月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
コメントはゲスト・ルームにのみお書きください。

フォマルハウト・11

2018-07-26 04:13:18 | 詩集・瑠璃の籠

永遠にかわらぬものなどありはしない
ないものにいじましくしがみついて
いつまでも馬鹿をやっているのではない

未来が凍り付き
奈落の目が光る前に
今しがみついているものを捨てて
一切をあきらめて
ほんとうのくらしにもどるのだ

あなたがあなた自身でいられる
ほんとうのくらしにもどるのだ

ほんとうのあなたはそんな顔ではない
そんな足ではない
そんな声ではない
もっと小さくてありきたりで
きのこのように単純なのだ

あなたはその本当の姿をいやがり
盗んだもので美しい自分を作って
それを無理矢理生きていたのだ
伝説の英雄に
永遠の美女に
なりたくて

人間のはがれた爪でつくった
永遠の幻の舞台の上で
ガラスの光を浴び
黄金の巨鯨を見つけたつもりだった
だがそれはみな
チリ紙で作った張りぼてにすぎなかった

永遠につづく栄華など
ありはしない
長い時をかけてやってきたことが
すべてむだになることを恐れて
いつまでもしがみついているのではない
奈落の目が光る前に

一切をあきらめて
ほんとうのくらしにもどるのだ




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゲンマ・38 | トップ | ミネラウヴァ・24 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

詩集・瑠璃の籠」カテゴリの最新記事