まいにちまいにち

お母さんの毎日は いつも同じようで、
少しの素敵がチラリ。

マルカの長い旅

2010-09-06 | 本を読んで
『マルカの長い旅』 ミリヤム・プレスラー/著  松永美穂/訳

マーガレットさんのご紹介(*)で知り、読んでみました。
重く長い旅でした。
本書の中で幼い少女だったマルカ自身は、今もまだ、長い旅の途中なのかもしれません。

第二次世界大戦中、ドイツの認定医として働いていたハンナ・マイ。 危険を察知するのが遅れたため
なのか、二人の娘を連れての逃亡は過酷なものでした。
姉のミンナ・マイは、もうすぐ大人の17歳。 マルカ・マイは、まだたったの7歳。
ユダヤ人狩から逃れるための逃亡中、ある事情からマルカを残し、ハンナとミンナだけで道を進むことに
なります。もちろん、マルカを委ねた人が、あとから列車でマルカを連れてきてくれると約束を交わしたか
らです。それが、その時点での最善の策だと、ハンナも思い、心引き裂かれる思いでマルカを残したので
す。しかし、過酷な運命は、家族を引き離し、マルカはたったひとりで生き抜かなければならなくなりまし
た。また、母親であるハンナも、娘を置き去りにしたことを悔やみ、娘を取り戻すために死力を尽くします。
まさか、こんなラストだとは思わず、読後に目を伏せる思いでしたが、この悲惨なラストだからこそ、この
話が嘘偽りでないことを語ってくれているようにも思えます。戦争をきれいごとに済ますことなんて、ちっと
もできない。こんな希望の持てない時代があったこと、こんな悲惨さが日常だったこと、悲しくて恐ろしく
てたまりません。

このお話は実在の人物・マルカに聞いた話をもとに、作者が書いたものです。
本書を読み進む中で、母としてのハンナが瞬時に決断を下さなければならない状況がたくさんでてきま
す。そのときの、ハンナの心の動きは人事ではありません。
戦争なんて大きなことと同様に考えることは出来ないけれど、私自身も二人の子どもをひとりで育てる
ことになってから、一番変わったことは、自分で判断を下すようになったこと、だから。
小さなことですが、子どもの習い事のこと、塾をどうするか、何をいつ買うのか・・・ そういう日々のひとつ
ひとつのことに、自分だけが責任を持たなければならず、「本当にこれでいいのか?」の自問自答から
逃れることは出来ません。 自分の考えひとつで、ひとつの人格である娘・息子の未来を左右しかねな
いなんて、やはり重いのです。 ただ、今では自分が考えたことには自分で責任を持とう、間違っていて
も、これが私のやり方なのだから、私の家庭の決まりなのだから、そう信じ込んでいます。
が、時代が違って、これがハンナの立場だったら・・・と思うと恐いのです。


今日は 小学校のよみきかせの会の準備を兼ねて、練習会を行いました。
そのときに 次の本を読んだ人がいました。『おとうさんのちず』  ユリ・シュルビッツ
戦争で食料が少なくなったときに、パンを買いに行ったお父さんが、パンではなく地図を買って来た。
地図は自分をどこの国にも連れて行ってくれる、パンじゃなくて、地図を買ってくれてよかった という
内容なのですが、ポーランド出身の作者のことを考えると、この少年がパンを買えないまま夢の中で
旅をし、ずっとずっと夢の中のままだった気がして、勝手にとても重い気持ちになってしまったのでした。



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4 コメント

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重い決断 (tikotiko)
2010-09-07 14:47:41
人生、長いか短いかはその時その環境によっても変わってくるものでしょうが、
大人としての子どもに対する決断というものはほんとに、重く、
責任という重圧から逃れられないいしんどいものですね。
自分だけならまだしも、母親としての子どもに対しての重要な責任と決断は
本当に重いものです。

いつも現実を見つめながら、尊いご本に目を通し、それを読み聞かせ等される
jasuminさんには頭が下がります。

妹も半分楽しみにしながら、おっかなびっくり一生懸命、
グループの読み聞かせ出張に出かけているようですよ。
彼女にとっては日常生活の気分転換と頭の刺激としてもいい体験を加えているようです。
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*tikotikoさんへ (jasumin)
2010-09-08 09:10:36
tikotikoさん、おはようございます。
この本は、本当に希望が持てないくらい重くて辛い内容で
でも、とても感動的ないい本だなぁと思いました。
家族構成がうちと似ているせいもあって、私だったらどうしたか・・・と
いつもいつも考えてしまいました。
行き着いた先は、やはり今だから言える「一緒に」だったのですが
一緒に行っていたら、ハンナもマルカも助からなかったのかもしれないです。
何が最善かは、その当人が決めることであり、他人が判断できるものではありませんね。

自分ひとりで決断すること、このことのストレスは予想以上に大きくて
今は慣れ(?)ましたけれど、離婚当初は大変だったかも(苦笑)
病院をどうするか、新聞を取るべきかどうかまで(笑)悩みの種でしたから。
保護者の欄に自分の名前を書くようになってから、強くなっちゃうんでしょうねー(笑)
それにしても、今は、まったくお気楽な時代です。
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Unknown (マーガレット)
2010-09-16 07:36:04
jasuminさん
心が重くなる読書、感動なんだけどつらい気持ちが残ってしまう読書。単純にお嬢さんに勧められない気持ちがわかってもらえたでしょう?だから本って奥が深いんですよね。
その後どうなさったか興味があってコメントしました。
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*マーガレットさんへ (jasumin)
2010-09-16 09:04:42
マーガレットさん、おはようございます。
「感動」って言葉は難しいですね。とても素敵なことで心が揺れた感じがしてしまう。
この本は、ずっとずっと重くて辛いのに、最後が一番辛かったですね。
それでも娘は読めると思っていました。
いろいろ事情があり一旦返却したのですが、そのうち読めると思っています。
ちょっとだけマーガレットさんにメールさせて頂きますね。
どうもありがとうございます。
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