じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

じいたんのいびき。ばあたんの匂い。

2005-08-30 02:46:32 | じいたんばあたん
例によって、じいたんの書斎からアクセス。

明日は、ばあたんが入院している病院で、じいたんも診察を受け
そしてばあたんを二人で見舞う予定。
片道一時間半はかかるので、結構、強行軍。
お手洗いの問題や、水分補給のタイミングなど
きちんと考えながらルートを選んだ。

隣の部屋からは、じいたんの豪快ないびきが聞こえてくる。
それを聞くと、ちょっと、ほっとした気分になる。
ばあたんがいない寂しさの中でも、きちんと眠るじいたん。
がんばってくれているなあって思う。

今日は、じいたんの隣の、ばあたんのベッドで休むつもり。
ほんの少しだけ、ばあたんの優しい匂いが残っている、
その枕で
明日は私を認知できないかもしれないばあたんに、
こっそり甘えてから
面会に行こう
そう思って。



看護師さんに聞いたら、食が細くなってしまっているとのこと。
昼には、もし私のことがわからなくても、
食事介助をさせてもらえたらうれしい。

ばあたんに頬ずりする夢を見る。
しょっちゅう見る。
ばあたんが頭をなでてくれる夢を見る。
しょっちゅう見る。

「たまちゃん、そんな悲しまないで。
 おばあちゃんまで悲しくなってしまうわ」

私が、家族のことで悩んで彼女の前で涙ぐんでしまったとき、
一緒に泣いてくれた、ばあたんの、
やさしい、おおきい、暖かい手を思う。

じいたんのいびきを聞きながら、そんなことを思い出している。

じいたんの慰労会。

2005-08-28 22:56:01 | じいたんばあたん
今日は、一番末の従妹が祖父宅へやってきた。

「夏休みの間に何とか一度、来るね」
と言っていた彼女。

最初、介護疲れで微熱が続いている私は、
ホームヘルパー二級を持っている彼女に「途中まで」、
じいたんと二人きりで過ごしてもらおうと思っていたのだが、

いざ頼んでみると(たかだか服薬の促しと散歩介助、
そして一緒に食事をすることくらいだ)、
あからさまに気乗りしない返事。

少し腹が立ったけれど、

彼女にしてみれば
じいたんだけではなく、私にも会いたいから来るのだ。
(母親の病気や就活のことなどを話したいのだろう)
やっぱり、寝ているわけにはいかないか。
そう思い直し、当初の予定を変更することにした。


それでも、私一人で、
彼女と祖父の両方に気を配るのはしんどいので、

彼氏=介助犬ばうにとりあえず、応援要請をして
昼過ぎ、祖父宅へ行った。

実を言うと、少々うんざりした気持ちで。


*****************


それでも、今日は、こうしておいて良かった。


なぜなら四人で、にぎやかな
「じいたんの慰労会」ができたからだ。


八月最後の日曜日、偶然実現した
会食のために、選んだ店は、
公園の中にある、イタリアンレストラン。

建築家の手で造られた、白とアースカラーが基調の建物。
天井が高く、そしてオープンテラスになっていて、
蝉の声や涼しい風が、室内まで入ってくる。
空や風景にはいっぱい、明るい緑色と木漏れ日が降り注ぐ。

