【碁太平記白石噺】
浅草雷門の段
新吉原揚屋の段
これは去年の5月だったか、東京でかかったばっかりですね。
どれどれ、と、その時のこのへっぽこ日誌を読んでみますと、
「文司さんの惣六のイキなことと言ったら!」
と、惣六に釘付けになっていた模様。
しかし、それ以外にはこれといって参考になることも書いていないのであった。
なんだこの日誌。 何の役にも立たないな。
今回、おのぶちゃんは簑助師匠。
このおのぶちゃん、前回の文雀師匠のおのぶちゃんの方がおきゃんで元気な娘らしく感じたことが、私にとっては意外なところでした。
簑助さんのおのぶはもう少し大人っぽいといいますか、しぐさに女らしさがちょっと見え隠れする感あり。
どちらも可愛らしいことに間違いないんですが、逆をイメージしていたのでいい意味で裏切られましたね。
清十郎さんの宮城野は、かすかな首の動きで全盛の傾城らしさが表わされていて、それはそれは美しかったです。
玉也さんの惣六ももちろん粋で、しゅっとしてて、ぱりっとしてましたよー
しかし、惣六さん・・・
お説教がちょいと長すぎやしませんか?
わたしゃ、途中でうつらうつらしてしまいましたよ。
よくいますよね、色んな引用ばっかりしてなかなか話の本題にたどり着かないおっさん。
このタイプに結婚式のスピーチを頼むとえらいことになるんですよ、なかなか「おめでとうございます」まで行き着かなくて。
いや、そこらのおっさんと一緒にするのもアレですけど。
しかも、惣六さん、盗み聞き王だ。宮城野に私たちの話を聞いてたわね、と言われ
「さぁ、聞いた、でもなし。 また、聞かぬでも・・・」
って。何もったいつけてんの。聞いてたじゃん、思いっきり。
嶋さんのおのぶちゃんの声は可愛らしくて言うまでもなく素晴らしかったですが、実は私は嶋さんの語る惣六が大好きです。
情に厚く、しかも渋い、いかにも男前の亭主。
説教が長いのだけが玉にキズですが。
【女殺油地獄】
徳庵堤の段
河内屋内の段
豊島屋油店の段
河内屋内からは2日間続けてみることができました。
私は近松門左衛門の世話物でもしかしたらこれ一番好きかもしれません。いや、全部見たわけじゃないくせに言い切っていいのか、だけど。
愛だの恋だの心中だのが出てこないから、というのもありますが、見終わった後の
「なんで?」「どうして?」という、「なんだかわからないモヤモヤ」
がずっと、そして強烈に続くのが、いい。
しかし、これは2009年の2月に東京でもみているはずなんですが、どうも記憶がはっきりしない。
いや、この演目に限らずどれもこれもさっぱり思い出せないスカスカ頭なんですけども。
今回、特に千穐楽の勘十郎さんの与兵衛は、最初っから最後まで、ピリピリした「錆びたナイフ」・・・じゃないや、錆びてどうする、「尖ったナイフ」のようなワルっぷり、ぞくぞくしましたねー
見てるこちらは
「とは言っても、この男にもどこかしらいいところがあって、
だから ふた親もお吉も、ああまで何度も痛い目に合っているのに
庇って、見捨てられないんだ、そうに違いない」
と与兵衛の改心なり、善なる心をどこかで期待しているのですが、
そんなもん、まったくない!
最後まで、小心のワルが狂気を帯びて残酷な殺しを犯していく様を見せつけられるのです。
勘十郎さんの与兵衛の錆び…じゃなくて、尖ったナイフっぷりも凄かったですが、和生さんのお吉も負けてません。
娘の髪を梳く仕草ひとつもしっとりと情愛深く、
しかし、髪を振り乱して油と血にまみれてもがいて、最後まで奥の子供を想いながら息絶える様は、息をのむ凄惨さ。
紋壽さん・玉女さんの老夫婦の息子への愛と苦悩や哀しさもさすがで、
この舞台、与兵衛の狂気をより際立たせるものとなっていたのではないでしょうか
燕三さんの三味線にシビれながら、最後にはまるで自分が与兵衛に同化してしまったかのようでした。
そのせいか、翌日、朝起きたら膝と尾てい骨に擦り傷ができていました。
なんで? いったいどこの油店で滑って転んだ、私?
