◎中野雄ほか『クラシック名盤この1枚-スジガネ入りのリスナーが選ぶ-』知恵の森文庫 2003(2008.02.09読了)
〈2007194〉
(承前)
きわめてマニアックな、カルピスの原液を煮詰めたような濃い本でした。厠上の書。
○ハイドン 交響曲第94番「驚愕」、第101番「時計」
カール・リヒター指揮ベルリン・フィル 録音:1961年 独DG
ところで、このリヒターとムラヴィンスキーは、飲み友だちだった。ムラヴィンスキーがウィーンを訪問した際、両者は酒場でおちあい、朝まで飲んだ。そのとき、当時のソ連の付き人が「ムラヴィンスキーが逃亡した!」と騒いだらしい。そ翁にしても、この2人、どんな会話をしたのだろう?【平林直哉】(p.13)
○ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第14番Op.131
カペー弦楽四重奏団 東芝EMI
この曲、私が耳にした最初のベートーヴエンの弦楽四重奏曲であった。ゴールドベルク=クラウスのモーツァルトで触れたSPコレクションに含まれていた4枚組であるが、思い起こせば田舎町の中学3年生が、初体験で途方もない名曲、名演に出会ったものである。後日、比較的良好な復刻がなされている東芝EMIのCDをカセットーテープにダビングして、ヴァイオリニストの諏訪内晶子に贈ったことがあるが、翌朝母堂から「晶子は繰り返し7回も聴いたんですよ」という電話があった。今をときめくロータス弦楽四重奏団の発足時、これを聴いた彼女たちが、「クァルテットやめようか」と1週間余り、真剣に思い詰めたという挿話が懐かしい。【中野雄】(p.284)
○モーツァルト ヴァイオリン・ソナタK454、同K304
ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第10番、同第3番(「ブザンソン・ライヴ」)
クララ・ハスキル(pf) アルテュール・グリュミオー(vn) 録音:1957年 独MUSI
チャーリー・チャッブリンは、生涯に出会った天才はわずか3人(チャーチル、アインシュタイン、ハスキル)に過ぎなかったといったという。そのチャップリンー家との散策のひとこまは、なぜかハスキルとカザルスがそっぽを向いている。写真を撮られていることにはまったく無関心で、となりの女性(チャップリンの愛娘か)を見つめている。すぐにひとつのことに集中してしまう、ハスキルらしいスナップだ。【大場英章】(p.349)