テラスで食事をしている人たちは、小型犬を連れていたりして、
「とてものどかな休日」が広がっている場所。


そんな、「介護の匂い」が微塵もしないところで、

ひさしぶりに、
「じいたん中心」のひとときを、つくることができた。



うれしかった。

いつも、いつも、いつも
じいたんのことは、後回しになってて。
ばあたんが入院するまで…

そのことが、いつも、いつも
とても気になっていたのだ。



イタリアンというメニューが、じいたんの気に食わないか?
と少し、心配だったのだけれど、

じいたんは、「お前さん、これはおいしいなぁ」と
喜んで食べてくれた。
「ホント?」と聞くと
「もちろんさね」と笑顔で答えてくれた。
ああ、うれしい。


四人ともパスタセットを頼んだのだが、
あいにくデザートがついていなかったので、
従妹とじいたんのだけを、追加する。

そして、じいたんと従妹がデザートに熱中しているうちに、
さっさとレジを済ませた。
もともと、この店を使おうと思ったときに、
最初から私が払うつもりだった。

この料理に、これだけのコストがかかるということを、
じいたんの世代の人は、理解できない。
彼らは、とても質素な人たちなのだ。

それに、たまには
「孫にしてもらった」という気分を
存分に味わって欲しかった。

ばあたんのことは、よく、散歩のとき、喫茶店に連れて行ったけれど
じいたんに、外でご馳走したことは一度もなかったのだ。


やっとできたよ、じいたん。
わたしはね、じいたん、

ばあたんもじいたんも、同じだけ好きなんだよ。
本気で憎たらしいと思うこともあるけど、
本当に本当に大好きなんだよ。

そう、こっそり告げることができたような、
そんな気がして、本当にうれしかったのだ。

 (伝わらなくてもいいのです。
  伝えておきたかったのです。
  祖父の、最近の、しんどそうな横顔が、怖いのです
  別れが近づいていやしないか、そう思うのです)



レジを済ませて席に戻ったら、
じいたんがさっと、手を差し出した。

「お前さん、勘定はおじいさんが払うよ。
           レシートを寄越しなさい」

…来た。でも、言ってみよう。

「うふふ。今日は、じいたんと従妹の慰労会だよ。
 だから、わたくしに任せてちょうだい。
 最初っから、そのつもりでしたのよ。
 たまには、ご馳走させて?」


どうだろう。
プライドの高い、じいたん。

内心ドキドキしながら反応をうかがう。


じいたんは、しばらく考えた後、
手をそっと、ひっこめた。

そして、心配そうに

「お前さん、お金は、大丈夫なのかい?

 おじいさんは、お前さんが支払うなら、
     デザートなんて頼まなかったのに」

と言う。

なんて、いじらしいことを言うんだろう。


いいんだよ、じいたん。
じいたんは、もう、じいたんなんだよ。
もっと大事にされても、いいんだよ。
生きているだけで愛される存在なんだよ。


ほろっと涙が出そうになったが、ごまかして

「デザートも、食べて欲しかったの」
にっこりうなずくと、

じいたんは、
何ともいえない嬉しそうな顔をして、

「…じゃあ、今日は、ご馳走になるよ。
 おじいさんは、幸せ者だな。
 ありがとう。ありがとう。」


ああ、よかった。
「ありがとう」って言ってもらえた。

久しぶりに「すまんな」じゃなくて「ありがとう」を。
久しぶりに、感情のこもった笑顔を。

ばあたんが入院してから、見られなくなっていたものを。


…そして。

じいたんは帰り際、
自分の財布と帽子を店に忘れたのだった(笑)


じいたんらしいオチである^^


**********************


多分、数日もしたら、じいたんは、忘れてしまうだろう。

それでもいい。

今夜、見送ってくれるとき、

「今日は、本当に楽しい一日だったね、お前さん」

と、言ってくれた、あの笑顔。


それだけで充分。

MRIを何故、お年寄りが嫌がるかについて。

2005-08-26 23:51:06 | じいたんばあたん
今日、じいたんと二人、夕食後のお茶をしていたときのこと。

じいたんに、自分の頚椎のMRIの結果について報告すると、
思い出したように、じいたんが言った。

「お前さんも、MRIを受けたのかね。
 いや、おじいさん呑気者で、知らずにいて申し訳なかった。
 (↑じいたんが、忘れているだけなんだけど…orz)

 一人で、怖くはなかったかい?嫌だと思わなかったかい?」


…??


何を聞かれているか良く解らなかったので、
とりあえず

「いや、面白かったよ。変な音はするし、
 装置のしくみがわかっているから、
 なんていうか楽しみだったし。
 身体を動かしたらあかんっていうのがしんどかったけど」

と答えたら、じいたんはため息をついた。

「お前さんは、やっぱり若いんだなぁ」



…???

すぐ、じいたんは続けた。

「なあ、お前さん。こんな話があったんだよ。
 この、マンション(健常な高齢者専用マンション)に住んでいた
 おじいさんの友達なんだが、それはそれは身分も出自も立派な方で、
 いつも堂々としていなすった男の人がいたのさ。」

うん、それで?

