Mooの雑記帳

日々の感想などを書いていきます。

12月26日(火) ブロック注射と読書

2023-12-26 23:58:00 | 日記

今日は午前11時に整形外科に行き、帰ったのが午後3時半。診察時間はほんのわずかでしたから、約4時間は病室で待っていたということになります。
ほとんどの人は、その待ち時間の長さには耐えられないと感じるでしょうね。ひょっとしたら怒りを爆発させる人がいるかもしれませんし。とはいえ、見たところ、みなさんひたすら待ち続けていましたから忍耐強い。

ただ、私の感覚では、いかに整形外科の患者が多くなっているか、医者がどれほどの多数の患者を相手に悪戦苦闘しているかを知っているので、実は全く苦にはならない。
今日は膝の医者と腰の医者のダブル受診であり、腰の主治医からは4番のブロック注射をしてみようと言われていたので、それなりに覚悟をして受付に行ったのでした。

膝の担当医には「膝そのものの故障ではないだろうとはっきりしたので、あとは腰の先生と話をします」と告げて、1、2分ほどで診察は終わり。始めは膝の故障もありうるので、膝に注射をしながら様子を見ようということにして、何回か注射をしてもらっていたのですが、結局効き目はなし。しかも、立っているときや膝を曲げるときには支障は全くなく、寝ている間の痛みが中心だったので、先生も次第に、これは膝から来ているのではないという診断に変わってきていたのです。

普通の診察とは異なって、ブロック注射は別の診療科での対応になるので、一旦整形を離れて、その担当医の診察の区切りがつくまで待っていなければなりません。だから余計に時間がかかる。
12時半頃に整形の診察を終えて、ブロック注射に移ったのが午後2時。

何度やってもこの注射には慣れないですね。針が脊髄に達したときの瞬間の痛みと薬剤を入れるときの数秒の鈍痛。本当にわずかな時間なのですが、やはり直前の恐怖には大きいものがある。
痛みには結構慣れていても、相変わらずです。

「先生、昼食はとられたんですか」と聞くと「食べている訳ないじゃないか」と突き放すような返事。あとから「ちょっとそこにあったものはかじっていたけど」とのフォローはあったものの、整形の医者の実態はそんな感じなのです。
私の痛みの原因がどこにあるのかを探しあぐねているイライラもあったのでしょうかね。ともかく、この注射の経過を見ながらその後の治療方針を決めることになりました。

***

長々と診察・治療の様子を書きましたが、まだ「4時間も待たされて全く苦痛を感じない」本当の理由を書いていません。前にも書いたことがありましたが、私にとっては、待ち時間が一番有効な読書の時間なのです。もし、一冊の本を持って行っていなければ、やはり他の方と同じく試練の時間になるでしょうね。

今日携えていったのはR.A.ハインラインの「夏への扉」(ハヤカワ文庫)でした。
20年ほど前から原書で読もうと思って数ページ読み始めたのですが、あるところで躓いてしまって、訳本もそこでストップ。20年ぶりに読破するチャンスが巡ってきたというわけです。

このSFの解説はいろいろと出ているので、ここでは詳しくは書きませんけれど、コールド・スリープとタイムマシンで30年を前後するストーリーよりも、可能な限り当時の科学的知識をフルに生かしつつ、多様な人間模様を生き生きと描き出そうとする作者の姿勢には感服します。
さらに、登場する二人の主人公の一人(一匹)がネコという「愛猫家にはたまらないSF」と言われていますからね。
後半に行けば行くほど手に汗握る展開という、サービス精神旺盛な構成の巧みさにも舌を巻きます。

実は、先日紹介した「火星にいった地球人」のシリーズ、世界少年少女科学冒険全集の第1巻がハインラインの「宇宙船ガリレオ号」だったのです。「火星にいった・・・」よりは印象は薄いのですが、この全集でどれを勧めるかと言われれば、この2冊を挙げるでしょうね。やはり全集の最初の頃の巻は印象深いものがあるのでしょうか。

「宇宙船ガリレオ号」は、ノーベル賞候補とも言われる若き科学者と、中学を卒業したてくらいの甥とその友だち二人で月へ行くという設定。
終わり頃にはナチの基地が月に建設されていて地球への攻撃が企てられているという、当時の世界情勢を反映したような波乱に満ちた展開は、この当時からハインラインの十八番だったのでしょうかね。

中学卒業したての男の子3人はいずれも各分野に優れた知能と技能を備えているという、ちょっと出来すぎの設定ではあるのですが、博士と子ども達の間のこんな描写がありました。

「数学はどこまで知っているの?」
「微分方程式をおわりました」
「ちょっと待ちたまえよ。君たちはまだ中学校なんだろう」
「卒業したところです」
「中学校で微分方程式を教えるなんて。おどろいたなあ」
博士は頭をふった。

ハインラインはアメリカ・カンザスシティ生まれ、ドイツ系のアメリカ人で、海軍兵学校から米海軍の士官となった経歴を持ち、無線通信に関わったとされているので、相当に物理・数学などには取り組んだのでしょう。

日本では、かつて高三で学ぶ微積に微分方程式があったのですが、もう教育課程から姿を消して久しい。一方のアメリカで大戦直後とはいえ、中学で微分方程式を学ぶという課程が当時あったのかどうか私にはにわかには信じがたい。
ただ、現在の高校のカリキュラムでは、理系向けのAP Calculusというコースがあるようですから、高校ではそのようなことはあり得る。

あるアメリカ人高校生は次のように書いていましたよ。

AP Calculus AB/BCは一般的に短くして "calc" と呼ばれているクラスです。
アメリカの方が数学は遅れている」と思ってる人もいるかもしれないが、calcは日本の高校数学で習わない範囲もありかなり難しい。
このクラスを取るためには、AlgebraやGeometryのほか、Pre-calculusを修了していなくてはいけません。このことから、高校で取れる最も難しい数学のクラスと言われています。

大学程度の高度な数学も学ぶといいますから、こうしたコースがアメリカの科学水準を支えているのかもしれませんね。ハインラインは、大戦直後のアメリカの子ども達に、もっと勉強しようねと語りたかったのかもしれません。