三人目の魔女役ユリアに取り付いた金髪のメギリヌは、アームバンドまで含めて、純白のフォルターネックの衣装で決めている。大きなベールを持って登場すると、ステージ中央で数回回転する。ベールを投げ捨てると、雪の妖精が地上に舞い降りたような動きで、「エル・バストン」(“El Baston”)をバックに踊り出す。アサヤと呼ばれるステッキを身体の一部のようにあつかって、観客の目を集める。全身のシルバー・スパンコールが、雪の結晶のように光り輝く。
二人を従えて、再びリギスが中央に来て歌い出す。
愛、答えは愛
愛だけが呪いを解くことができる
だが、愛はどこにあるのか?
愛は見ることができるのか?
愛はさわることはできるのか?
たとえ、見つけることができても
たとえ、見ることができても
たとえ、さわることができても
それはさっきまでと同じ愛なのか?
それは魔神の望む愛なのか?
三人は、群舞に入って「クレージー・フォー・ユー」(“Crazy for You”)をバックに舞台狭しと踊り出した。魔女たちに微笑まれると聴衆から歓声があがり、魔女たちに睨みつけられると思わず悲鳴が上がった。まだ聴衆たちは、今日のパフォーマーたちが尋常ではないと気づいてはいない。
パフォーマンス・フェスティバルは、第二幕「真っ青な昼の海は、太陽神アポロンが空を駆けめぐる刻」に進んだ。城の支配者で太陽の化身である三神が降臨する。太陽神コロナ役のダニエルが、インカ帝国の戦士のような衣装で登場する。引き締まった筋肉とセクシーな顔立ちに、女性客の目が吸い付けられる。ヴァンパイアが太陽神を演じては文句が出そうだが、元々が天界の住人だったのだから昔取った杵柄というべきであろう。
ケイティが、すぐ気がついた。
ヒッ、鶏が首をしめられたような声を出して、横に席にいるナオミを肘でつつく。
「ク、ク、クリストフ・・・・・・」
「いったい何?」
「クリストフ!」
「まさか?」
「でも、クリストフだよ」
「あの能天気なクリストフにしては、暗すぎない? パンフレットには、え〜とダニエルと書いてある。でも、たしかに面影はあるわね」
「ぜ〜ったい、まちがえるはずない。毎日、いなくなってからも部屋に写真をかざって見てたんだから」
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