「だが、その方は、MRIを受けるときに、
 そのー、なんだ、ひどく暴れたそうだ。
 全身を皆で押さえつけなければならん位にな」


…MRIを受ける際、それに耐えられそうにない人には通常、
睡眠導入剤を使う。
わたしは、そのことを知っていたが、敢えて
黙って、じいたんの話を、目で促した。


「何故なのだろう、と、あれからおじいさん、随分
 考えてみたんだよ。
 
 あの機械の中にずるずると運ばれていく時というのはだな、
 まるで、火葬場で焼かれるときにそっくりだからだ、と、
 おじいさんは思ったわけだよ。」


…呆然とした顔を、私はしてしまったのだろう。
じいたんは続けて、

「お前さんたちのような、若い人には想像も出来んだろう。

 だがね、お前さん。

 わしらのように、お陀仏が目の前に来ている人間には、
 あの機械はまるで
 火葬場の竈のように見えるのさね。
 わかるかい?

 生きたまま焼かれたら、たまらんからなぁ。
 死んでから焼かれるならまだ、諦めもつくが。」



…言葉が出ないので、ただ黙ってうなずく。


じいたんはさらに続ける。

「おばあさんは、また、入院中、
 あの検査を受けなければならないのかい?」

…そうか。
それも、心配だったのね。
私は即座に答えた。

「ばあたんの入院先には、MRIないから、大丈夫よ。
 それに、拒否することも出来るから。
 心配しないで」

そういうと、じいたんは、安心したように目を閉じた。
そして、いつもの顔で、わたしの前で、まどろんでゆく。





……じいたんにMRIの検査を受けさせたのは
今年の3月の終わりだった。
慢性硬膜外血腫の疑いがあったからだ。

検査には、私が付き添ったのだけれど、
当然、中に入ることは出来るはずもなく…


かなり長い時間の後、検査室から出てきたじいたんは、
珍しく
わたしを着替えの手伝いに呼んだ。


鍵のかかる更衣室で、二人きりになったとき
じいたんは

「痒い。痒い。痒くてたまらん。
 たま、掻いておくれ」

と、
それこそ
背中から股ぐらまで
すべてを

20分ほど、
私に掻かせ続けたのだった。


じいたんにとって、検査が辛かったのだということは
すぐにわかったのだが、

何故そんなにあの検査が辛いのか、あのときの私には全く解らなかった。


でも。
今は理解できる。

じいたんは、死の近づく音を、身体で感じている。
わたしの感受性よりも、はるかに現実的に。

そのこころのありかたさえ、言葉に出してもらわなくては、
見えないなんて。
猫失格。


じいたん、ごめんね。

たとえ話としてしか話せない、じいたん。
漠然としか、いつも何も見えていない、わたし。
そばにいても、ただそばにいるだけ。

わたしには想像も出来ない、恐怖と闘う毎日を送っている。

孤独を埋めるひとかけらにさえなれない。


でも、
じいたん、わたしね、

理解できないからこそ、ずっと
目に焼きつけ続けるからね。


あなたが
最愛の妻にも忘れられ

それでも
屈することなく
孤独と闘う姿を誇りに思っています。

決して、決して忘れないから。

『新訳 星の王子さま』倉橋由美子訳

2005-08-25 19:33:39 | 本棚
※まだ草稿段階ですが、一刻も早くこの本を、手に取っていただきたくて※

この『新訳 星の王子さま』は、

…原書の雰囲気を余すところなく発揮している訳であり
大変読みやすい文章でありながら、
非常に味わい深い仕上がりになっていることを、

まず初めに、お伝えしておきたく存じます。

”大人のための本”として書かれている「原著」に
非常に忠実に訳されている、一冊です。


********************


『星の王子さま』は、日本では、童話ないし子供向けの書物として
扱われてきた感じがある。
優しく美しい、善意に溢れた、御伽噺のような、
内藤さんの訳。

それはそれで悪くはないのだ。
あの時代なら、この訳しか出なかっただろう。
アンデルセンの物語が全て、原書のどきつさを抜かれて
日本に紹介されているように。


でも、それでも私は、物足りなかった。
何かがオブラートに包まれてしまっているような、違和感。
子供向けに書き直されてしまった、「さみしさ」
…そんなものを、子供時代に読んだとき感じた覚えがある。

「もっとはっきり書いてくれてもいいのに。
  子供は童話だけを求めているんじゃない」

同じ時期に読んだ、「夜間飛行」の方がよっぽどいい。
そう思っていた。ずっと。


大学に入ってから、第二外国語として仏語を選んだ。
仏語でトライしたい作品があったからだ。
それらを読むために、「内容がわかりやすいから
、辞書を引きながらなら読めるだろう」
と踏んで借りた、原著。


