富士登山、10年連続で登ってきました。
登頂率は9割です。1回だけ、高山病で逃げ帰ってきたことがあります。
富士登山のしかた、ということで、これから富士登山に行ってみよう、という方のために自分なりの解説をしたいと思います。
1 コース
一番のメジャーコースが今回行って来た吉田口コースです。富士登山といえばもうこのコースで、ツアーが組まれるのも殆どここです。
吉田口と言うと本当は富士吉田の麓の方からずっと徒歩のコースがあって、こちらのことを言うのが正しいのですが、スバルライン五合目からスタートするルートを吉田口と言います。
専用の下山ルートがあり、高速で降りてこられます。
スタート地点は約2300mです。頂上までの標高差は1400mくらいといったところ。
山小屋もたくさんありますので、困ったときにもなんとかなるルートです。
いわゆる頂上で日の出を見る、ご来光登山が盛んなルートです。
次にメジャーなのは富士宮口コースです。表富士からのコースです。スタートは約2400mと最も高いので頂上が近いのですが、専用の下山ルートが無いので下山は脚にしんどいです。山小屋も完備されていて安心ルートです。
最近ここのバリエーションコースにプリンスルートというのが加わりました。6合目か8合目で御殿場ルートにトラバースするルートで、皇太子様が使われたルートなのでプリンスルートと言います。
次にメジャーなのは須走口コースです。
素朴な感じの登山口から森を抜けて行くルートで、雰囲気は一番いいかも。
混んでいません。
山小屋も適度にあります。
登山時は8合目半、下山時は8合目から上は吉田口と合流です。
このルートを流れ星を見ながら静かに登っていくと、8合目半でいきなり新宿駅の雑踏に放り込まれた感じになります。
下山時は須走口に向かうほうが真っ直ぐで、吉田口が左折なもんですから、かなりの人が間違えて須走口に降りてしまいます。次の小屋で気付いた時は、一時間登り返さないといけませんので気をつけましょう。
下山には名物、「砂走り」という区間があり、深い砂利の地帯をまっすぐ降りていきます。この時深く砂利に足を沈めていきますので、砂利が靴に入らないようにゲイター(スパッツ)を靴に装着する必要があります。無いと泣きますので気をつけましょう。
砂走りの降り方がうまくなると、吉田口より須走口のほうが早くて楽かも知れません。
ちなみにすごい砂埃が巻き上がるのでマスク、ゴーグルがあるといいです。鼻の穴真っ黒になります。
最後に御殿場ルートです。
スタートの標高は約1200m。断然下の方からのスタートです。しかも深い砂利のコース。登っても少しズルっと下がりますから蟻地獄を脱出するような苦行ルートです。
一度は制覇したいルートです。
でも登山道としては歩きやすいかも。ずっとジグザクでどのルートよりも歩きやすかった印象です。
スタートしてすぐに小屋があり、次の小屋は標高約3000m。この区間一切小屋はありませんし、森もありません。長時間無事で居られる装備が求められます。水は絶対たくさん必要です。このことは下山時にも言えます。
日中3000m付近の小屋まで登り、深夜再出発か朝までここに居て日の出を見る、という登り方ならそれほど大変ではありません。
特に下山は名物「大砂走り」というお楽しみがあるので、下山は楽な部類です。
宝永火口の噴火による細かい砂利が数十メートル積もった急斜面。一歩大股に歩むと3mくらい下までズズーッと降りられます。この繰り返しでどんどん降りていけるので楽しいです。ここでは膝は伸ばしてあまり使わないようにすると楽です。逆に急斜面が終わるとしばらく辛いかも知れません。富士登山駅伝で駆け下りていくシーンで有名なところです。
距離は全然違うけど、下山に関しては富士宮口を降りるより御殿場口のほうが楽なくらいです。
お鉢巡り
富士山頂は火口になっていて深さ100m程の深い火口があります。ものすごい絶壁になっています。気をつけましょう。この火口の外輪山を巻くように一周歩けるようになっています。これをお鉢巡りと言います。アップダウンを繰り返すのでそれほど楽では無いですがだいたい1時間のコースです。空気も薄いのでちょっと動くとすぐ疲れます。ここは荷物を減らして、カメラと合羽だけ持って回るのが得策です。どんなにいい天気でも合羽は持ってください。いつ降るかわかりませんから。身軽にすれば結構簡単に一周回れます。
2 時間帯
日の出を山頂で見るいわゆるご来光登山が最も人気でメジャーです。実際これなら昼前後に降りてこれるので夜までに自宅に帰れますし。
朝4時には頂上に居たいですから、夜中に登ることになります。
夕方~夜9時くらいにスタートして徹夜登山することを弾丸登山と言い、事故や体調不良を起こしやすいため今では推奨されていません。なるべくならやめましょう。とは言え未だに最も人気の登り方では無いでしょうか。
