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街の散歩…ひとりあるき

13-14…憍曇彌夫人、妬心、日頃に百倍しこれは口惜しや如何せん…『釋迦尊御一代記圖會』巻1 

2024年07月26日 | 宗教

たまう。淨飯王、大いに歓喜したまい、起(たつ)て夫人を礼拝し、朕が見るところの夢も
正に斯くのごとし。これ諸天、朕に太子を授けたまうに疑いなしとて叡感したまう
こと限りなし。

憍曇彌、嫉妬、摩耶を招く

かくて摩耶夫人はその翌日より、身の重きを覚えたまいければ、いよいよ夢想
の違わざるを感じ起居飲食を慎みたまうにぞ。淨飯王も夫人の身に過失(あやまり)
ならせじとて医官に委ね、昼夜の診脈怠らず、諸々の女官・婇女に命じて
舞歌吹弾をはじめ諸般の技芸をさせて且暮(あけくれ)、夫人の心を楽しめ
慰めたまいけり。されば、青龍城の男女傳官(つけびと)烏将軍夫婦をはじめ婢女(ひじょ)
下官にいたるまで悦ぶこと限りなく、太子の誕生を待つこと日旱に雨を乞う
が如し。このことを誰云うことなく月景城へ聞こえければ、さらぬだに嗔噫(しんい)
の焔(ほむら)に胸を焦がす憍曇彌夫人、大いにおどろき心中焼くがごとく、妬心、日頃
に百倍し、妾(わらわ)、已(すで)に大王の寵愛、妹摩耶に劣れるうえ、渠かれ)早(く王の胤を
身に宿し、太子降誕なるならばいよいよ勢いを妹に奪われ、妾は在れど

も無きがごとくならん。これは口惜しや如何せん、と、錦帳の内に悶えこがれて
憂いたまいけるが、いまは思いに耐えかねて傳官(つけひと)馬将軍を近く招きて
曰(いい)ける。この頃、宮中の風説には青龍城の摩耶こそ皇子を懐妊とて、
大王の覚えめでたく百司百官の尊敬重んじず。もしそのこと実事にて
渠(かれ)安々と皇子を生みなば、必定、后宮女御の宣旨を得て、上見ぬ
鷹の挙止(ふるまい)をなし、ますます妾(わらわ)を蔑(ないがし)ろにし朝廷の諸卿はいうも
更なり。末々の民、市人らまで妾を侮り軽んじ、後ろ指を指されんは、いみじき
この身の恥辱ならずや。所詮、頼みなき世に存命(なづらえ)て身に憂きことを見んよりは
速やかに自害して黄泉の人となるべきに。大王へは俄(にわか)の患病(いたつき)にて死去
しと奏せよ。妾(わらわ)、宿世の戒行拙く非命の死をなすとても一念は霊鬼となり
摩耶も皇子も妖殺(とりころし)、大王に多くの苦悩を見せ奉り、いま
の怨みを晴らしなん。努々(ゆめゆめ)このことを洩らすことなかれと、憤怨の泪とともに
語られれば、馬将軍、あきれはて暫時黙然とし言句も発せずありけるが、やゝありて
心をしずめ色を正して曰く。御憤りの旨、理(ことわり)至極にそうろう。去りながら御自
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