人間は、売買という知恵を生み出しました。
モノを売買すれば、生産能力の間接的交換ができるようになります。
やがて、生産能力だけでなく知恵も売買するようになり、すぐれモノを考えた人にはそれを売る道筋も作られました。
人間の知恵は、もって生まれた頭の働きですから、元手は掛かりません。
教育や研究にカネがかかるといっても、教育や研究を営業材料にするからカネがかかるので、そこで悪知恵が働かなければ、人間の知恵は皆で利用することができるようになるはずでした。
悪知恵の応用で、一部の人々にとってはこの上なく便利、多くの人々にとってははなはだ迷惑なしくみも作られます。
知恵が売買されても、そこで生まれた利益は、知恵を出した人のものにはならず、売買の仕事をした人と、売買させた人に吸い上げられる仕組みも出来上がってしまいました。
知恵が売買の対象になれば、売れそうな知恵しか取り上げられません。
そうしているうちに、売れることと優れていることの区別もつかなくなり、果ては <売れること>=<優れていること> という奇妙な公式ができました。
知恵の売買は、そのおかげで知恵の出し惜しみや出た知恵を隠しておくほうに知恵が回り、成長の減速に大いに貢献することになりました。