寺田本家24代目のブログ

寺田本家の24代目当主の発酵日記。
心を込めた自然酒造りや発酵の里へをめざす町おこしへの取り組みをご紹介しています。

noma

2015-01-09 22:25:16 | おいしいごはん
世界のベストレストラン50で1位に選ばれるデンマークのレストランnomaが今日から東京で期間限定でオープンします。
そこで寺田本家のお酒を独創的な料理に合わせて出していただいています。

nomaのシェフがどんなことを考えて日本に来たか、ご一読ください。

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私たちが長野県のどこぞ分からぬ森でキノコの「予言者」の後ろを追い、霧にどっぷりと包まれた時、ついに実感が湧いてきてしまった。
「俺らは、マジでやるんだ。日本でレストランを開けるんだ。。」

それは10月中頃の出来事でした。 私たちはそれまでに、この冒険のために凡そ2年の計画を既に費やしてきました。ですが、「一体俺は今どこにいるんだ?」と土を掘り返しながら考えていたまさにあの瞬間に、いきなり強く明らかな自覚となって現れたのです。

こんなことを、何年ものあいだ夢見てきたんだと思うのです。若いときに旅行する金もなく、ましてや自分のレストランをもっていないような若いコックの頃から。仕事のキャリアを積む中で、いつしかやっとこの神話の国で味わう事ができるようになり、欲望はより深まるばかり。西洋のシェフの同朋たちが、粛として敬意を込めて語る、この国の料理の度肝を抜かれるような種類の多さや技巧への一意専心というものに、できるだけ近づいてみたいと思ったのでした。私は単になんとなくで訪れて、発見をするだけでは飽き足らず、できうる限りこの地に一体化し、学びを得なければならなかった。


私は初めて懐石料理に、その歴史の深さを感じ、私たち西の料理人たちが食べたり調理したりする多皿コースよりもバランスの取れたものを見つけた。食器や建物のデザインは季節を反映しやすく整えられている。その「儀式」は、きめ細かな感覚、軽やかさ、そして季節感とは?ということを教えてくれた。

そしていま日本人の独創性から何を得られるかを思い、私たちの代表的な食材である慎ましやかなライ麦の穀粒を思う。スカンジナビアに生きてきた人々はこの穀物からパンやポリッジ(麦粥)を作り出し、生き長らえてきた。よくも悪くも、それはそこ止まりになっている。もし東へ行くならば、ここで米一粒が何に変わってゆくか注目したい。どれだけの信じられない発明がこのシンプルな素材から生み出され続けてきてきたのか。

心からインスパイアされたいがゆえ、私たちは単なる観光客の域をこえなければならない。ただ単に、スタッフ達と共に食べたり旅行したりするのではなくて、計画は(一時的ではあるが)完全なるレストランの移転へと発展した。私たちは海向こうのレストランを3ヶ月閉めることにした。私たちのささやかな企みは、一人残らずスタッフ全員を連れて行きつつ、食材はすべて置いてくるというものだ。私たちは私たちの感覚を、見知らぬ風味の景色に合わせてゆくことを決意した。自分たちの実力を推し量る機会に、ゼロから再スタートで挑む。

もちろん、なぜ?に対する理由はある。
11年間デンマークでの活動を経て、幸運なことに人々が私たちのレストランで食事することを望んでくれていると言えるようになった。そこまでの道のりは、厳しい試練以外のなにものでもなかった。毎日自らを挑戦の場にさらし、何時にも増して懸命に働き、なんどもなんども失敗に面し続けることによって、やるべきことを見出し、より良い理解を得てきた。この旅は思うに、私たちが築き上げてきたかもしれないうねりを一度断ち切り、心から私たちを畏めてくれるかもしれない。

心からインスパイアされるためには、私たちは単なるグルメ旅行者であることを越えなければならない。
我々のスタッフたちには、例えば、サバ料理を理想的な漬け具合にしたいが理由で、週に数度レストランに泊まり込む、とある料理人と出会わせてあげたい。その料理文化を深く理解することによって、私たちがどれだけ幼い子供のように見えるか感じてほしい。古い人間と若い人間がそんな舞台で出会うことは、なんとも不思議な感覚だ。両者がひとつのチームとして団結し共に何かに挑むなんてことは自分が思うに、この業界では過去そんなにできなかったことだ。これはまさに「おもてなしの心」を心から示すチャンスなのだ。「おもてなし」の一番近い訳語は”ホスピタリティー”だけれども、それは私たちが知るそれの、はるかもっと上のレベルにある。言うなれば、利他的な奉仕の型であり、日本文化の根底の一部である「寛容の精神」からくるものでもある。このことは、この国のどこでも出会うことができる。それがサービス提供の場でも、道で見知らぬ人に出会った時でも。そしてこのことが、東京で開くレストランで実践できるようになり、コペンハーゲンへ持って帰りたいことの一つなのだ。

日本の料理の幅広さ、美しさ、複雑さなどに関しては、たくさんのことが今まで語られてきた。がしかしながら、今を以って料理人と食べ手の全ての人が、もっとたくさんの模範から学ぶことがあるはずだ。それが『なぜ今日本にいるのか?』の答えなんだ。そうなんだ、なぜならここにいると、気持ちをひっくり返してくれるからなんだ。何が起こるか誰にもわからない。快適な処から飛び出ることが、料理人にとっては重要なんだ。いつかは、チャレンジしないと。次に何が起こるかわからない状況は、いつも私たちに恩恵を与えてくれる。そうまさに、不確実性と冒険、、これが私たちが今、渇望していることなんだ。

レネ・レゼッピ / シェフ、共同経営者 ノーマ (コペンハーゲン)

http://www.theworlds50best.com/list/1-50-winners/noma

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