「山口地裁によりますと、この事務官は会計課で契約事務を担当していた2018年から4年間、10件の手続きで、見積書の書き換えや所内で使う調書に虚偽の記載をしたり、使ったりするなど刑法に抵触する行為などをしていたということです。
事務官は処理や支払いの遅れを隠すためにやったなどと話しているということです。」
裁判所での司法修習時代、私がすぐに気づいた組織の体質は、① 時間に対する感覚のルーズさ、② チェック体制の甘さ、である。
①については、自分で指定した判決言渡し期日を「裁判所の都合により」2回延期し、約半年間事件をフリーズさせた裁判官の例を挙げるだけで十分だろう。
②の問題は、おおざっぱに言うと、「1つの案件・事務を一人の書記官/事務官が担当し、それをチェックする職員がいない」というものである。
民事・家事事件については、昔から記録の紛失や誤廃棄が多数発生しているが、余り改善がみられないのはこの体制を見直そうとしないからだろう。
記録の管理だけでなく、事件の進行管理についても同じ欠陥が指摘できる。
つい先日、民事訴訟の第2回口頭弁論の前日、書記官から、
「私が被告に呼び出し状を出すのを忘れていたため、明日の期日を開くことが出来ません。延期をお願いします。」
と言う電話がかかってきて、唖然としたことがあった。
これも、事件の進行管理を書記官一人が担当しており、それ以外の職員は誰もチェックしないから起こるわけである。
これらに対し、山口地裁の事件は、書記官ではなく事務官が起こしたものだが、やはり同様の体制に起因したものと思われる。
そもそも、金銭の支払管理を事務官一人が担当するというのは、一般企業では考えられないことである。
例えば、金融機関では、最低限、担当・照査・上長のトリプル・チェックがあって初めて事務手続が完結するシステムが採用されており、これによってミスや不正の防止が図られている。
ところが、裁判所の場合、ダブル・チェック、トリプル・チェックの体制が存在しないか、形だけで実際には機能していないことが多いようだ。
要するに、事実上ノー・チェック体制である。
なので、この種の事件は今後も発生し続けるだろう。