午後一に登り始め、夕方8合目前後の小屋に入り、夕食を食べたらすぐに寝る、0時前後に起きて再出発、という小屋仮眠コースがバスツアーなどでの最もメジャーなプランです。
小屋は隣の人とくっついて寝るようなびっくりするような環境です(近年は良い方向に変わってきたようです)が、元気度は弾丸との差は明らかで、小屋で寝たほうが百倍楽に登れることでしょう。
吉田口コース、須走口コースはどこからでも日の出が見れます。御殿場口も小屋のある辺りなら日の出が見れます。山頂でなくても十分感動的ですので、頂上にこだわらない、というのも手です。逆に山頂だけ雲がかかって日の出が見れない、ということもありますし。
日の出前に登り始め、途中で朝日を見て、昼頃に頂上、明るいうちに登山口に戻る、というプランはなかなかお勧めです。
ただ、これに合った交通手段が全然無いんです。タクシーを使うか、もっと前から五合目に着ているか、どちらかしかありません。是非朝2時や3時にシャトルバスを運行してもらいたいものです。
車を御殿場口に置いて、富士宮口までタクシーで登り、登り富士宮口コース、下り御殿場コースというのもお勧めです。駐車料金が無料ですし、タクシーは3~4人で乗ればそれほど高くありません。
無線を思う存分やりたい人はご来光登山で山頂に着いたら昼まで居るか、早朝登山で昼に着いたら山頂で一泊すると長時間楽しめると思います。
3 歩き方
富士登山ほど登りっぱなし、下りっぱなしの登山は他に無いでしょう。かなりの長距離なのでペース配分には気をつけましょう。
ウサギと亀なら亀はゴール出来ますが、ウサギは登頂できる確率が下がります。
富士登山の登頂率は6割とも言われています。悪天候もこれに含まれるでしょうから天候さえ良ければもう少し高いでしょう。
とにかくゆっくり。右足のつま先より先に左足の踵を置かないくらいの小股で小さくゆっくり歩くのが登頂成功の秘訣です。
いつまでも息切れしない楽なペースを見つけてのんびり登ってください。
ストックは有効です。是非正しい使い方で活用してください。金剛棒は焼き印集めが楽しいですが、結構腕が疲れます。ザックに入れる小さい奴もいいかも知れません。
さて、富士登山の最大の課題と言ってもいいのが高山病対策です。
私はここ数年、全く高山病にかかっていません。以前は必ずかかって大変でした。
何をしたかと言うと、深呼吸し続ける(ばかみたいに呼吸し続ける)、水分を多く摂る、はりきらない。これです。
特に水分は歩行中に汗でどんどん失われるので、え~?こんなに飲むの?くらい飲んでちょうどいいくらいです。
先日の日中登山では、ほぼ2リットル飲み切りましたが、朝4時頃から行動して夕方4時位まで全く尿意をもよおさなかった(つまり全部汗で出てしまった)ので、これでも不足気味だったということです。水分が減ると血液が濃くなって酸素が行き渡らなくなるので高山病を発する原因となるのです。
休憩直後も要注意です。一瞬元気が出るんです。ここでエイヤッと元気に歩き出すと高山病になります。ソロリとダラダラ再出発しましょう。
富士山はとにかく歩き続けさえすれば必ず頂上に着きます。
走ってはいけません。トボトボでいいんです。
これは人生にも言えることです。走ったり張り切ったりしなくていいんだ、ということを富士山は教えてくれました。(本当にいいのか?それで??(笑))
4 道具
この10年間で自分の道具もだいぶ変わりました。
下山時に膝がつらくなるので下山時にはサポーターを巻きますし、ストックをつかうのも膝のためです。
特に重要な道具は靴と合羽とザック。
靴は雨水が浸水せず、靴ずれせず、比較的ハイカットなものを。登山用品店でお店の人に付いてもらってしっかり時間をかけて選びましょう。
登山用の集めの靴下を履き、まずは紐を緩めてつま先を当てて、踵側に指が一本入る大きさの靴を。次に踵を合わせてからしっかり前から紐を締めてつま先のほうが当たらないことを確認。歩きまわって急な前下りの斜面に立っても足の裏が滑らないこと。どこか強めに当たるところが無いこと。お店の人のアドバイスを聞きながら選びましょう。私の足にはザンバランというメーカーの靴が最適だなぁと言うことは判明しました(まだ買っていません・・・)
合羽は命を守るものですから、お金のかけどころです。富士山の雨は上からだけでなく左右下からも吹き付けます。首から、袖口からも浸水してきます。これが十分防げるものを選んでください。雨が降ったらストックは使わないといいです。腕を上下に上げ下げするとどうしても袖口からの浸水が起きます。ずっとダラっと下げていればかなり防げます。
