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街の散歩…ひとりあるき

23-24淨居佛一たび悉逹太子を試す…『釋迦尊御一代記圖會』巻之2 

2024年09月01日 | 宗教

競べしとて従容として庭に下りたまい、提婆、㫋陀(せんだ)二童子を一斉にかゝらせ、右に撲ち左に
揉んで勝負を挑みたまう。提婆は悉逹太子の膂力(りょりょく)に驚きながら何卒勝ちをり射芸の遺恨を
散ぜんものと㫋陀(せんだ)に目くばせし、精力を尽くして抓(つかみ)拉(ひしが)んとすれど、いかでか太子
の威神力に敵すべき両童とも、終に力衰え大地へどっと投げられけり、然れども慈心を以て投げた
まう故、二童の少しも傷つき痛むことなし。諸人亦感稱し、太子万芸に達したまうのみならず、筋
力亦人に勝れたまえり。誠に古今未曾有なりとぞ申しける。提婆は憖(なまじ)いに事を好んで三度恥
辱をとり、熱湯を冷めずに由なく不興げに従者を引いて城門を出たるに、先駈けの者遽(あわただ)しく
させ回(かえ)り城門の外に一大象有って門を遮り、敢えて動(すく)みがたしと報ず。提婆大いに怒り
自ら先に立って城門に到り、見るに果たして大象門に横たわり牙を怒らして停立っす。提婆
ちっとも怕るゝ色なく進み寄って、拳を固め象の頭を喝(はた)と撃つに、さしもの大象金剛力
に搏(うた)れて地に倒れ喘ぎたり。提婆の従者是に依った難なく門を出ることを得たり。
次に㫋陀(せんだ)また眷属引き連れて城門を出に前行の者立ち停って進まず。㫋陀其のゆえを問う。
従者が曰く、先に城門に一大象遮り立って路を塞ぎ進みがたくそうろうと答え、㫋陀、聞き手、我
も其の象を見んと群衆を推し分け、象の辺(ほとり)を徃きつらつらと見打ち笑い是の畜生何ぞ我

行路を妨げるやとて足をもて喝(はた)蹴るに同じく金剛力なれば五尋ばかりとんで掘際に仆れ伏し吼
え苦しみて死になんたり。諸人是を見て提婆、㫋陀ともに筋力無双なりと称して、みる者ますます
山の如く。其の喧(かまびす)しき音城中にきこえければ、悉逹太子近臣を召して何事にやと問いたまう
に、如(かよう)斯々(かくかく)と言上す。太子、微笑したまい罪なき獣類、只追い退けずして猥りに傷痛
ましむるやまる其の象を救い得させんとて、従者を率いて城外に立ち出でたまい件の象の辺(ほとり)
に立ち寄り、玉の如く清き御腕にて象の牙を採り曳き起(た)てたまうさしもの大象軽々と引き立てら
れて身を起こし、しかも苦痛頓(とみ)に癒えて甦り太子を見て耳を垂れ尾を伏せて拝謝の躰をなし山
路をさして走回(かえ)りけり。諸人亦是を見て提婆、㫋陀筋力壯(さか)んなりと雖も、悉逹太子の大象
を曳き起こし蘇らしめたまう磁力には及ばじとぞ稱賛したりけり。

淨居佛一たび悉逹太子を試す
年月推し移りて悉逹太子十五才に成りたまいしかば、淨飯王百官を召し集え勅諚有けるよう
太子年既に十五才に及びたれば先例の如く、四海水を以て太子の項に濯ぎ春宮(とうぐう)に立つべし
此の旨、小国の王へ触れわたせよと命(おうせ)ある。月卿雲客奉(うけたまわ)り、諸国の王に檄文を傅え當
年二月八日悉逹太子春(とう)宮に立たせたまうに就き先例の如く其の儀式行わせるゝ間列位(おのおの)
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