この座布団は、私が作ったんです。いや、ホント。
一昨日、土曜の朝のこと、
第一週目のハードな日々が終わって初めての週末とあって、
(ふう、やれやれ。今日はのんびりするぞ!)の気持ちだった私は、
コーヒーを飲みながら何気なくメールチェックをしていたら、
「先生、母が座布団用の桃の種を送ってきたので、
今日、作り方を伝授します。」
という3年遅芮さんからのメールが目に飛び込んできました。
確かに私は、彼女が夏休みに作った桃の種の座布団の写真を見せてもらって、
「わあ、いいですねえ!私も作って見たいです。」
と言いましたよ。
しかし、まさか彼女が煙台のお母さんに材料を送ってくれるよう頼むとは!!
その日はキャンパスの第三食堂でお昼ご飯をはさんで、
午前・午後と遅芮さんから特訓を受け、私はフラフラになって帰宅しました。
実はこれは桃と言っても、食用ではなく、
こうした手工芸用に山で栽培している種類なのだそうです。
遅芮さんの写真だけでは大きさが分からず、
私は自分で桃の種を溜め込もうと決意して桃を買い込み、
自分で食べた桃の種に果肉がくっついているので
水につけて取ろうとしていたのですが、
そもそも種類からして違いました。
胡桃の小さいのにちょっと似ていますね。
布で磨けば磨くほどピカピカになるのですと。
穴は、お母さんかお祖父さんかがドリルで開けてくれたそうです。
午前中は、丸いボールのようなのを作りました(下の写真で二個並んでいるもの)。
(わたしゃ、座布団だけ作りたいんだよ)と心の中で思っていても、
心から熱心に教えてくれる遅芮さんにそんなことは言えません。
このボールのようなものは「アジサイ(绣球花)」という名前で、
中国の結びの部品によく使われることや、
桃の種、桃の木は魔よけになるので、贈り物にしてもよろこばれるとのことなど、
中国の伝統文化の一端を教えてくれました。
「日本の魔よけの木は何ですか?」と聞かれ、
(は?魔よけ??)考えたこともなかったので、
(ヒイラギ?いやいや和風じゃないし)と、慌てました。
私は北海道人ですので、本州の伝統には疎いこともあり、
むりやり「ヨモギかな。木じゃないけど。」と、自分が好きな草の名前を挙げました。
あの香り、本当に心がスーッとしますよね。
アイヌの民話には「天地ができて一番に生えた草がヨモギであり、神力を持つ」
とあります。
結びの技能がない私は宿舎で、
娘が「中国の学生たちに見せてあげたら」と持たせてくれた
お正月用の飾りを差し込んでみました。
気分は一気にお正月です。
疲れが取れた夜中、私は座布団作りの作業を再開しました。
組み込んでいくこと自体はたいへん楽しいのですが、
紐をライターで溶接してつなぐ時、火傷したり、それでもすぐに切れてしまったり、
非常に汗水たらしました。
気がつくともう朝の4時とか……。
今は既に、一人前の座布団です。
座ったら、それはそれは気持ちがいいんですよ。