■ぶちまけるやうに千鳥ハおりるなり
※千鳥の群が、いっせい方向転換で舞い降りる
■匕でもるものとは見えぬくすりふね
匕で盛る物とは見えぬ薬船
※匕:匙:こんな大きな船に、小匙でもる小さな薬だけ満載か…
■この花としん中しろと札をたて
この花と心中しろと札を立て
※「(桜の)一枝を切らば、一指をきるべし」
桜が満開の須磨寺の境内に、義経は弁慶に命じて上の高札を立てさせた。
義経は、かつて兄弟とともに母の常磐に連れられ、吉野の山で凍死寸前の
ところを平家方に囚われた。が、幼い命と救われた。その武士の情けを身
をもて知った。で、平家の若い公達を桜に見たて、敵といえども幼い命を
散らすな、と。その意を解した熊谷次郞は十五歳の平敦盛を討たなかった。
(狂言『一谷嫩(ふたば)軍記』
■紙ひゝなこけるときにも女夫つれ
紙雛(ひびな)こけるときにも夫婦づれ
※折った紙雛は倒れやすい。飾るときに少し重ねるので倒れるときも一緒。
■紙びなをとなりの米やつきたふし
紙雛を隣の米屋つき倒し
※米屋が杵を下ろす振動で…紙雛つき倒され
■福寿草あにきのそバに居さうらふ
福寿草兄貴のそばに居候
福寿草も梅の時期に咲くが、少し梅が早いのか
以上で『畫本柳樽』初編を終了です。