matta

街の散歩…ひとりあるき

22-23悉逹太子 提婆逹多と技を競うⅢ…『釋迦尊御一代記圖會』巻之2

2024年08月30日 | 宗教

射ると雖も射抜くこと能わず。只、射削りしのみなり。諸人、また是を誉むるといえども悉
逹太子に及ぶべくもあらざれば、提婆は頗る面目を失い心中に深く憤りぬ。是ぞ遺恨の
始めなりける。偖(さて)弾丸の儀式終わり、次に鐵鼓(てつこ)の的の式なり。是も童子の力におよぶべき
に非ざれども、堅きを砕くの義表したれば、唯的に中(あた)るを以て高手(じょうず)とす。然れども提婆
逹多、悉逹太子に弾丸の的を射負たる憤怒止まず、此の度は我、鐵鼓てつこ)を射通し悉逹
に恥辱を与えんものと意(こころ)に巧み、㫋陀(せんだ)にも其の旨を示し合わせ、数多の童子の射終
わる待ち、已に廣耶太子が番におよび射場に出でて、鐵鼓を射する的には中(あて)ながら
鏃(やじり)砕けて飛びかえりぬ。廣耶太子微笑みしずかに出(いで)て鉄弓をきりきりと引き絞り矢声とも
に切って放すに一つの鉄鼓を射貫たり。諸人是を見て、その弓勢(ゆんせい)を感嘆す。其の次
には提婆逹多鴻の歩むが如く寛々と射場に立ち出で、握り太なる鉄弓を弦弾(つるうち)し鉄
箭をはげてきりきりと引き絞り、ねらいを固めて兵と射るに、過たず三つの鉄鼓を射
貫たり。お庭の人々、阿と感じ天晴れ無双の弓勢かなと賞嘆す、提婆はした
り顔に太子の方を見やりて、本の座に回(かえ)るに今は太子のみなれば、淨飯王はじめ
百司百官も手に汗握り唾を呑んで見居たる所に、太子、徐々(しずしず)に弓箭を手

挟て射場に立ち出でたまい、弦強(つるうち)して左右に對(むか)いこの弓甚だ弱し別に強き弓を持ちき
たれと命じたまう。官人承りて強弓七号を採り出して奉る。皇子七号の中にも殊更強き弓をば選
り出したまい、箭を打ちつがい満月の如く弯設(ひきもう)け、声もろとも切って放したまえば、其の
矢ヒフィット鳴りわたりて的に中(あた)るよと見えけるが、七つの鉄鼓を射貫(とほ)し尚余れる矢巌を
穿ち、忽ち清き泉涌き出たり。上帝王より下卑官に至るまで感嘆する声、四竟(しけい)に響く
許りにて夥しくぞ聞こえける。烏将軍は余りの嬉しさに坐を起(たつ)て舞々なでけり。淨飯王
は叡感浅からず、太子を始め提婆以下の諸童子に褒償を賜い、大いに酒宴を促し
君臣和楽の興を催したまいぬ。然るに提婆は二度の曠(はれ)勝負悉く太子に負けたることを
遺恨にさしはさみ、大觴(おおさかづき)を把(とつ)て数杯を傾け、酒気に乗じて廣庭に狂い出、悉逹太子
射芸に堪能なりと雖も筋力(ちから)に於いては我に及ばじ。力量の覚えあらん者は来て我と相撲の
勝負を試みよとぞ叫びける。是を聞きて諸童子の中にも筋力ある輩(ともがら)、憎き提婆の
広言かないでや、力を競(くらべ)にと我も我もと庭へ下りて提婆にわたり合い、揉みあうと雖も誰あ
って勝つ者なく、手足を挫いて逃げ退き、㫋陀(せんだ)太子のみ提婆と力量等しく、更に勝負を分か
たず相引きにわかれけり。悉逹太子二童の相撲を見て微笑したまい、丸(まろ)も戯れに力を
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 21悉逹太子諸太子と射術をく... | トップ | 22提婆 㫋陀 両太子力競の圖…... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

宗教」カテゴリの最新記事