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街の散歩…ひとりあるき

26-27淨居佛再び悉逹太子を試す…『釋迦尊御一代記圖會』巻之2

2024年09月04日 | 宗教

失忘あらんかと疑い其の心を試さんとて。神通をもて化して老さらばいし翁となり、杖に
すがりてよろよろと、貴賤男女の太子の行粧を拝見する中に交じり、路の傍(かたえ)に停立(たゝずみ)
じろじろ眺め居たり。警固の官人是を見て大いに怒り、この老いぼれ何ぞ路頭にさし出でて
太子の御光臨を妨ぐるやと罵り、策(むち)を挙げて礑(はた)と撃つ。老翁は強く撃たれてその儘
地上に仆れ伏したり。太子、宝輦の内より是を見たまいて急に官人を制し、是は何たる
挙動(ふるまい)ぞや、猥(みだり)りに人をな撃ち痛ましむべからずとて従者に命じて、扶け起こさしめ偖
(さて)烏陀夷に問うて曰(のたまわ)く。是を何者とかいう、と。烏陀夷答えて、是は老人にて候と申す、
太子亦何をか老というやと問いたもう。曰く、此の人も昔日は嬰児童蒙たりと雖も、年月停らず皮
膚衰え血肉遂に枯れて、かゝる姿となり餘命幾ばくもなし、故に老と申せりと答う。太子また
問いたまわく。此の人のみ然るに一切衆生皆斯くの如くなるや。曰く、貴賤ともに何人か老たまわ
ざるべき。一切衆生皆、彼翁が如くなりそうろうと申す。太子此の詞を聞きて嘆息したまい、実(げに)
や日月流れ邁(まい)して時変じ歳移り、老いの至ること電(いなずま)の如し。身富貴にして轉輪王の位を
保とも焉(いずくん)ぞ頼むにたらん。世の人何ぞかく転変の世を厭わざるやと頻りに感慨の
心を生じたまい。厭離(えんり)のおもい胸に充ちて、園林に出遊すべき御意(こころ)失せはて烏陀

夷を顧みて曰(のたまわ)く、丸(まろ)、俄に心地例(れい)ならず。今日の園遊を止まるべし。車を返せよ指
揮(さしず)したまう。烏陀夷大いに驚き、是(こ)は如何なる御意にそうろうや、烏将軍園林を掃き浄め、
女楽を設けて専ら光臨を相待ちそうろうに、半途(はんと)より回りたまわん事大王国母の御意(こころ)を
やぶりたもうに至りそうらわんと諫め奉れけれども敢えて承引したまわざれば、烏陀夷已事(やむこと)
を得ず官人を以て烏将軍へ事の顛末を告げ、半途より宝輦を回して月景城へ還幸なし奉りければ、
烏将軍大いに望を失い、さしもの結構画餅(むだごと)となり、手を空しくして立ち回りぬ。
憍曇弥夫人は太子の早く還幸ありしを怪しみたまい、烏陀夷を近く召され、其の故を
問いたまう。烏陀夷隠すこと能わず有りし始末を申しあく。憍曇弥是を聞きて憂いたまい、斯く
ては相者の云し如く太子王位を嗣ぐことを好みたまわず。出家学道の望おわすにやと、
安き心もなく淨飯王に右の旨を密奏したまい、倍(ますます)遊楽の具えを増し、厭離の念を
留め奉らんと計りたまいけり。

淨居佛 再び悉逹太子を試す
悉逹太子は園遊の道路(みちすじ)老者を見しより、頻りに世をはかなくみたまい左右に侍る。美貌の
女官を見たまいへと御心とまる事なく、糸竹のしらべも耳喧しくおぼし召し、只机に
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