雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

Austin Peralta 『 Maiden Voyage 』

2006年03月14日 21時35分11秒 | JAZZ
金髪のロングヘアーに高貴な顔立ち。一見クラシックのCDかと勘違いするジャケットのオースティン・ペラルタのデビュー・アルバム『 Maiden Voyage 』です。あまり期待せず買ったのですが,これがめちゃくちゃ良かったです。

聴き手にとってミュージシャンの年齢など関係ないのですが,この演奏が15歳の少年の指から奏でられているとは,俄かに信じられません。ハンコックの<Maiden Voyage>ではテンポを変えながら緩急に富んだ構成で,<Maiden Voyage>に新たな命を吹き込んだ素晴らしい演奏ですし,超絶技巧派にしか演奏を許されないチック・コリアの<Spain>でもややスパニッシュ・フィーリングに欠けますが,早くも貫禄のある安定感のある演奏で,インパクト大です。その他の<いそしぎ>,<Green Dolphin Street >,<いつか王子様は>など,日本のリスナーを意識した選曲は,88レーベルのプロデューサー,伊藤八十八氏の戦略もあったのでしょうか。

ドラムのビリー・キルソンって僕の知らないミュージシャンなのですが,まるでトニー・ウイリアムスのように,バタバタ,ストトトと,キック,タム連打の応酬でオースティン君を激しく煽ります。録音もドラムの音がデカくで気持ちいいし,個人的には大好きなタイプのドラマーです。それに対しベースのロン・カーターはいつもながら「我関せず」のマイ・ペースで,ちょっと不満です。音もいつものアンプ臭いべたべた音だし,もうちょっと汗かくくらい一生懸命に弦を引っかいてくれよと言いたくなります。録音もオフ気味ですし。このロン・カーターという人選はオースティン君の希望だったようです。伊藤八十八氏が「どんなプレーヤーと演奏したいの?」と尋ねたところ,彼は「ベースはロン・カーターがいいなぁ~」と答えたそうです。ちなみにセカンド・チョイスはデイブ・ホランド,サード・チョイスはクリスチャン・マクブライトだったそうです。僕としてはクリスチャン・マクブライトと演った方が演奏が締まったと思うんですけどね~。でもドラムのビリー・キルソンがトニー・ウイリアムス系なので,<Maiden Voyage>などまるでハンコック・トリオの新譜かと錯覚するような演奏です。

いずれにしても,これほどジャケットから受ける印象と実際の演奏との間に乖離のあるアルバムはめずらしいんじゃないでしょうか。これは思わぬ掘り出し物です。
まずはオースティン君の<処女航海>は成功ですね。これからも頑張ってください。くれぐれもセルジオ・サルバトーレのようにならないでくださいね。

P.S. 3月から4月にかけて,来日するみたいです。一方,3月21日23時,スカパー271chのMusic Airに出演もする予定です。ライブは行けそうもないので,せめてこれは観なきゃ。