月の岩戸

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アークトゥルス・34

2019-07-01 04:32:34 | 詩集・瑠璃の籠

なくした愛の
去っていった岸辺で
いつまでも待っていてもしょうがない

帰ってこないものは
帰ってこない
かすみのむこうに
かげのかけらでも見えはしないかと
いつまでも待っているのではない

おまえの中に
思い出があるのなら
そこから始まる物語を
歌い始めるがよい

野辺の隅で花を見ていた月の
美しい記憶があるのなら
そこからすべてを始めるがよい

何を間違ったのか
おまえは愛に吸い込まれる心を
地獄のようなものと勘違いして
愛を滅ぼしてしまったのだ

失ったものは
帰ってこないが
おまえはあれを覚えている限り
あれに近いものをつくることができる
それを今から
やりはじめるがよい

永遠にも近い時をかけて
野辺の月のやさしさに似たものを
作り続けていくがよい





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