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街の散歩…ひとりあるき

29-30淨居佛再び悉逹太子を試す…『釋迦尊御一代記圖會』巻之2

2024年09月07日 | 宗教

して答をさしむ。是に依って太子の再び問い賜う時、烏陀夷我を忘れて是死者に候と答う。太子ま
た問い賜い、何をか死というや。答えて曰く、それ死と謂は神去り呼吸断て地水火風の四大散り五
躰腐乱するに至り候。人世に在て五欲を擅(ほしいまゝ)にし、銭財を貪り積み集めることを知って無常
を知らず。已に刀風を為に形を解かれ、死路に赴きては父母親戚悲みを惜めども、其の甲斐無く只
枯たる草木の如く日ならずして朽ち果て候なりと申す。太子聞てまた曰く、唯人のみ然や、一切衆
生も皆然や。烏陀夷なお神通に励され答えて曰く。豈此の人にのみ限り候べき。王侯貴族より下民
飛泉に至るまで一人も死を免るゝ者は候わずと申す。太子聞き賜て御身に冷や汗を流して曰く。世
間已に斯くの如く死苦有って一瞬の間も安心すべからず。然るに世人何ぞかゝる大苦悩を抱きなが
ら、色食に愛着し放逸の行いをのみ好むやと、嘆息し賜う事止まず。怏々として月景城へ回り着き
賜う。憍曇弥夫人は太子仮山(つきやま)へ出遊し賜ば必ず旬日は滞留し御遊有るべしと思し召しける
に、唯半日にして還幸し賜いしかば心悦び賜わず。密かに烏陀夷を召され、太子仮山へ出遊し賜い
楽しみ賜しや否やを問い賜うに、烏陀夷、隠すこと能わず行幸の路の上病者あって太子の御心を煩
わし奉り、已に還幸あらんと仰せしを種々に諫め進らせ左右(とかく)して仮山へ行幸なし奉り百般(い
ろいろ)の遊戯をなし慰め進らすれども楽しみ賜う体なく唯ながめがちにていと早く還幸を促し賜う

により止む事を得ず御車を還し奉るに再び路上に死者有て太子を愁(うれい)しめ奉り候と
言上す。憍曇弥おどろき賜い、羅毘尼苑御遊の路に老者あって車を還し賜うにより、此回(たび)
は大王の勅諚にて路上に老人病者不浄の者を在せられず厳かに触させ賜いしに、何が故病者
乃至死者を見賜いしや。是、外吏の怠りなりとて其の旨、王宮へ奏聞有ければ、淨飯王、甚だ
逆鱗あり、外吏を悉く庁へ召させ、官人に命じて罪を糺(たゞ)させ賜うに、外吏等口を揃えて陳し
けるは、下官等大王の直営を重んじて厳かに老病不浄の者を払い除き候に、何国よりとも知れず
忽然と病者 出現し候いぬ。然れども何(いず)くの者なく其の行き方も知れず候。亦、還幸の路
に死者の在し由は絶えて見とめし者も候わず。是(こ)は跡なき讒奏にてぞ候らめ怕る怕る申す
けるにぞ官人其旨を奏逹しける。淨飯王訝り賜い太子の供奉に参りし官人を
召されて詰問し賜うに、外吏が申す旨と等しく誰有って死者を見たりと申す者なければ、
淨飯王、心地まどい賜い是(こ)は必ず天魔破旬の障碍(しょうげ)なるべしとて外吏が罪を恕し賜い、
其の後、群臣を集えて宣わく。朕が太子已に十六才、百般の技芸通達せずといいう事
なけれども、只、歓楽に心を留めず且夕(あけくれ)書巻をのみ翫(もてあそび)び、怏々(さらさら)なるは自然
先年相者が考えし如く、王位を践(ふ)むことを欲せず出家学道せん望ならば朕が血脈兹に絶えて慈
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