私たち、お茶屋、販売させて頂く者は「拝見」というお茶を吟味することを生業にしてると言っても過言ではないほど、お茶を見ています。
まあ、過言ではないですね(笑)それをお仕事にさせて頂いているので・・・
「拝見」とは、読んで字のごとく「はいけん」です。お茶を「鑑定する」ではなく、「鑑定させて頂く」「みさせて頂く」という
先輩方の、お茶に対する、お茶を育む自然や作り手に対する感謝の気持ち、謙虚な気持ちにさせて頂く伝統的な言い回しです。
やり方は、簡単です。「拝見茶碗」と呼ばれる白磁のお椀に、お茶の葉を入れます。自己流などありますが、普通のお店で販売されているお茶、
仕上げしてあるお茶は【4g】を入れます。(←これに対して仕上げしていないお茶は【荒茶】といい<3g>だったりします)
それに、よく沸かした熱湯をギリギリまで注ぎ、「網さじ」と言われる、網状になったスプーンでお茶の葉をすくい、香りを嗅ぎます。
次に、スプーンで、お茶をひと口、すするように飲みます。以上です。
なぜ、熱湯など一定かというと、条件を合わせる為と、熱湯ですと、お茶の短所と長所がわかるからです。
ということを行うわけですが、毎日同じお茶を拝見していると、秋になると感じることがあります。
味が熟成されているお茶と、少し、元気がなくなってきているお茶「秋落ちしている」ものがあるということです。
よく「秋新茶」という言葉を、色々なお茶屋さんで目にしますが、これには2通り意味があります。
「秋に採れたお茶」と「寝かせておいて蔵出ししたお茶」です。
基本的に「新茶」という言葉は、4月~5月に採れたお茶を2番茶(6月頃)が出てくるまでに使うフレーズです。
秋に採れたお茶は「秋番茶」や「秋冬番茶」などと呼ばれ、カラッとした渋みが特徴です。
一方、蔵出しの方は、この「新茶」の頃に採れたお茶を低温で寝かせておいて、味に深みを持たせます。
お茶は、全く同じものでも、新茶の時期は新鮮で、爽やかな、若々しい味ですが、夏を越えると、その雰囲気が弱まり、
コクが増し、それこそ秋にピッタリの飲み口になります。
しかし、これは力のあるお茶です。元気のないお茶はコクが出ずに、素っ気ない雰囲気になったりもします。それを「秋落ち」という言葉で表現したりもします。
「コクが増すか」「秋落ちするか」これを見分けるのも、お茶屋の経験と知識による鑑定眼でもあります。
毎日飲むお茶(飲んで頂きたい)ですが、味の違いで体調を感じたり、味の違いが、その時々、季節に必要な
元気をくれたりしますイチロー選手ではないですが、同じことの繰り返しの中に、とても大きな気づきや成果があります。
今日もまた拝見をし、大きな成果、飲んで頂ける方に「おいしい!」と言って頂けることを夢見て
(マグカップの茶渋は、積み重ねた自分の自己満足の証です)