与兵衛が乗りうつったのか、単に酔っ払ってすっ転んだ記憶がないだけか。
いずれにしても恐ろしい事です。まさに油地獄とはこのことです。
浅草雷門の段
新吉原揚屋の段
これは去年の5月だったか、東京でかかったばっかりですね。
どれどれ、と、その時のこのへっぽこ日誌を読んでみますと、
「文司さんの惣六のイキなことと言ったら!」
と、惣六に釘付けになっていた模様。
しかし、それ以外にはこれといって参考になることも書いていないのであった。
なんだこの日誌。 何の役にも立たないな。
今回、おのぶちゃんは簑助師匠。
このおのぶちゃん、前回の文雀師匠のおのぶちゃんの方がおきゃんで元気な娘らしく感じたことが、私にとっては意外なところでした。
簑助さんのおのぶはもう少し大人っぽいといいますか、しぐさに女らしさがちょっと見え隠れする感あり。
どちらも可愛らしいことに間違いないんですが、逆をイメージしていたのでいい意味で裏切られましたね。
清十郎さんの宮城野は、かすかな首の動きで全盛の傾城らしさが表わされていて、それはそれは美しかったです。
玉也さんの惣六ももちろん粋で、しゅっとしてて、ぱりっとしてましたよー
しかし、惣六さん・・・
お説教がちょいと長すぎやしませんか?
わたしゃ、途中でうつらうつらしてしまいましたよ。
よくいますよね、色んな引用ばっかりしてなかなか話の本題にたどり着かないおっさん。
このタイプに結婚式のスピーチを頼むとえらいことになるんですよ、なかなか「おめでとうございます」まで行き着かなくて。
いや、そこらのおっさんと一緒にするのもアレですけど。
しかも、惣六さん、盗み聞き王だ。宮城野に私たちの話を聞いてたわね、と言われ
「さぁ、聞いた、でもなし。 また、聞かぬでも・・・」
って。何もったいつけてんの。聞いてたじゃん、思いっきり。
嶋さんのおのぶちゃんの声は可愛らしくて言うまでもなく素晴らしかったですが、実は私は嶋さんの語る惣六が大好きです。
情に厚く、しかも渋い、いかにも男前の亭主。
説教が長いのだけが玉にキズですが。
【女殺油地獄】
徳庵堤の段
河内屋内の段
豊島屋油店の段
河内屋内からは2日間続けてみることができました。
私は近松門左衛門の世話物でもしかしたらこれ一番好きかもしれません。いや、全部見たわけじゃないくせに言い切っていいのか、だけど。
愛だの恋だの心中だのが出てこないから、というのもありますが、見終わった後の
「なんで?」「どうして?」という、「なんだかわからないモヤモヤ」
がずっと、そして強烈に続くのが、いい。
しかし、これは2009年の2月に東京でもみているはずなんですが、どうも記憶がはっきりしない。
いや、この演目に限らずどれもこれもさっぱり思い出せないスカスカ頭なんですけども。
今回、特に千穐楽の勘十郎さんの与兵衛は、最初っから最後まで、ピリピリした「錆びたナイフ」・・・じゃないや、錆びてどうする、「尖ったナイフ」のようなワルっぷり、ぞくぞくしましたねー
見てるこちらは
「とは言っても、この男にもどこかしらいいところがあって、
だから ふた親もお吉も、ああまで何度も痛い目に合っているのに
庇って、見捨てられないんだ、そうに違いない」
と与兵衛の改心なり、善なる心をどこかで期待しているのですが、
そんなもん、まったくない!
最後まで、小心のワルが狂気を帯びて残酷な殺しを犯していく様を見せつけられるのです。
勘十郎さんの与兵衛の錆び…じゃなくて、尖ったナイフっぷりも凄かったですが、和生さんのお吉も負けてません。
娘の髪を梳く仕草ひとつもしっとりと情愛深く、
しかし、髪を振り乱して油と血にまみれてもがいて、最後まで奥の子供を想いながら息絶える様は、息をのむ凄惨さ。
紋壽さん・玉女さんの老夫婦の息子への愛と苦悩や哀しさもさすがで、
この舞台、与兵衛の狂気をより際立たせるものとなっていたのではないでしょうか
燕三さんの三味線にシビれながら、最後にはまるで自分が与兵衛に同化してしまったかのようでした。
そのせいか、翌日、朝起きたら膝と尾てい骨に擦り傷ができていました。
なんで? いったいどこの油店で滑って転んだ、私?
与兵衛が乗りうつったのか、単に酔っ払ってすっ転んだ記憶がないだけか。
いずれにしても恐ろしい事です。まさに油地獄とはこのことです。
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