北朝鮮が爆撃対象としてグアムの名前を挙げたことで、
アメリカ国内では今更ながらグアムに対する関心が高まっているということです。
しかし、アメリカ本国の無関心さに呆れているわけには行きません。
グアム大学出版会の編集長がアメリカに送った公開書簡によって私は、
(ああ、グアムにも日本は侵略していったんだ)と初めて知ったのです。
私にとって観光旅行とリゾート地のイメージしかなかったグアムに、
1941年12月8日の真珠湾攻撃から5時間後、
日本軍が、当時既にアメリカ領だったグアムに侵攻してアメリカ軍を追い払い、
1944年まで日本が占領統治し、「大宮島」と名づけられていたということも知りました。
16世紀中頃、スペインの植民地にされたことに始まり、
キリスト教の強制によるチャモロ人(現地人)への大弾圧と虐殺に遭ったグアムは、
米西戦争で占領者がスペインからアメリカに変わってからも、
現地の風習・文化を無視してアメリカ化を押し付けられ、
太平洋戦争では日本に占領され、
それからまた1944年にアメリカ軍に奪還されるという
全く現地人の自治権・生存権無視の歴史の連続でした。
その後も、グアムはベトナム戦争の爆撃機発着拠点とされるなど、
アメリカの植民地であり太平洋戦略拠点のまま、今に至っています。
書簡には、アメリカのグアム支配の非人間性、差別性が浮き彫りにされていて、
私には、日本の沖縄とつくづく重なって見えるのです。
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グアムからアメリカへの公開書簡
ビクトリア ロラ レオン グエレロ 2017年8月10日 グアム
https://bostonreview.net/war-security/victoria-lola-m-leon-guerrero-open-letter-guam-america
アメリカへ
アメリカがグアムで起こっていることにやっと関心を向けていることを私は喜んでいます。
オンラインでは、多くのアメリカ人が初めて
「グアムとは何だ?」と尋ねています。
残念ながら、私たちが爆撃の標的になってやっと初めてみなさんが
グアムという言葉を言おうとしているのです。
私がみなさんに私たちのことについて知ってもらいたいことは
とてもたくさんあるのですが……。
その一方で、私たちは最近の爆撃の威嚇にそれほど驚いていません。
私たちは「グアムと爆撃」という言葉を聞くことに全く慣れてしまっています。
毎月と言っていいくらいに、新たなミサイルの実験が行われるか、
誇張した発言がなされる時には、
朝鮮か、中国か、ロシアが、グアムをどのように爆撃をするかということを聞きます。
私がコンピューターに中国の悪名高い「グアム・キラー」の写真を保存しているのは、
私たちの独立運動グループが、今すぐ自由になることが必要である理由の一例として
「インデペンデンス[独立]」101号に掲示するのに使うためでした。
そうです、グアムにはアメリカから独立したい人たちがいるのです。
しかしこうした爆撃の威嚇を聞いて、
誇大宣伝に萎縮している人たちもグアムにはいます。
この人たちはグアムにアメリカの強大な軍事基地が必要だと信じ始め、
そうすれば爆撃を受けないだろうからと
もっと軍事基地を求めていますが、それは正しいのでしょうか?
しかし実は、アメリカがグアムの受ける爆弾問題の全ての原因となってきたのです。
グアムにこれまで落とされた中で最悪の爆弾は、
第2次世界大戦の終わり近くのアメリカの爆弾でした。
戦争の当初、アメリカは防衛手段を持たない私たちを
日本に対して置き去りにしました。
日本が最初からグアムを侵略する計画を立てていることを十分に知っていながらです。
アメリカは白人の兵士の妻たちを安全に船に乗せて
攻撃の数ヶ月前にアメリカ本土に送りましたが、
私たちを守るためには何もしませんでした。
そうです、最後には、攻撃から私たちを守ってやると言っていた侵略国(日本)に対して、
みなさんは2日間で降伏し、20000人の住民を苦境に放置し、
多数の住民が戦争犯罪の最も残忍な犠牲者に陥ったのです。
しかし私たちは強く、私たちはそのような醜い戦争を生き延びただけでなく、
その後の破壊をも生き延びたのです。
あなたたちは1944年に戻ってきた時、
爆弾で私たちの島を根こそぎ破壊し、
ほとんどの家族は帰る家もなくなってしまいました。
私たちは、みなさんが巨大な基地を建設するために
四散させられ追い出されたのです。
そしてとてもありがたいことに私たち住民は、
みなさんの軍隊に奉仕し、奉仕し続け、
みなさんより1人あたり高い数値でみなさんの自由のために死んでいるのです。
