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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第12章—5 波乱要因

2019-04-29 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「明日からはミシガン山中で楽しいテーマパーク巡りが待っているわ。何か話しておきたいことがあるなら、今日が最後のチャンスよ」
「実は、アストロラーベと話をしたの」
「お兄様と?」
「あなたとわたしには、アストロラーベの秘術によって何かすごいことが起こるらしいわ。その前に、あなたと話し合いをしておくことをすすめられたの」
「ふ〜ん、お兄様らしくもない気配りね」
「アストロラーベは、おばあさまはわたしがどこに行っても、教え導くものと助けてくれる仲間に恵まれるように魔法をかけておいたくれたことを知っていたわ。たとえ今回のように勝ち目のないと思われる闘いでも・・・・・・」
「あなたがいれば、勝機を見いだせるかも知れないとでも言われた?」
「よくわかったわね。わたしはトラブルに引き寄せられる星の下に生まれたマーメイド。アストロラーベは、だからこそわたしが波乱要因になれると言っていたわ」
「波乱要因?」
「このままでは巨大な闇の力には対抗できない。だけど、トラブルが大きくなればなるほど、それは相手にとっても不確定要素が増える。そのために、わたしが必要だったと」
 たしかに、と心の中でマクミラは思った。今、必要なのはまさに波乱要因だ。
「でも、あなたに会いたかったのはアストロラーベに言われたからだけじゃないの」ナオミが続けた。「教えて欲しいことがあって。中途半端にマーメイドの記憶を持って人間界に来て、これまで不可解な思いばかりしてきた。だけど、相談できる相手なんていなかった。冥界時代の記憶も完全に持っているあなたなら、わたしの疑問にも答えることができるかも知れないと思って」
 マクミラは、冥界の記憶を持っていても自分だって人間の不条理には泣かされどうしだったと思ったが、別のことが口をついて出た。
「いいわ。聞きたいことは何?」ニヤリと笑うと、鋭い犬歯がのぞいた。
「あなたに聞きたいことは二つ。一つは、なんで堕天使や魔性はあんなに人間界に来て強化されているのに、天使は人間界でほとんど無力なの?」
「ほとんどその質問自体がもう答えになっているんじゃない」
「・・・・・・」
「今の人間界に満ちあふれているものは何? 怒り、憎しみ、悲しみ、ねたみ、そねみ。愛、やさしさ、思いやり、助け合いはどこにある? 天使が強化される材料など人間界にあるものか。それに対して、堕天使や魔性とよろこんで手を組むどころか魂を捧げたいと思っている輩の多いことよ。今回のゲームが始まる前には、最高神の中でさえ人間は滅びるべきという意見がでるほど」
「でも孔明だけは人間界に来ても強いわ。なぜなんだろうと思って」
「アイツは天界でも変わりものだったし、それに・・・・・・」
「それに?」

     

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