秋が深まる今日この頃、上野公園の木々も衣替えし季節の装いになってまいりました。
さて、現在、東京国立博物館では特別展「禅~心をかたちに 臨済禅師1150年 白隠禅師250年遠諱記念」と題して行われています。
「禅~心をかたちに 臨済禅師1150年 白隠禅師250年遠諱記念」詳細ホームページ
「遠諱」これは「おんき」と読み、長い年月の年忌を指すそうです。百回忌とか五十回忌とか。
私が訪れたのは、雨の午前中。たいへん空いていました。確かに、「禅」というと、少し暗い印象があり、
華やかな物がないので、いまひとつ人気がないのかもしれません。
しかし、私たち日本人の歴史を紐解くと、非常に今の生活にも密接につながっていたり、特に我々お茶の世界は、
禅とセットのである部分もあるので、大変面白く、また興味深く観ることが出来ました。
また、これはあまりまだ大きく告知されていないようですが、あの「伊藤若冲」の作品も2点、
11月8日より特別展示されています。まったく並ぶことなく、ゆっくりと鑑賞できる、至福の時を過ごせるチャンスです!
そして、この後半は何といっても雪舟の「慧可断臂図(えかだんぴず)」
個人的には、これだけ見られただけで満足です!これは、皆様ご周知の通り、達磨大師に慧可が教えを乞う為誠意を表している図です。
慧可は達磨の後を継ぎ禅の2代目となる方です。
諸説ありますが、達磨大師は、インドの出身、中国から見て南方面です。達磨大師は、自分の後継者・真法を継ぐ人物を探して旅をしています。
ある時「神光」(しんこう)という、有名なお坊さんがいると聞き、神光のもとを訪れます。
神光は、ちょうど弟子を集めて、説法をしていた時、達磨大師も参加したそうです。
「今日は、南から珍しいお客様が来てるみたいだから、特別な話をしよう!」と言って、真理の話をしたとか。
その話を聞いた達磨大師が、質問を投げかけ、答えに窮した神光は、持っていた数珠を達磨大師に投げつけ、達磨大師はその場を去ります。
しかし、ただ者ではないと悟った神光は、達磨大師を探し歩き、雪の中で座禅を組む達磨大師を見つけます。
そして、是非とも真理の教えを得たいと願いますが、聞き入れられず・・・
すると達磨大師が「さぼうを捨てよ」と言われたそうです。
「さぼう」とは、「左道傍門」、真理ではない教え、知識、はたまた多くの弟子のことを指しているのではないか?という一説。
つまり、多くの弟子をがいて知識も豊富な神光にそれを捨てられるか?と問うたそうです。
そして、言葉の響きでこの「さぼう」は左腕という意味の響きに近いということで、聞き間違いたという説もありますが、
いやいや、神光ほどの人が聞き間違えるはずもなく、自分自身の誠意を見せるために、あえて左腕を切り落としたと言われております。
ですので、「左腕」を差し出しているのです。それがこの場面。そして、この後、達磨大師を継ぎ、慧可と名乗ります。
と、長くなりましたが、この場面の 雪舟作 国宝「慧可断臂図」が展示されています。また様々、興味深い展示も多いですが、
茶道をされる方には、必見、 国宝「油滴天目(ゆてきてんもく」国宝「玳玻天目(たいひてんもく)」と、日本で8つしかない国宝茶碗のうち
2点が展示されています。しかも、天下の三名物と言われる「新田肩衝(にったかたつき)」もあり、これ一品一品が十分展覧会の目玉になるモノばかりが
一緒に展示され、贅沢にもほどがあります!!
また、スケールの大きなものがお好きな方、あります。狩野元信や狩野山楽、長谷川等伯などの屏風はまさに圧巻です。
この展示場所は、ぐるっと大屏風に囲まれるように出来ており、その空間に身を置けるなどは、まさに高僧や関白様でも叶わないほどのすごさです。
きっと、皆さん知らないだけで、本当に素晴らしい特別展です。たぶん、そんなに大行列で見るほどではない状況だと思います。現在は。
しかし会期末に、何かの形で火がつけば、見られないということも十分あり得る、展示ばかりですので、是非、この稚拙な文章でもお心に留めて頂ければ、
ぜひぜひ、行かれることを強くお勧めいたします。私は、もう一回行きたいと思っています。
とりとめがなくなりましたが、芸術の秋、上野でお楽しみ頂ければ幸いです