子供時代に感じたのとは全然違う世界が、
そこには広がっていた。
子供のこころだけを持った自分との決別。それがテーマ。
なんて素敵な本なんだ、と改めて見直した。



今回、倉橋由美子訳が出て、早速入手した。

彼女自身の幅広い知性と、半端じゃない文学的知識という裏地が
『星の王子さま』のために惜しみなく発揮されており、
(そして仏語を日本語へ訳する能力の高さもだ)

原著に忠実な(文化的背景までも含めた意味で)一冊となっている。

最後に、倉橋自身による後書きから、一言だけ。

『王子さまと、彼の星に咲く一輪の薔薇の関係は、
 実は現実の、"男と女の関係”そのものである』

新訳 星の王子さま

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介護士の、Yさんへ。

2005-08-24 13:14:24 | 介護の周辺
※すべての介護士さんに読んで欲しい。こんな気持ちで、主たる介護者は、介護士さんの存在を頼りにしているのです※


ばあたんの、身体整容その他の介助に、早朝、
うちに来てくださっていた、介護士の女性への手紙です。

*********************

Yさんへ


ばあたんが入院して、数日が経ちました。
暑い毎日ですが、お元気でいらっしゃいますでしょうか。


あなたが来なくなってしまってから、
我が家の朝は
とても、とても淋しいものになりました。


お仕事で入っていただいているとはいえ、
あなたがお越しくださる日は
わたしにとって、心から安心して朝を過ごせる
そんな「安息のひととき」でした。

事業所への信頼ではなく、
信頼できる『固有名詞』としての介護士
それが、あなたでした。


あなたがお見えにならなくなってから、
じいたんは、あまり笑ってくれなくなりました。
もちろんそれは、ばあたんの入院によるところが大だとも思うのですが、

あなたの、穏やかで、ゆったりとしつつも的確な介助が
なくなってしまったことも、原因のひとつだと、
わたしは思っています。


かく言うわたしも、
あなたにお目にかかれなくなってしまったことが
まるで同志をひとり失ってしまったかのように
心細く、淋しく思う気持ちを禁じえないでいます。

ばあたんが戻ってこられるかどうかはわからないし、
ひょっとしたらもう、お目にかかれる機会はないのかもしれない。
夜間専門でお仕事をなさっている、あなたには。


うちのじいたんばあたんに、心のこもったさりげない朝を
長い間、与え続けてくださって、ありがとう。
もし、ばあたんが、退院することができましたら、
そのときはどうぞ
また
我が家へとお仕事にいらしていただければ嬉しく存じます。


気候の変化が激しいこの時節、
どうぞ、おからだにはくれぐれもお気遣いなさりつつ
他のすべての被介護者とその家族に
あなたの素敵な笑顔を、見せて差し上げ続けてください。

遠くから、ご無事をお祈りいたしております。


介護人たま 拝

親友からのメール、未明に。

2005-08-22 05:37:25 | 友人
メールボックスを今、ふとみたら、
「にゃぼ」からのメールが。

うわ。うれしい。
読むと、何かのプレゼント?を、送ってくれるとのこと。
さっそく、祖父母宅の住所を知らせる。


・・・でもね、にゃぼ。
何よりあたしがね、うれしかったのは、
アンタのメールの最後の一行。


>キタナイ部屋でも、生きててくれれば私は良いです。


いつも黙って、そっと見守る。
それがどれだけ辛いことか

耐えてくれて、ありがとう。
10年以上になる付き合いの、にゃぼ。

アンタ元気でおってな。生きててな。頼むから。
元気で、そして幸せで、おってな。

それはアタシの「希望」やねん。
アンタが幸せやっていうことが、胸をあたたかくするねんで。
元気でおって。おねがいやから。

ブログよ今夜もありがとう。

2005-08-22 04:29:04 | ブラックたまの毒吐き
「明日の朝、近所の手伝いがあるから、今夜は帰るね」
じいたんにそう言って、なんとか帰宅したわたし。

だが。

冒頭の、わたしの言葉は、じつは事実ではない。
ときおり、「どうしても」というときに使う、
常套句の「嘘も方便」である。

これには、オリジナルがある。
「アパートの、ゴミ捨て場の掃除当番が当たってるから」
今は、子供たちの夏休みだから、ちょっと加工。


じいたんに嘘をついたのは、

本当のことを上手に伝えられないほど、
いっぱいいっぱいになっている自分の状態を、
じいたんに悟られるのが、怖かったからだ。
少なくとも、今の、
ひとりぼっちで夜をすごす、じいたんには。

