「今まで、お世話になりました。荷物の引き取りと、ケアマネへの仕事の引継ぎには後日うかがいます。
ご信頼頂けない以上、介護はお引き受けできません。伯父上にご相談ください。ありがとうございました」
土曜から日曜へ日付が変わった午前一時、
じいたんに置手紙をして、祖父母宅を後にした。
ばあたんのせん妄が落ち着き、目が覚めないのを確認して。
*************************
じいたんとの諍いのもとは、30日(土)朝に
余所のヘルパーさんが室内に置いていったメモだった。
朝五時ごろに、エレベーターに乗って迷っていた祖母を保護して、
フロントで居室を確認し、部屋まで連れ帰り、
水分補給とトイレ介助をして寝るまでそばにいてくれたとのこと。
祖父は安眠していたので、起こさないで、
代わりにメモを置いていってくれたようだ。
うちが雇っている方ではなく、よそでお仕事されている方が
善意でそこまで、お世話してくださったのだ。
だが。
じいたんはそれを、嘘だと思ったらしい。
「お前さん、こんなおかしいことがあるかね?
おじいさんは、ちゃんと紐でドア左上のアームを
くくって、出られないようにしてあるんだよ」
しかしフロントに確認したら、やはりそのメモは正しかった。
だいいち、その前日(金曜未明)は、私が未明から朝まで
祖母のそばにいたのだから、そんなことはあるはずがない。
そして、7/30(土)付のこんなメモ、
前の晩に私がいたときには、部屋の何処にもなかった。
じいたんは多分、紐でドアのアームを縛らなかったのだ。
正直それでもいいと私は思っていた。
なぜなら
ばあたんが徘徊しても、元来怖がりな上、老人専用マンションなので
結構夜中でも見回りやらなにやら沢山あるからだ。
よそのおうちのドアを開ける程度で済む徘徊なんかより、
玄関のドアが夜中、開かなくなったことで
ばあたんが、日に日にためているストレスで、
認知が低下していっていることの方が、よほど気になる。
このままでは、外へ出ようとしてベランダの方へ出てしまいかねない。
あと、金曜未明のSOSの時、到着時に私が中に入れず
大変な思いをしたというのもある。
そのことを、じいたんに言った。すると…
「お前さんを、金曜の未明に呼び出したりなどしていない。
そんな事実はない。」
…一瞬、あっけにとられた。
じいたんの「まだらボケ」まで、ここまできているのだろうか?
それとも先日の騒ぎ(1)、(2)に続いての、この「徘徊騒動」に、
消化不良を起こしているのか。
気を取り直して、言ってみる。
「何で?おばあちゃんが畳に粗相した跡だって残っているし
私が買ってきた消臭グッズだって確認したばかりでしょう?」
でも、じいたんは頑として
「わしは嘘は言っとらん。お前さんの頭が"おかしい"んだ」
と言って聞かない。
…多分無駄だろうなと思いつつ、試しに言ってみる。
「ねえじいたん、わたし、おばあちゃん本人にだって、
嘘はつかずにやってきているの、見てきているでしょう?
