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月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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フォマルハウト・7

2015-08-23 05:28:49 | 詩集・瑠璃の籠

真実が触れると
悪魔は消えてゆくのだよ
嘘でつくりあげた何もかもが
壁にかけてあったコートが落ちるように
ごっそりと落ちて
深い奈落の闇の中に消えてゆくのだ

あれは だれだ あれは
どこかで みたことが ある
ような気もする
だれだ あれは
美しいが 何と変わっているのか
あんなものなど見たこともない
ような気もする

それは真実という名の
女だったのだ
明らかにすべては嘘だという世界の中で
彼女だけは真実だったのだ
余りにも小さな そして大きな
真実だったのだ

かのじょが触れると
おまえを作っていた嘘がめくれあがり
中身の正体が見えてくる
それが真実の真珠だったのだ
王様のお馬をみんな集めても
王様の家来をみんな集めても
かのじょの真実を殺すことはできない

馬鹿は自分が頭がいいというつもりで
あきれた馬鹿をやり抜いて
小さな一つの真実につまずいて
一気にすべてを失った
爆発音さえしなかった
ただ気がつけば
周りにいた者がすべていなくなっていた
家も財産もすべてが消え去っていた
なぜこんなことになるのか
それはただ 嘘を消しておまえを真実の姿に戻すために
法則の風が吹いてきただけなのだ

全ては嘘で作りあげた幻だったのだと
納得がいくまでには
長い時間がかかるだろう
暴れるでない 暴れればよけいに傷が増える
おまえは場に向かう牛のように
悲しげに鳴きながら
死神の白い刃が光る
本当の故郷に帰らねばならない

あるいは 真実から逃げ通し
偽物の自分の形の中で
ミイラ化した本当の自分を抱えて
重い人生を生きて行かねばならない
腐臭を放つ自分の死骸を中に隠しながら
大量の香料を食べて生涯を送らねばならない
それはもう人間ではない
人間ではない者になり果てても
まだ馬鹿みたいな嘘の幸福が欲しいのか

馬鹿者よ あわれな馬鹿者よ
魔王を気取って神に挑戦した阿呆よ
もうすべては終わった
風に引かれ ゆくべきところにゆくがよい
愛が 遠い海の向こうの蜃気楼に見える
黒い島へとゆくがよい




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