Mooの雑記帳

日々の感想などを書いていきます。

10月21日(金) とぜんそう

2022-10-21 12:59:23 | 日記

私の旧ブログにも一部頂戴した「つれづれ」は、勿論兼好法師の徒然草を意識したものです。
「明け暮れのつれづれ」とでも言えば、物寂しさという意味にもなるのでしょうが、私にはどうせ安曇野暮らしでは時間を持て余して、手持ちぶさたを何か書いて暇をつぶすかという思いが込められていました。実際には全然そうはならなかったのですが・・・。

この「つれづれぐさ」は実は「とぜんそう」という薬草の雅名であり、乾燥させると強い芳香を発して幻覚作用がある。兼好は、家の中で吊したこの芳香による心地よい幻覚の中で、夢とも現ともつかぬ間をさまよう状態を「つれづれなるさま」と呼んだ。当時の文人墨客の書斎にはなくてはならぬものとされ、平安から鎌倉、室町にかけての文学はこの影響を抜きにしては語れない。

劇作家の別役実氏(2020年没)「道具づくし」の中の一文「とぜんそう」の書き出しの概要です。全文はここでは紹介できないので、紹介しているサイトがあるのでごらんいただきましょうか。これはもちろん、別役氏一流の博識と機知に富んだ「専門家を装う」ウイットであって、何も知識のない年頃なら「へェ~~」と信じ込むかもしれませんね。

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最近、政治的なものばかり読んでいるのに疲れて、布団に入ってから眠り薬にしているのが、筑摩書房「高校生のための文章読本」です。上の別役氏の一文は、これに収録されていたものです。同種の一般人向けの教養書として「近代の文章」とか「現代の文章」などが多数刊行されています。(「文章読本」は絶版かな?メルカリなどでは出品されているようです)
私が高校生の頃にこのような本に出会っていたなら、随分と考え方が鍛えられ、思慮深い人間になっただろうにと思うほどの、私にとっては大切な一冊なのです。

編者によって精選され吟味された短文の一つひとつが、味わい深いだけではなく、人間が自己の内面に湧き出た思いや伝えたいことを文章として創出するとはどのようなことなのかを、いろんな角度から照射し気付かせてくれる。決して高校生だけではなく、年を重ねた私のような人間にもこうした導きの本は必要なんじゃないかなあ・・・。
もっとも、大町で教えていた高校生たちに、何度か紹介したことはあったけれど、余り興味を示してくれなかったっけ。