それに、わたしが嘘をついても、何の特にもならないわ。
よく思い出してみて」
…すると、じいたんはとうとう、こんなことを言いだした。
「おまえさんがわしを陥れようとしているんじゃないのか?」
この一言で、私は、
今まで決して言うことのなかった「一言」を言うことに決めた。
たま「私を信頼して頂けないのでしたら、介護はお引き受けできません。」
じい「ああ、いいさね、お前さん、来なければいいじゃないか」
たま「そうですか。それならお二人で、施設に入ることになるでしょう。
伯父さんに、”わたし介護辞めます”と電話入れますね」
じい「いいさ、施設に入ったって。望むところだ」
…あーあ。やるっていったらやるのに、私。
やりたいことを、やる主義だって言ってるのに。
じいたんの目の前で、伯父に電話を入れた。
ひととおり、コトの流れを話し、施設を探してほしいと頼む。
「たま、疲れているんだよ。
明日は休め。俺が親父に電話入れるから」
伯父は言う。
いや、あのね、そういう問題じゃなくて。
もしこれが本当に「まだらボケ」の症状だったら、物理的に無理…
電話を入れているあいだに、じいたんは書斎へ逃げ込んだ。
頭に来たが、放っておくことにする。
ここで追いかけてもろくなことにならないのは、学習ずみだ。
*****************************
もそもそ起きてきたばあたんが、再びいびきをかきだしたのが
午前一時前。
まだ書斎にいるじいたんに、
「ばあたん、やっと寝ました。メモ、見といてください」
とだけ言い残し、部屋を後にした。
人の気配が消えた帰り道、怖い思いをしながら、
私の今までの苦労は、なんだったんだろうなって思った。
こんなくだらないことで涙なんか出ないけど、
私が最初から、係わらなかった方が、良かったんじゃないだろうか…
そんなことを思うと、なんだか、どっと疲れた。
気を取り直して、仕事を探そう。
*****************************
翌朝。
日曜、8時半過ぎ。
じいたんから、電話が入った。憔悴しきった声。
「たま、ゆうべはおじいさん、頑固になって、すまなかった
だからまた、来ておくれ。
荷物を引き取るなんて、言わないでおくれ。」
…他にも何か言っていたがあまり聞いていなかった。
はあ…orz
なんとなく、そう来ると思ってたのよね。
あれだけ立派に啖呵切っておいて、全部なかったことかい。
あーあ、賢いなぁ年寄りって。損だなぁ介護者って(泣き笑い)
それでも、二つ返事で
「よろしいのよ、じいたんのお気持ちも、わかるのだけれど、
わたくしの立場や言い分も、一度きちんと解って頂きたかったの。
それだけですの。だから、お気になさらないでね」
と、情にほだされてあっさり、態度を軟化させてしまった私も私だ。
もういやだ、こんな自分…orz
まあでも、仕方ない。
そういえば、ばあたんが昔、言ってたっけ。
「腹が立った時は、穏やかな方法でお伝えなさい。
そして、相手が謝ってきたら、すぐに赦してあげること。
それが大切よ」
…電話が鳴るまで、引き継ぎ書類を作り、求人ページを見ていたこと、
じいたんには黙っておこう。
ご信頼頂けない以上、介護はお引き受けできません。伯父上にご相談ください。ありがとうございました」
土曜から日曜へ日付が変わった午前一時、
じいたんに置手紙をして、祖父母宅を後にした。
ばあたんのせん妄が落ち着き、目が覚めないのを確認して。
*************************
じいたんとの諍いのもとは、30日(土)朝に
余所のヘルパーさんが室内に置いていったメモだった。
朝五時ごろに、エレベーターに乗って迷っていた祖母を保護して、
フロントで居室を確認し、部屋まで連れ帰り、
水分補給とトイレ介助をして寝るまでそばにいてくれたとのこと。
祖父は安眠していたので、起こさないで、
代わりにメモを置いていってくれたようだ。
うちが雇っている方ではなく、よそでお仕事されている方が
善意でそこまで、お世話してくださったのだ。
だが。
じいたんはそれを、嘘だと思ったらしい。
「お前さん、こんなおかしいことがあるかね?
おじいさんは、ちゃんと紐でドア左上のアームを
くくって、出られないようにしてあるんだよ」
しかしフロントに確認したら、やはりそのメモは正しかった。
だいいち、その前日(金曜未明)は、私が未明から朝まで
祖母のそばにいたのだから、そんなことはあるはずがない。
そして、7/30(土)付のこんなメモ、
前の晩に私がいたときには、部屋の何処にもなかった。
じいたんは多分、紐でドアのアームを縛らなかったのだ。
正直それでもいいと私は思っていた。
なぜなら
ばあたんが徘徊しても、元来怖がりな上、老人専用マンションなので
結構夜中でも見回りやらなにやら沢山あるからだ。
よそのおうちのドアを開ける程度で済む徘徊なんかより、
玄関のドアが夜中、開かなくなったことで
ばあたんが、日に日にためているストレスで、
認知が低下していっていることの方が、よほど気になる。
このままでは、外へ出ようとしてベランダの方へ出てしまいかねない。
あと、金曜未明のSOSの時、到着時に私が中に入れず
大変な思いをしたというのもある。
そのことを、じいたんに言った。すると…
「お前さんを、金曜の未明に呼び出したりなどしていない。
そんな事実はない。」
…一瞬、あっけにとられた。
じいたんの「まだらボケ」まで、ここまできているのだろうか?