そして、
睡眠時間そのもの、というよりはむしろ、
この二年間の間に失われた「ひとりになれる時間」を、
いま、この「現在」できっちり
取り返しておかなければ、

これから先の、長い長い道のりをゆくための必須アイテム、
「終わりの見えない闘いを愉しむこころ」が
決定的にスポイルされてしまいそうだと直観したから、

だから、自宅に戻りたかった、というのが真相なのだ。
でも、嘘をついた。
嘘をついて、帰ってきてしまった。



祖父母の家は、祖父母の家であって、わたしの家ではない。

「帰るところ」のうちの一つではあるのだけれど、
 (玄関をくぐるとき、
   「ただいま」と言うのが癖になってしまった)

祖父母宅には「わたしの部屋」がない。
それがたまらなく息苦しいのだ。

正直なところ、この程度のストレスに
まさか自分が負けるとは、思ってもみなかったのだけれど、

ひとりになれる時間が持てないということが
今のわたしにとっては、厳しい負荷として
ずしり、と、のしかかってくる。

それで今夜、嘘をついて、
じいたんを一人にして
帰ってきてしまった。

この判断は、多分正しいはずなのだ。

もし同じ立場に、友人がおかれていたとしたら、
絶対に「帰れ」ってアドバイスするもの。




でも。


自宅に帰ってきてシャワーを浴びているとき、

ノズルから噴き出す水の音が、
かすかに聞こえてくる携帯の着信音のように聞こえて
何度も、風呂場のドアを開けてしまいそうになる。

(開けたらおしまいだという気がするので、
    耳をすませるのみにとどめ、踏みとどまる)



狂ったようにネットで遊んで、よそさまを巡回して、
こころからいっぱい、笑って、感動してから
寝る支度をし、PCの電源を一旦、落としたのに、

かかりつけ医にリクエストして、せっかく処方してもらった、
ごく軽い睡眠薬(ロクに効かないやつ)さえ、
「何かあったとき起きれなかったらどうしよう」
という思いにとらわれ、飲むのをためらってしまう。

(なんとか、口には入れる。
  けど、半減時間から逆算して1/2錠。
     効く量飲まなきゃ意味がないのに。
          合理的な行動を取れていない。)




大誤算。
ひとりになれさえすれば大丈夫だと思っていたのに。


こんなんだったら、嘘なんてつかなきゃよかった。



でも、そう思う一方で

「これは、嘘をついておいて正解だったのだ」
と判断しているわたしも同時にいる。

優しい嘘は、美徳だ。
「たてまえ」がたいせつな場面だと
もうひとりの自分は、判断しているのだ。

建前というカーテンをうっすらしいて、危機をやりすごすのは、
ある場面では、社会的な智慧であり思いやりだ。
誠実であるということは、嘘をつかないということと
イコールではない。

それに、とりあえず
自分の欲求に対してはなるべく誠実でいなければ
とたんにバランスを崩して、
介護に支障をきたすであろうことは目に見えている。



なにより

「祖父母の家は、祖父母の家であって、わたしの家ではない」
この、あまりに当たり前の事実を、
いまのじいたんには、突きつけたくない。
突きつけたく、ないのだもの。


それでも…、それでも。

何で正直に言わなかったんだろう。
こんな未明になって、後悔するくらいだったら。




嘘をついた代償を背負った分、
明日からまた気持ちを切り替えていこう。

トライ&エラーの連続でしか、わたしは学べない。
これが、今のあたしのキャパの限界なのだ。
ああ、ちいさいわ。ホント悔しいったら。

でも。そうだ。そうじゃん。
現在のわたしの、キャパが把握できただけでも
今夜、嘘ついて帰ってきて、収穫だったよ、わたし。
よしよし。おりこう、おりこう。

なんて、殆どこじつけで自分を励まして(笑)


