じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

一ヶ月前に比べても

2005-07-17 15:46:39 | じいたんばあたん
ここに、一ヶ月前に書きかけ、放っておいた記事がある。
もともとのタイトルは「認知」
ばあたんの、認知レベルについて書いたものだった。

丁度わたしが事故に遭って10日後、
介護できる時間が減ってしまっていた時期の話である。

でも、この時期よりも、さらに認知の低下が進んでしまったばあたん。
やっぱり進行を食い止めることは出来ないのだろうか。


***「認知(6/16の原稿)」**************************

じいたんは、一旦何かに熱中しはじめると、音も何も聞こえない人になる。
書斎にいようが居間にいようが、ものすごい集中力を発揮する(笑)
まだ若かった頃から、じいたんはそういう人だったし、
父もこういう人だったし、
私はもう慣れっこなのだが、

問題は、ばあたんである。

ばあたんは、アルツハイマー型認知症の中期(?)である。
現在の、ばあたんの人物認知力は
「自分を認知してもらえていないと、相手を認知することができない」
レベルなのである。
特に夕方4時くらいから寝るまでが、あやうい。

例えば

洗濯機を回してくれているじいたんの目の前で、
「たまちゃん、おじいちゃんは何処へいったの?」
とうろたえる。

じいたんのいる書斎を覗きこみながら、
「たまちゃんと私しかいないの?他の家族は?」
と、不安げに、私にたずねる。

空っぽの、じいたんのベッドの上を見て、
「たまちゃん、おじいちゃんたら昼間から寝てるわ」
…そこにじいたんは、横たわってはいないのだが。

こんなことは、日常茶飯事である。
ほんの3分前に、じいたんと話したばかりでも。


うっかりすると、外へ誰かを探しに出ようとする。

(実際、わたしがいない時間、外へ出ているときがある。
 親切な近所の人が、そっとばあたんを、玄関まで送り届けてくれるのだ)

******************************************

今は、このときと比べてさらに、進んだ。
まるで、坂を転げ落ちるように認知がどんどん壊れていくのが
毎日通っていても、分かる…。

激しく、間断なく続く、不安の訴え。
不安から出てくる、一見すると了解不能な行動の数々。

「おばあちゃん、なにも、わからないのよ」

その不安が彼女の脳を占拠してしまっているのだろうと思う。
苦しい病である。

夕べ、彼氏がばあたんに、30往復くらいして、トイレの場所を教えていた。
電気のつけ方も新しく工夫して、少しでもばあたんが迷わないように考えてくれた。
ばあたんは、彼氏の誘導が繰り返されるうち、落ち着きをとりもどした。

ただ、ひとつだけ問題がある。
彼女は今、便器を認識できない場合が出てきているのだ。

それでも、願う。
彼氏がばあたんにしてくれた、訓練の繰り返し=愛情が
ばあたんの中にうっすらと残り、
それが、真夜中の彼女を救ってくれることを。

…それでも夕方から朝まで行くというパターンに切り替えないとだめかな、
などと最近は思い始めていたり…
なかなか難しいです。