昨日の信濃毎日新聞25面には、有事を念頭にした沖縄県民の「本土」への避難計画について、大きな記事が載りました。それによると、主に石垣市など離島の12万人を九州、山口県に分担して移送、その受け入れを各県に申し入れたというのです。沖縄県の試算では、12万人を航空機や船舶を使って1日当たり2万人、6日で避難完了の計画だというのですが、これは全く「平時」の試算。そもそもの想定に無理があり、近海で戦闘があったり、本土の基地が攻撃されたり、沖縄本島自体が攻撃の対象になったりする想定はない。病人、高齢者などをどう扱うのかについても決まっておらず、避難が長期化した場合のことも考えられていないのですから、計画と言えるシロモノではありません。周到にこんな計画を立てているのですよと宣伝したいのでしょうが、全くの棄民政策であり、住み慣れた土地を追われる住民はたまったものではありませんね。
そもそも、なぜ避難が必要になるのかといえば、先島諸島をハリネズミのように武装しているからで、何かあれば真っ先に攻撃されるのは長距離ミサイル基地など軍事基地になるのは常識的なこと。もっとも狙われるのは本島の米軍基地でしょう。米軍の中心は空母と航空機を主体とする空母打撃軍ですから、危なくなればさっさとグアムなどの基地に引き上げる。あとは米軍に指揮権を握られた自衛隊にお任せということは昔から分かっていることです。
それを米軍が守ってくるなどと信じ込んで(信じ込ませて)自衛隊基地を強化し続けるこの国のアメリカ盲従策の犠牲になるのは、またもや沖縄県民です。
沖縄タイムス紙にジャーナリストの金平茂紀さんが「『新しい戦前』の中、集会に変化、若者中心の市民参加型に試練も」という記事の最後で、信毎の伝説の論説主幹桐生悠々のある一文を紹介1していました。この一文は日本軍による防空大演習を批判したものですが、今回の避難計画にもピタリ当てはまるものです。
「私たちは、将来かかる実戦のあり得ないこと、従ってかかる架空的なる演習を行っても、実際には、さほど役立たないだろうことを想像するものである」
今、大浦湾だけではなく、周辺の緑豊かな土地をはげ山にしているのは誰か。本部の土砂採石上だけではなく、本島の南部で遺骨混じりの土砂を採掘し基地埋め立てに使おうとしているのは誰か。先島諸島の先祖伝来の土地を掘り削って戦争の最前線に変えているのは誰か。
おそらく、圧倒的な本土の人々にはその実態は全く知らされてもいないし、また知ることもできない。
荒唐無稽な避難計画を立てる前に、中国とは絶対に戦争状態を起こさないとの姿勢を明確にし、軍事基地などをなくすこことの方が大事でしょうに。
12月1日まで予定でニューヨーク国連本部で開かれている「核兵器禁止条約の第2回締約国会議」では、核抑止の幻想を排し、完全な核兵器禁止を実現することへの決意が相次いで示されています。
日本政府の立場は、それとは真逆の戦争を呼び込む政策に他なりません。軍拡の影で大もうけをあげているのはこの国の軍事産業。いったん道が作られれば際限のないことは、現在のアメリカやロシア、中国がよく示していることだし、戦前の日本が何よりの証左です。