ピーンとはりつめた冷めた空気の中にほのかに立ちのぼる蒸気
おぼろげな湯気に包まれたシルエットにいささか興奮を覚えてしまう
混浴という夜更けの温泉風呂、のぼせ気味の脳裏にまさかの期待感がなかったわけではない
雪明りに照らされて、湯船に体を沈めんとしているシルエットに不甲斐なく想像力が働いてしまう 湯船に沈む波紋が水面をつたって近づいてくる
音もなく暗闇を抜けて、しかし、確実に幾重もの波が微弱なる振動として体に触れる 胸の鼓動がときめく自分にいささかな恥じらいも感じられない
目の前のシルエットは、ますます唯一無二なる感覚に落とし込めていくユラユラとシルエットは近づき遠のくお湯を伝わって全身に揺らめきが感じられる とても温かい
湯煙の先のシルエットはいつまでも、いつまでも、同一化した存在のごとく雪明りの中、お湯の揺らめきや波状を共に感じられながら側を離れることはない同乗者 孤独のない世界がいつまでも広がる