conparu blog

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豚舎と景観

2006-06-11 01:07:00 | 日記

多摩の西北にある狭山丘陵は、広大な都立自然公園として、またトトロの森としても知られているが、かつては狭山丘陵を境にして、東京都と埼玉県が分かれていたらしい。
今では一部が都に編入されている地域もある。この狭山丘陵からさらに北にある狭山台地が今日の主舞台である。

西から東へと緩やかに傾斜しながら、広い裾野を描いて茶畑のうねりが続いている。
遠くには秩父連山が聳え、台地の西端には奥多摩の峰々が望見できる。狭山台地の縁に沿って切り崩されたような段差が続いているのは、太古からの多摩川の氾濫によって侵害された、扇状地の傷跡の対岸なのである。

狭山台地は穏やかな風情の中にあるが、木枯らしの吹く季節は狭山おろしの痛烈な風に見舞われて、印象が一変するのだ。広大な台地には大正時代の飛行場があったと云う話にも、当時を偲ばせるものは何も無い。

私が多摩の地に来たのは、三十年前だった。この辺一帯には、雉が見え隠れして、人影をみると足早に茶畑の中へ姿を隠してしまう。禁猟地区なので、今でも時折見られる光景なのである。

裏山と言っている狭山台地の林道は、狭山台地の西にあって、狭山茶の起源に係わる広大な畑の中を貫いている。大妻女子大の校舎もこの茶畑の一角にあり、ゴルフ場に隣り合わせた緑の中で、ライトブラウンの校舎と尖塔が際立った存在を見せている。自然の中に君臨する人工の造物である。

この大妻女子大へ向かう道筋に豚舎が建つようになり、甚だ閉口している。
犬の散歩道でもあるから、出来るだけ歩けるだけ遠くに行こうと思い、この豚舎の前に来るのだが、特有の臭いの故に行く手を阻まれることがしばしばである。
大型の豚舎は高窓で中が見えないけれど、窓から押し出されてくるムッとした空気が、もろに豚香?を運んできて、豚たちのうごめきさえ察せられる。
一つ先にある豚舎は、細かく仕切られた鉄柵と屋根だけがついた、豚にとってはアウシュヴィッツの豚舎なのだが、そんな思いも知らずに大きなお尻を並べて寝転んでいる姿は、いとも平和のきわみと言わざるを得ない。

狭山台地の自然景観の中に出現した豚舎は、美観を損なうだけでなく周囲に居住する県人や都民にとって、大いなる災いである。隣接するゴルフ場や女子大生にとっても、イメージダウンの評価損となる。







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