月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ウラヌス・9

2015-06-05 06:25:34 | 詩集・瑠璃の籠

電光の刃は藁の鞘を焼き
腐ったゴムまりのような
馬鹿の仮面を焼いてゆく
欲しかった黄金の名誉が
糞の饅頭だったと気づくのは
もう少したってからだ
愚か者め

美しい人だった
美しい声だった
だが人魚姫は泡と消え
泡の中からヴィーナスが生まれる
人間はまだ何も知らぬ
知らぬ間に
それは世界を変えてゆく

人類の栄華が終わる
それを知らせる鐘を鳴らすのは
われわれではない
あまりにも酷いことになっていると
やっと気づいた時には
すべてが終わっている
そのとき おまえたちが自らの悲鳴で
終了の鐘を鳴らすのだ
あわれなものどもよ

青薔薇の悲哀を浄め
薄紅の桜は 国境を越えて
蘇る
だがそのときには
すべてが死に絶えている
国境をわたりもせずに

馬鹿を殺せるのは刃だけではない
決してほほ笑みはしない
永遠の女神の凍った唇が
おまえたちを死に吸い込むのだ

美しい人だった
だがあまりにも悲しかった
あのほほえみが消えずにいたら
もう少し
何とかなったかもしれぬ




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