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街の散歩…ひとりあるき

04-05徳の身を以て天位を践(ふ)む…『釋迦尊御一代記圖會』巻1

2024年07月16日 | 宗教

徳の身を以て天位を践(ふ)むこと慚愧に堪えずといえども、父大王の厳命已(や)むこと
を得ず宝祚(ほうそ)を辱(かたじけのう)せり。卿ら宜しく朕が不憫を補(たすけ)て、一点の過失をも諫
め正し、政道邪曲なく奢(おごり)を省き倹を守り、万民をして安逸ならしめよ。
國豊かに民栄え道広くして、四竟昌平なるは朕が願うところなり。それ、人は真
実をもって父とし、慈悲をもって母とし、敬を以て兄とし、信を以て弟とすべし。
是(かく)の如くなれば国中皆父母万人皆兄弟なり。人の悪を見ては是を諫め、
人の善を見ては俱(とも)に従い行うべし。万人は一人の師なり。一人ひとり万人の
師なり。卿ら此の旨を時々民間末々まで触れ知らしめよと宣いければ、
三公九卿はじめ月卿雲客同音にあっと感じ、実にありがたき倫言かなとて
各々、王命の赴きを諸道の民へ触れわたしければ、万民、感涙を流して王の徳を
称せざるはなし。淨飯王は斯くの如くの仁君にて、朝暮の政事正しく一日も怠り
給わざれば、三光 明(あきらか)に照らし、土肥え國豊かに五穀年ごとによく登り、世の
安静なることたとへなく、万民、鼓腹して楽しみ唄い、這(この)王の聖齢(おんとし)千年(ちとせ)
を保たせ給えとぞ願いける。然るに三公の一人 月光臣 淨飯王に奏して

曰く、大王の人徳 海内に普(あまね)く、国土年々に肥え、百穀よく豊熟しそうろうが、
猶国家の繁昌を思いたまわば、都城のうちにて地を擇(えら)み、四箇所の霊臺を築き、
春夏秋冬その折々にあたって大王自ら臺に登りたまい、民の耕作 行
旅の往返を覧(みそなわし)勤めるを賞し、怠るを励ましたまわば下民怠慢なく
業を勤め、四天下いよいよ静謐に納まり侍るべしと奏す。淨飯王、御悦喜(えつき)限りな
く、これ能く朕が意(こころ)にかなえり。急ぎ地を選び臺(うてな)を築くこと倫言あるにぞ、
月光臣 領掌し自ら地理を考え、百工を集えて四坐の高臺(こうだい)を営み
造りしむる。百姓これを聞きて大いによろこび、我が大王治国のために霊臺を築き
たもう。報恩のため一車の土、一塊の石をも運べよとて、我もわれもと寄聚(よりつとく)者幾
万人の数を知らず。努め励めとて築くほどに、不日にして四座の霊臺成就せ
しかば、月光臣欣悦にたえず、宮殿には金銀珠玉をちりばめ、水晶の簾、錦繍(きんしう)
の帳、心詞(こころことば)も及ばぬまで磨き立て、その旨淨飯大王に奏するにぞ。帝歓喜斜めな
らず、緒臣下を従えて霊臺へ幸臨あり。文道の博士を召し、筆道の堪能を
撰んで、四座の臺(うてな)の号(な)を額面に題させしむに、博士ら深く勘考し、まず東の
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