“書きま「つ」がい”というのは、もちろん「ほぼ日刊イトイ新聞」の“言いまつがい”の真似である。
どうして言い間違ったり、書き間違ったりしたことが、こんなに可笑しいのだろう。
表現しようとしたものの[日常性]の中に、偶然結果的に出て来た言葉の[予測しない非日常性]が唐突に突っ込んできて、私たちの日常を一瞬崩してしまうそのシュールさなのだろうか。
私がいまでも例に挙げるのは、もう30歳になった我が息子が、小学生のときに言った一言だ。
当時、近所の農家のお婆さんが、時々自家製漬け物を売りに家に来てくれていた。私は「日野菜」や「水菜」の漬け物が好きでよく買っていた。ある時、私が奥の台所でご飯の支度をしている最中、息子が玄関で叫んだ。「何て~?」と私が聞くと、さらに声を大にして、「おけつもん屋さんが来たで~!」…。一瞬ウオシュレットか何かの訪問販売?という思いが頭をよぎったが、玄関にはいつものお婆さんがニコニコして立っていた。
これを言う度に息子は、「未熟だった時代のことをいつまでも笑いものにする。」と苦い顔をする。私はあと100回ぐらいは言うチャンスがあると思っている。
江西省の大学生の「書きまつがい」も、本人達は大まじめに書いているので、一層可愛らしくほほえましい。
下は1年生の単語テスト(野菜・果物・肉)の中の書きまつがいだ。読むと、一生懸命寮の自室で暗記している姿が思い浮かぶ。
①ふたにく ②ぶうどう ③またねぎ ④りんこう ⑤ごめ ⑥じゃがいもう
⑦さかね ⑧さから ⑨まぬ ⑩かまご ⑪ぎゅうり ⑫きゅうにく ⑬タバコ ⑭かき
正解は①~⑫までは簡単に想像できる。
①ぶたにく ②ぶどう ③たまねぎ ④りんご ⑤こめ ⑥じゃがいも
⑦さかな ⑧さかな ⑨まめ ⑩たまご ⑪きゅうり ⑫ぎゅうにく
それでも、「ぶうどう」なんてどんな宗教かと思い、「またねぎ」は人間の股から二本のネギ足がニョッキリ出ている図が浮かびますよね。「じゃがいもう」は、「じゃが、妹よ」と説得する兄、「ごめ」は「ニシンが来るとゴメが騒ぐ」みたいなイメージが膨らむ。ああ、なんて楽しいんだろう。
⑬と⑭は何故間違いかと言うと、⑬とまと⑭みかん が正解だから。「トマト」を「タバコ」、「みかん」を「かき」と覚え間違ったのだ。共通点は「カタカナ」と「甘い果物」か。
すごい書き間違いがある。
上海交通大学出版社が出しているビジネス作文の教科書だ。教科書に間違いがあるのは、日本では稀だが、私がここ江西省の大学であてがわれた中国の教科書では、よくあることだ。それでもこの教科書はすごすぎる。
最初、学生が書いた作文が、同じミスばかりしているので、ふと教科書を見ると、教科書が間違っていた。
次にその例文を挙げよう。間違いが何カ所あるか探してみてね。
さて、昨日弊社が開きいたしました投資説明会にいらっしゃっていただいて、謹んで深甚なる謝意を表したいでございます。それはわれわれにとって幸いと共に大きな励ましになります。
つきましては、甚だ粗末でございますが、御礼のしるしとしてご笑納賜らば幸甚に存じます。ご臨席に対して、ここに謹んで、重ねて心からの感謝を申し上げます。なにとぞ、今後とも相変わらず、ご愛顧、ご鞭撻のほどお願いいたします。
この教科書を使って授業をするのだ。最初は背後から銃で撃たれたような気になったが、最近は逆手にとって、「さあ、今日の宿題はこの例文の間違いを正すことです。」と、利用させてもらっている。間違いから学ぶ。非常にいい方法だと自画自賛している。
このブログのNo.109「大阪から音の贈り物…」は、本人に確認もせず、勝手に書いたので、文中いくつか訂正箇所があります。さらに行灯社のURLなども付け足しました。お詫びと訂正をします。