●〔85〕小谷野敦『童貞放浪記』幻冬舎 2008(2008.09.01読了)
○内容紹介
T大出だが童貞の大学講師・金井淳(30)は、好きになった後輩・北島萌(27)と、ついに同衾にまでこぎつけたが―。 「三十にもなって!」と彼女は叫んだ。青春と呼ぶには遅いが、青春としかいいようのない、せつない100%私小説。
市民図書館で借りました。「童貞放浪記」は初出の時点で読んでいます(
拙ブログ参照)。他に、 「黒髪の匂う女」、「ミゼラブル・ハイスクール一九七八」の2作が収録されています。
「黒髪の匂う女」のヒロインのモデルは佐伯順子ということです。佐伯順子は著者の大学院の先輩で、『評論家入門』では彼女に対する複雑な感情が述べられています(
拙ブログ参照)。
著者と佐伯順子の間にそのような関係があったのか、なかったのかはわかりませんが、以下のような描写もあります。佐伯順子はどう思っているのかな?
彼女は、性的には大胆で貪欲だった。「どんな好きな人でもできないと思っていたのに」と言いながら私の要求に応えて、嫌がる女も少なくない性戯を行ったし、さらに、多くの女の嫌がる行為も、いつしか自然に行うようになっていた。さすがは、人情本の研究をするだけある、と私は感嘆した。そして、嬉しかった。ひといくさ終えた後で、まだ足りない、と求めてくることもあった。十一月後半には、休みだったため、私の部屋に三日続けて泊まり、匂宮と浮舟のような日々を過ごした。(p.108)
「ミゼラブル・ハイスクール一九七八」は著者の高校時代のいじめを描いた作品です。いじめグループの親玉が高木貴志です。
高木貴志が、九州のほうの大学で教授になっていて、相変わらず周囲の弱い者をいじめていると、風の噂に聞いたばかりである。「悪人は死ぬまで悪人」という私の確信は、強まるばかりであった。(p.190)
モデルは久木尚志北九州大学教授です。小谷野敦のブログ「猫を償うに猫をもってせよ」では、実名を出し、
「久木には、本気で死んで欲しいと思っている。」と書かれています(
「高校時代のいじめ」)。
なお、「童貞放浪記」は映画化されるそうです。
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