…ああ、ここまで書いてみて、
やっと、眠れそう。


ありがとう。ありがとう。
嘘ひとつ抱えきれない、ちいさな私を
なんとかコンテインしてくれる

ブログという真っ白な宇宙に、
今夜も、ありがとう。

ツッコミどころ満載。

2005-08-22 00:40:45 | 介護の周辺
※これ、結構お笑いかも。お笑いってカテゴリつくろうかな※

昨夜、10時半過ぎ、割と疲れ果てた状態で
自分の部屋に戻ってきた私。
「ひとりでくつろげる時間」を、満喫する気、満々で…


そんな私を待ち構えていたのは、


…30代女性の部屋とは思えない、荒れ果てた光景でした…orz


思わず、風呂場に逃避(おぃ)


今までなんでこんな部屋で平気だったのか、
我ながら理解できません…^^;


あんまりだよ、わたし。
どうしちゃったのよ、わたし。
何処に何を置き忘れて育ってしまったの?わたし。

と、頭をがしがし洗いながら考える。
どうにかしなきゃこの部屋。
なんでいままでこれが見えてなかったの??



だが。
かといって、

彼氏=「介助犬ばう」に、これを片付けさせるわけにはいかない。


なぜなら、
一応、わたしにだって、(こんなんやけど)
「女性」という性別がついているのだ。
ついうっかり忘れがちだけど。
 (↑じいたんに窘められる、一番のネタだ)


性差とは、生物学的でありながら同時に
非常に文化的なものだ。
人は、先人たち築いた「文化」=「人のための自然」の中で生きる。
自然に逆らった生き方は、しんどい。

なのにこれ以上、
その、なんていうのかしら、

介助犬ばうに、アドバンテージを与えてたまるか(笑)


ブログの記事にすべき事項が
たまりにたまっているというのに、
部屋を片付けたくてしようがありません(汗)
ある意味この記事も、片付けの一種に似ているけれど。

でも、散らかった部屋とブログ、その二つの極を、
順繰りに逃避しながら、自由な夜を過ごすのでしょうが…orz
だって、一週間くらいかけないと片付かないくらい、
荒れ果てているんだもの…

うわーん!!

傘を寄せ集めて、自転車にくっつけて、組み立てた
そんなおうち、道端にあるでしょ?
あれの方がよほど、機能的で美しい…(泣)


追伸:身内一同へ
「何寝言言うてんねん、いつもやん、アンタ(冷笑)」
みたいなツッコミは、今夜だけはせんといてや。
でないと泣くで、うち。ホンマに…・゜・(ノД`)・゜・。

入院手続き、ひと段落のご報告。

2005-08-21 03:11:21 | 介護の周辺
※8/21、05:37追記いたしました※

この金曜日、おかげさまで、無事、ばあたんを、
現時点での彼女にとって、最適であろうと思われる、
件の病院へ入院させることが出来ました。

まだ事務処理が残ってはおりますが、とりあえず一段落、
つきましたので、こちらに戻ってまいりました。

沢山のコメントや励ましのメール、ありがとうございます。
お返事を書けない状態でしたが、
つぶさに何度も繰り返し、繰り返し読ませていただきました。

臆病で葛藤だらけのわたくしとじいたんばあたんが、
今回の「山」を何とか、乗り越えることが出来ましたのは、
ひとえに、皆様のお力添えによるものでございます。
本当にありがとうございます。

言葉に尽くせぬ感謝の気持ちを、お伝えしたく
取り急ぎ記事をUPいたします。

経過報告は、コメント返信の後に、あらためて。

**************

それから、もうひとつ重要なことを。

記事よりもむしろ、みなさまに頂いたコメントの方が
示唆と慈愛に富み、読む価値があるものとなっているのが
当ブログの大きな特徴でございます。

どうぞよろしければ、
ROMの皆様や、初めてお越しの皆様におかれましても、
読者さまから寄せていただいたコメントを是非、
ひとつひとつお読みいただければと思います。

コメント返信の遅れについて(2)

2005-08-17 02:59:01 | お知らせ
コメント、ひとつひとつ、噛み締めながら
何度も読ませていただいております。

感情を上手く感じることができない
今のわたしにとって、
皆様から頂戴するメッセージが、
どれほどありがたい示唆となることか。

そのことだけでも先にお伝えしたく、記事としてUPします。
本当にありがとうございます。

コメント返信が遅れておりますが
(それから、りらっくまプーさんの発送も)
来週になりましたら時間ができますので、
それまで、お待ちいただけましたらと思います。

(もともと、記事を打つのは早いほうなのですが、
 なかなか頭が整理できなくて。)

どうぞよろしくお願い申し上げます。

            たま@ばあたんのベッド脇