●〔13〕吉本敏洋『グーグル八分とは何か』九天社 2007 (2007.02.18読了)〈2007041〉
○内容紹介
グーグル八分(グーグルはちぶ、Google八分)とは、インターネットの検索エンジンであるGoogle(グーグル)で本来なら上位に表示されるはずのウェブサイトが、検閲などにより検索の対象から外れるよう操作され、検索の結果に表示されない状態をいう。村八分になぞらえて呼ぶ言葉である。悪マニのBeyond(吉本敏洋)氏がグーグル八分の本質に迫る。
グーグル八分(Google八分)とは、公正中立と思われているGoogleの検索結果から、特定のホームページが意図的に削除されていることをいいます。削除は、企業や政治家などの「社会権力」からの要請に従い、Googleが一方的に行うものです。ネットによって、市民が自由に表現を行える場が出来たと考えられていますが、権力を持つ側にとって都合の悪い事実は、検索によって見つからないよう、密かに隠蔽されています。この本は、その事実を書いた日本初の書籍です。
私がグーグル八分を始めて知ったのは佐々木俊尚『グーグル Google-既存のビジネスを破壊する-』文春新書(2006)の中でした。その後、あちこちでこの名前を聞くようになりました。
著者はグーグル八分の栄えある第1号(?)「悪徳商法?マニアックス」の管理人です。
「第2章 グロービートジャパンに関するグーグル八分」で、なぜ「悪徳商法?マニアックス」がグーグル八分になったかが詳しく述べられています。
「第3章 様々なグーグル八分」では、文字通り様々なグーグル八分について述べられています。こんなにグーグル八分になっているサイトがあるとは知りませんでした。
グーグル八分されている場合は、ページの下部に
Google 宛に送られた法律に関するリクエストに応じて、検索結果のうち XX件を削除しました。必要に応じて、ChillingEffects.org で削除が発生したことに至った苦情を確認できます。
という表示が出るそうです。
「第4章 グーグル八分と表現の自由」では弁護士や日本図書館協会へのインタビューが載せられています。
グーグル八分と直接関係ありませんが、面白かったところを。
――「図書館の自由に関する宣言」にも例外規定がありますよね。
西河内(引用者註:社団法人日本図書館協会「図書館の自由委員会」副委員長西河内靖泰氏) はい。図書館では、原則として全ての資料を自由に利用できるようにすべきだと考えています。しかし、「人権またはプライバシーを著しく侵害する資料」については制限を加えています。
「図書館の自由に関する宣言」では具体的に明記していませんが、想定しているのは『地名総鑑』なんです。「図書館の自由に関する宣言」を作った当時、具体的に書くと差し障りがあったため、抽象的に書いていますが、制限の対象となる資料は『地名総鑑』だけです。一部の古地図や行政資料なども『地名総鑑』と照らし合わせると具体的にわかってしまいますから、それが含まれることもあります。歴史的経緯を知らず拡大解釈している図書館もありますが、暗黙の了解でこれはもう限定されています。(p.209)
――そもそも私が協会に興味を待ったのは、山口県の専門学校生殺害事件に関して、図書館が新閲の閲覧制限を行っていたからです。また、週刊誌が名誉毀損で負けたから、該当する記事を見られないようにするといった対応も閲いたことがあります。
西河内 閲覧制限をしている図書館にもいい分はあるでしょうが、我々はすべきではないという見解をずっと出しています。
――それはどうして、すべきではないということなのでしょうか?
西河内 公けに出版されたものだからです。出版された時点で出版社からは既に手が離れています。裁判所のほうでも、基本的に図書館に制限しろとはいいません。要は、影響力が小さいということでしょうね。ネットと違って、一瞬のうちに広がるわけではありませんし、そこに借りにいくという手間もあります。影響は極めて限定的です。
山口の件では、山口県内で制限しているところが一つもないのがおもしろいですね。制限しているところには共通点があって、大かた解放同盟(以下、解放同盟と表記)が強い地域です。解放同盟の差別糾弾などの過去があって、それに対する過剰反応なのでしょう。過去のトラウマがあって、人権がどうのという話になったとたんに思考停止してしまう。その結果、逆にみんなから批判を浴びることになってしまいます。また、図書館だけで判断すれば、当然、図書館の自由があるから「隠すのはダメ」となるけど、教育委員会とか役所が絡むと自由なんて吹っ飛んでしまいます。(pp.213~214)
〈To be continued.〉