合羽は上下3万くらいするゴアテックスがいいですが、ゴアテックスはフィルムみたいなものなので生地の裏に仕込んであります。溶岩の上に座ったりすると台無しになることもあるので気をつけましょう。
ザック。これ、いいものを使いましょう。いいものを使ってしっかりウェストベルトを締めると肩がつらくなることはありません。降ろしたくなることも無くなるくらい快適さが違います。オスプレーとかグレゴリーとかのザックを使えば間違いありません。ここもお金をかけるところです。
服装。ドライレイヤーと言われる重ね着がお勧めです。とにかく木綿は使いません。下着からトータルしてドライレイヤーで装備することをお勧めします。これすごくお金かかります。が、その分効果があります。日の出を待つ時の寒さが全然違いますし、大汗かいている時も快適さが違う、休んでいても冷え込まない、などなど。まずは肌着だけでも。ファイントラック社のスキンメッシュを着てみてください。この上に速乾性のシャツを着るようにします。
水筒の水滴が凍るような中でも寒さに耐えられたのはこれのおかげと思います。
ファイントラック社のドライレイヤーは5枚で完成しますが、全部買うととても高いので徐々に増やしていくといいと思います。(私は去年全部揃いました)
防寒であるといいのがライトダウン。これを上、又はウィンドブレーカーの中に着ます。手袋、ネックウォーマー、マスク、カイロがあれば日の出待ちの間もなんとか過ごせるでしょう。さらにあるといいのがポンチョです。富士山の雨には向きませんが、日の出を待つ時にポンチョを被り荷物を背負ったまま座ってうまく下に巻き込んでピンと張って体を覆えばだいぶ寒さを軽減できます。頭も入れてしまえば完璧です。
防止と日焼け止めも必要です。
五合目に降りても水はふんだんに使えないので、ウェットティッシュなど手拭き、顔拭きも持っていきましょう。
夜間登る方は、やかん(ダジャレです)、湯沸かしセット、または保温ボトルに熱湯を入れて持っていくといいかも知れません。
低体温症でどうしようもなく大きな震えが止まらない人を助けることが出来ます。自分も自分自身を助けたことがあります。けど結構な荷物です。小屋に逃げ込めばいいことだったりしますので、持つかどうかは自分で判断してください。
5 マイカーの方へ
今はハイシーズンになると五合目まで車で上がれなくなり、麓のPに置いてシャトルバスやタクシーとなりました。
あまりちょうどいい時間に運行していないのが困りものです。
開始日前日に上がってしまうという手はありますが、まだ梅雨時だったりします。
シャトルバスは往復と片道の値段がほとんど変わらないシステムです。なぜだろう?。
車で行く場合、一緒に同乗する人は帰りの時間に制約の無い人に限りましょう。
登山後の運転は普段に増して眠くなりがちです。好きなだけ休めるようにしないと危険極まりないです。
事故を起こしたら人生おしまいです。
須走口を降りて、すぐ下の道の駅で撃沈、結局そこで一晩明かしたこともあります。
途中の道の駅で夕方眠ったら、自宅で寝ている気になって、気がついたらすっかり夜中で、ここはどこ?みたいになったこともあります。
誰か同乗者が居るとこれが出来なくなるので危険です。
そういう時は各自一台で来たほうがエコじゃないけど人生が終わってしまうリスクと天秤にかければどちらがいいかは一目瞭然です。
以上です。それでは良い富士登山を~。
2回目は天候不順と3000m付近で無線してたら登る気が無くなってしまい(笑)引き換えしたのが最後ですかね
ザンバランは去年デビューしました
昨年の東北山旅行で、こうも違うのかと改めて認識しました。
後ザックも重要ですよね、、やはり
私は縦走orテン泊ではグレゴリーのバルトロを使ってますが、腰で担ぐという意味を教えてくれたザックでした。
PS
18切符で、吾妻線満喫してきました♪
18きっぷの旅いいですね~。
私もどこか行かないと~。
ザンバランいいですか!私に合っていることは判明しているので買わない手はないですね。
グレゴリーの腰ベルト、厚みがあっていいですね。ちょうどオスプレイの30リットルクラスの内張りが加水分解を始めちゃったみたいなので新しいの探してます。
どうも弾丸日帰り登山をして欲しくないらしくて、今年は終バスの時間も早くなってしまいましたし・・・。
個人的には富士宮口で登って、御殿場口~大砂走り&宝永火口経由~富士宮口と戻るのが好きです。
富士山でお会いできるのを楽しみにしています。
毎年登られているんですね!
仲間だ~。
弾丸やめてと言われてもやっぱりメジャーな弾丸登山。困りますね。
御殿場口なら小屋も空いているし、このコースでのんびりしましょうか…。
富士山でお会い出来る日を楽しみにしています。