グアムに落とされた最悪の爆弾とはみなさんの爆弾でした。
今日ではアメリカは私たちの島の3分の1近くを占領し、
私たちの隣国に力を見せつけるために
爆撃機と原子力潜水艦を駐留させています。
アメリカはグアムの空気と水と土地と身体に有毒なガスを放出し、
ゴミを捨てながら終わりのない戦争ゲームをしているのです。
アメリカが、風上にある私たちの姉妹の島々で爆弾の実験をすると、
降下物の中で私たちは息をするのです-そんな煙がここに降りてくるのです。
私たちはアメリカが周辺で爆撃した海水の魚を食べます。
ソナーの実験によって間違った方向に導かれて、
海岸で腐ってしまった打ち上げられた鯨のことを悲しんで下さい。
私たちは犠牲を払うようにされているのです-何の同意もなく
(そして私たちの多くの意思に反して)
-アメリカの海兵隊のための射撃練習場を建設するために
アメリカが破壊したがっている神聖な古来の村々や、
1000エーカー[約4平方キロメートル]の
青々と茂った森の石灰岩の居住地を犠牲にするのです。
アメリカはとんでもない時間に私の自宅の上で爆撃機を飛ばします。
いい加減にしなさい、アメリカよ、私はここで赤ん坊たちを育てているのです。
かわいい子どもたちの上にアメリカの旗が掲げられていて、
子どもたちはそれが嫌いだということにアメリカの誰が気づくのでしょうか。
遊園地の滑り台の下に隠れて、
「轟音をたてるB-1やB-2の時には頭を引っ込めろ。安全地帯にみんな居ろ!」
などと、アメリカでは誰が友達に言うでしょうか?
道路の標識には「速度を落とせ、子どもの遊び場」と書いてあるのです。
どうか、速度を落として私の子どもたちに遊ばせてもらえませんか?
私は我が子にここで育ってほしいのです。
これは子どもたちと、私と、私の母親のさらに母親のそのまた母親の、故郷なのです。
子どもたちにいてもらいたい場所は世界の他のどこにもありません。
私は多くの「(グアム出身の)アメリカ人」が、
自分の故郷から逃げ出さなければならなかったということは理解しています。
アメリカはあなたのより良い生活であるか、少なくともそれを約束しているということを。
あなたたちの多くは自分の故郷を恋しいけれども帰れないということを。
そして悲しいことにみなさんの多くは土地と生活を奪われて
この運命を証明することになったアメリカ先住民のことを
十分考えることがないということを。
しかしこの土地は、
みなさんが理由であるが故にみんなが爆撃したがっているこの美しい土地は、
あなたたちのものではなく私の土地なのです。
そして私は逃げ出したくありません。
私はアメリカの大学教育を受けるためにかつて自分の土地を離れました。
しかしその全ての期間、故郷を恋しがりました。
私は学位を取得するやいなや学位を活用するためにこの土地に戻りました。
私の故郷は私のより良い人生です。
私は自分の土地によって養われ、ここで家族は自分の食料を育てています。
私はジャングルを背景にして利発な赤ん坊たちを育てていて、
これは私の祖先が私と子どもたちに望んだ生活なのです。
私は家族が自宅で安全であると言うことを知って平和に眠りにつきたいのです。
ですからどうか、こんな爆弾の話は全てやめて下さい。
そしてそれに代えて、グアムが2017年になっても
いまだにアメリカの植民地である理由を自問して下さい。
今晩は、そしておはようございます。
ビクトリア-ロラ レオン グエレロ
2017年8月10日 グアム
ビクトリア-ロラ・M.レオン・グエレロはグアム大学出版の編集長である。
彼女は女性・ジェンダー学を教え、創造的な作文や他の作文講座をグアム大学やミルズ・カレッジやサザン高校で教えてきた。
彼女はミルズ・カレッジ芸術学創造的作文専攻の修士号とサンフランシスコ大学の政治学士号を持っている。
彼女はまた第32期グアム立法議会のジュディ・ウォン・パット議長の政策アナリストで原稿起草者だった。
ビクトリアは子ども向けの本や短編やエッセーを出版し、チャモロの作家の選集を共同編集し、ジャーナル・オブ・パシフィック・イマジェリーのストーリーボード[写真中心の雑誌]の編集者を3年間した。
ビクトリアは多数の記事を書き2本の短編映画を制作して米国によるグアムの軍事化を批判し、チャモロの自決権が必要であることを表明してきたが、これはオンラインで見ることができる。
彼女はグアム独立対策協議会の共同議長でありチャモロの自決権獲得の闘争と米軍の増強に対する憂慮の表明に住民を組織する活動に活発に参加している。
…………イラク平和テレビ局 in Japan http://peacetv.jp/