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彼女は、うっすらとした気だるさで目を覚ました。
男の腕の中から、わずかに身体を起こして、窓辺のテーブルに置き去りになっている飲みかけのグラスを視線の端に捉えた。
久しぶりに海風にあたってはしゃいだせいだろうか。アルコールも手伝ってか、まだほんのりと身体が火照る。夏の湿り気を帯びた気だるさが纏わり付いていた。
横で目を覚ました男が、無意識のように彼女の頭を抱えなおし、抱き寄せた。
彼女はまだぼんやりとアルコールの残る頭で、男の髪を指で弄んでいる。
彼女の頭を抱えたまま、男がぽつりと言った。
「何なのだろう、君のその寂しさ。君の中にある、絶対に消えることの無い寂しさ。」
ふいを突かれた。胸の中がカタリと音を立てて痛む。ふいに涙がこぼれた。
何かが悲しかったわけではない。ただ、心のほんの隙間に男の言葉が流れ込んできた。
「ナマイキよ!」彼女は、照れ隠しのようにそう言うと、涙をぬぐった。
「最初に会った時から気付いてたさ。」男の言葉に、止まらない涙に、彼女は戸惑っていた。
一人で平気だと思っていた。いや、今だって思っている。
いつかはこの人も私の前から消える。だけどせめて今だけは。お互いの持つ寂しさがリンクした今だけは。
そう思いながら、彼女は男の肩に頭を預けたまま窓辺のコルコヴァードのグラスを眺めた。
遠く、コルコヴァードの空を想った。
いつか、遠くへ・・・
窓の外はコルコヴァードと同じ深い蒼。
夜の明けかかった海と空の蒼。
もうすぐ夏が明ける。
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