月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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アルデバラン・16

2015-03-25 07:16:42 | 詩集・瑠璃の籠

血を吸ってできた偽太陽が
突然意味を失って
墜落した

世界を支配するために
あらゆる努力をつぎ込んで作った
血の太陽が 突然
存在する意義を失った
あっても無駄なものになった

あれほどみなが苦労して作った
すばらしい人工太陽が
砂漠の真ん中で
水を浴びたように湯気をたてながら
腐った血を吹きだしている

こんなものだったのか
人間のしたことは

人間がやっと気づいた時には
もうすべてが
過去の時代の遺跡になっている
誇り高き文明の神話が
巨大な百合の香りのような
虚偽の谷へと風化してゆく

何のためにやったのか
誰のためにやったのか
すべてのことが
贋金の山のように
何の価値もない
巨大な無駄の城になる

世界があきれ返るほど
人間が馬鹿をやったのは
馬鹿が全てに勝てると思っていたからだ
暴虐の蠅の襲来のように
世界を席巻した魔は
自らの血で太陽を作り
それですべてを支配しようとした

吹く風の中に 血の匂いが混じる砂漠の中で
一人立っている
かつて大魔として馬鹿に君臨した馬鹿は
いつまでも 呆然と
死んだ血の太陽の残骸の前で
たたずんでいる

あきらめろ 馬鹿者よ
おまえの夢は もうすべて消えたのだ
法則の風がおまえの孤独を吹き抜けて
あってはならないことをやったおまえの
心臓を凍らせる前に 歩きだせ

なにもかもが馬鹿だったと
わかってもまだ 捨てきれない夢の残骸を
夢見ているおまえの命を
痛ましい林檎の影がふみつぶす
その前に 振り返れ

終わった夢をまだ捨てきれないのなら
夢の結末がどんな獲物だったか
十分に肝に染みるまで
一人そこで考えているがいい



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