長電話

~自費出版のススメ~

岸辺のアルバム

2009-09-22 | アート
TBSチャンネルで終日、山田太一の「岸辺のアルバム」を放送していたので、仕事をしながら、ちらちらとですが最後まで見通しました。野外ロケが多く、昔の多摩川沿いや小田急線の駅、渋谷の街並が映し出された映像には、知ってる場所がいくつもありました。

「岸辺のアルバム」とは「家族の肖像」のようなもので、現実の生活にリアリティをもてない人達で構成される家族の理想を定着させただけの写真アルバムのことです。お話は家のことしか分からない母親と長男を求心力に、いつかでていく娘と外の情報にだけたけている父親を遠心力として始まり、主客転倒を繰り返しながら進みます。

山田太一の視線は、常にこの家族四人を突き放し、誰を贔屓にするでもなく中立と公正さを保ち続け、ハッピーエンドさえ与えていません。この作風にテーマソングのジャニス・イアンの自分すら突き放したように歌う「ウィルユーダンス」が響きあい、作品として記憶に残るものになっていました。

黒澤明の「隠し砦の三悪人」や「椿三十郎」すらリメイクされる「恐れを知らない」業界ですが、この作品に手を出す勇気はあるでしょうか。