月の岩戸

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二十七夜

2015-08-05 05:18:20 | 詩集・瑠璃の籠

わたしの心の中には
翡翠を磨いたような
たくさんの美しい魚のいる
小さな池がありました
そこには美しい睡蓮の花が咲いていて
真ん中には
湧き出る泉のような噴水が高く上がっていました

あなたはわたしの池のそばに来て
小さな釣糸を垂らしましたが
釣れた魚は 両目のつぶれた
小さな魚だけでした
それであなたは
こんな池には何の良いこともないと言って
すぐに釣竿を捨てて行ってしまったのです

なぜ もう一度
釣糸を下げてくれなかったのですか
なぜ たった一匹の魚だけで
わたしの心の全てを
否定してしまったのですか

わたしの心の中には
それはたくさんの
美しい魚が住んでいたのに
それを見つけてくれたら
わたしはあなたのために
ほんとうにたくさんの
美しい魚をあげることができたのに

だれもわたしの池の中を
覗きこんでくれなかった
そこでは睡蓮の葉の下に
たくさんの光の魚が躍りながら泳いでいたのに
だれもわたしの心を見てくれなかった

ああ わたしというものの心を
なぜだれもわかってくれなかったのか
わたしはただ
みんなのためによいことをしたかった
それだけの心で
できることはなんでもやっていたのに

わたしの心の中の池には今も
美しい魚が群れています
ぜんぶあげてもよかったのに
そんなのは馬鹿なものだからと
だれも相手にしてくれなかったのです




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