それとも先日の騒ぎ(1)、(2)に続いての、この「徘徊騒動」に、
消化不良を起こしているのか。
気を取り直して、言ってみる。
「何で?おばあちゃんが畳に粗相した跡だって残っているし
私が買ってきた消臭グッズだって確認したばかりでしょう?」
でも、じいたんは頑として
「わしは嘘は言っとらん。お前さんの頭が"おかしい"んだ」
と言って聞かない。
…多分無駄だろうなと思いつつ、試しに言ってみる。
「ねえじいたん、わたし、おばあちゃん本人にだって、
嘘はつかずにやってきているの、見てきているでしょう?
それに、わたしが嘘をついても、何の特にもならないわ。
よく思い出してみて」
…すると、じいたんはとうとう、こんなことを言いだした。
「おまえさんがわしを陥れようとしているんじゃないのか?」
この一言で、私は、
今まで決して言うことのなかった「一言」を言うことに決めた。
たま「私を信頼して頂けないのでしたら、介護はお引き受けできません。」
じい「ああ、いいさね、お前さん、来なければいいじゃないか」
たま「そうですか。それならお二人で、施設に入ることになるでしょう。
伯父さんに、”わたし介護辞めます”と電話入れますね」
じい「いいさ、施設に入ったって。望むところだ」
…あーあ。やるっていったらやるのに、私。
やりたいことを、やる主義だって言ってるのに。
じいたんの目の前で、伯父に電話を入れた。
ひととおり、コトの流れを話し、施設を探してほしいと頼む。
「たま、疲れているんだよ。
明日は休め。俺が親父に電話入れるから」
伯父は言う。
いや、あのね、そういう問題じゃなくて。
もしこれが本当に「まだらボケ」の症状だったら、物理的に無理…
電話を入れているあいだに、じいたんは書斎へ逃げ込んだ。
頭に来たが、放っておくことにする。
ここで追いかけてもろくなことにならないのは、学習ずみだ。
*****************************
もそもそ起きてきたばあたんが、再びいびきをかきだしたのが
午前一時前。
まだ書斎にいるじいたんに、
「ばあたん、やっと寝ました。メモ、見といてください」
とだけ言い残し、部屋を後にした。
人の気配が消えた帰り道、怖い思いをしながら、
私の今までの苦労は、なんだったんだろうなって思った。
こんなくだらないことで涙なんか出ないけど、
私が最初から、係わらなかった方が、良かったんじゃないだろうか…
そんなことを思うと、なんだか、どっと疲れた。
気を取り直して、仕事を探そう。
*****************************
翌朝。
日曜、8時半過ぎ。
じいたんから、電話が入った。憔悴しきった声。
「たま、ゆうべはおじいさん、頑固になって、すまなかった
だからまた、来ておくれ。
荷物を引き取るなんて、言わないでおくれ。」
…他にも何か言っていたがあまり聞いていなかった。
はあ…orz
なんとなく、そう来ると思ってたのよね。
あれだけ立派に啖呵切っておいて、全部なかったことかい。
あーあ、賢いなぁ年寄りって。損だなぁ介護者って(泣き笑い)
それでも、二つ返事で
「よろしいのよ、じいたんのお気持ちも、わかるのだけれど、
わたくしの立場や言い分も、一度きちんと解って頂きたかったの。
それだけですの。だから、お気になさらないでね」
と、情にほだされてあっさり、態度を軟化させてしまった私も私だ。
もういやだ、こんな自分…orz
まあでも、仕方ない。
そういえば、ばあたんが昔、言ってたっけ。
「腹が立った時は、穏やかな方法でお伝えなさい。
そして、相手が謝ってきたら、すぐに赦してあげること。
それが大切よ」
…電話が鳴るまで、引き継ぎ書類を作り、求人ページを見ていたこと、
じいたんには黙っておこう。