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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第12章—2 指輪の力

2019-04-19 01:11:14 | 私が作家・芸術家・芸人

 フロイトのそれぞれの指輪の力は、超宇宙的な記号になっていた。
 最初の女神ニケの指輪は、エイドス(形相)の持つ力を呼び起こすことができた。ルーブル美術館のニケの姿が不完全な理由は、実は完全体の彼女の持つ力が強すぎるという説もあった
 二番目の太陽神の竪琴の指輪は、エネルゲィア(活動性)の持つ力を呼び起こすことができた。指輪には、太陽の核融合の力を利用する力さえあると言われている。
 三番目の海主のトライデントの指輪は、ウーシア(存在)の持つ力と結びついていた。トライデントは、海を割り、川の流れを変え、地球上すべての地表が海に沈むほどの雨を降らせることもできると言われている。
 四番目の不死鳥の指輪は、アルケー(起源)の持つ力と結びついていた。不死鳥の指輪を操るものは、生と死の境界線をなくし、何度も蘇る力を持っていると言われている。
 五番目の月の女神アルテミスの指輪は、テロス(目的)が呼び起こす力と結びついていた。アルテミスの指輪は、目的のためならすべての手段を正当化し、その目的の邪魔になる者すべてに悪のレッテルを貼る力を持っていた。
 そして最後のスフィンクスの指輪は、アレーテイァ(真理)の持つ力を呼び起こすことができた。スフィンクスの指輪を持つ者は、何が真理で、誰がそれを持つかを決める力があると言われていた。
 フロイトが目指したのは、実は精神病の治療よりも、人間が潜在的に持っている自分でも気がついていない能力を目覚めさせることであった。フロイトは、それができれば結果として悩みや苦しみの解決につながっていくと考えていた。また、他人を犠牲にして成り立つ誰かの幸せなど意味がないとも考えていた。
 そのために、彼が弟子たちに与えた指輪は、彼らの精神世界と現実世界の壁を打ち破り、隠れた可能性を顕在化させるための道具であった。残念ながら彼のそうした社会思想的な側面は、批判勢力によっておとしめられ、理論の性的部分ばかりが強調されて、いつの間にか彼の理論は精神分析という極めて狭い領域に閉じ込められることになった。例えば、キリスト教会はフロイトが理論構築する初期段階で激しい批判者であったことはよく知られている。なぜなら神が自分に似せて作った完全な可能性を持った人間に、「無意識」というドロドロした自分でもコントロールのきかない無秩序で暴力的衝動を含む部分があるなどという意見は、全知全能の創造主に対する冒涜と言えた。

     

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