわいいし,声質も好みです。ハイ。