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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第一部 第2章−1 天界の召集令状

2019-07-05 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 遠く映るその影が太陽の黒点として知られる四次元空間エリュシオン。
 そこにユピテルの支配するオリンポス神殿がある。
 もしもネプチュヌスやプルートゥが人間界の支配を望んだとしても、エリュシオンの支配などはけっして望まない。ここは「光の眷属」でなければ瞬時に蒸発してしまいかねない光と灼熱の空間。
 海神界や冥界から婚姻により移り住んだ神々と神の座の末席をけがすことを許されたごく少数の住人がいるだけの場所。例外は、タンタロス空間での贖罪を済ませた人間の魂が忘却の川レテの水を飲んでから転生するまでの限られた間に滞在するのみ。
 いつもならのんびり飛び回る神殿の極楽鳥が緊張に包まれている。
 リーダーの錦鶏鳥と銀鶏鳥もただならぬ気配を感じて宿り木から離れようとしない。
 大広間では「天翔るもの」ユピテルが怒りのオーラを発散していた。こんな時にうっかり近づこうものならユピテルを熟知した神官でも生の保障はない。黄金の光につつまれた全身から四方八方に発せられる雷鳴と稲妻こそユピテルを最高神の頂点に立つものたらしめている秘密。
 たとえ神々でも、ユピテルの電撃をまともに受ければ粉々に飛び散りその存在は永久に失われる。海主ネプチュヌスは水を支配し、冥主プルートゥは火を支配する。
 だが水は高熱を苦手とし、火は流水や氷を苦手にする。ネプチュヌスとプルートゥがそれぞれの弱点をかかえているのに対し、ユピテルの雷撃は業火をなぎ倒し流水を蹴散らす万能の兵器だった。
 ユピテルが、会議の開始を伝えた。
(皆の者、面をあげよ)
 中央に位置するのが親衛隊長で「継ぐもの」アポロニアだった。父の「輝けるもの」アポロンから美貌を、母の「森にすむもの」ケイトから勇敢さを受け継ぎ、神界最強の女神と言われる。自慢の金髪が軍服姿に映える。ケイトの血筋を引くものたちは、かつて人間界でスキュティアの地にアマゾネス王国を築いたと言われるが、真偽のほどは確かめようもない。
 デルファイ神殿に住む、各々が百万の兵を率いる三軍の長を務める息子たちも顔を揃える。アポロニアが父アポロンに代わり天界の守護を任されるようになってから長い時が過ぎていたが、息子たちが勢揃いするたび母として彼女は誇らしい気持ちになる。
 長男の光の軍団長で「光り輝くもの」シリウスは輝くばかりの毛並みの美しい銀狼。第一次神界大戦でレインボー・スクラッチと呼ばれる鋭い爪から繰り出される技で百万を越える冥界のギデオンを引き裂いたことは、いまだに語り草になっている。
 次男の雷の軍団長で「対抗するもの」アンタレスは全身にハリネズミのような毛におおわれた雷獣。ボール・ライトニングという技を持ち半径1キロの敵を全滅させるほどの電撃を発することが出来る。のっそりと図体が大きいため、ユーモラスな雰囲気を漂わせる。
 三男の天使長で「率いるもの」ペルセリアスは金色の鷲。兄弟の中でも一番の伊達男で明晰な頭脳はアポロンの血を色濃く受け継ぐ。流れ星の速さで宙を翔け、天界広しといえどもユピテル以外にはこれほどのスピードを持つものはいない。
 末っ子で真紅の龍の「舞うもの」コーネリアスだけは組織嫌いで、率いる部下も従う上役もいない。天邪鬼ゆえに自由にさせておけとユピテルからお墨付きをもらったのをよいことに、修業にばかり精を出している。
(いよいよ三神界によるゲームが始まった。アポロニアよ、まずお主の考えを聞かせてもらおう。今回の件にはアポロノミカンが関わっておるのじゃ)

          

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