ものぐさ日記

ひとり遊びが好きな中年童女の日常

『めぐり逢わせのお弁当』

2014年09月28日 | 映画

 シネスイッチ銀座ほかで上映中のインド映画、『めぐり逢わせのお弁当』。

 

 インドでは、宗教などの理由で、各自、食べられるものが違うので、昼食は自家製のお弁当が一般的。ムンバイはインドきっての大都会で、遠距離通勤者も多いのですが、電車の混雑ぶりは東京よりひどいくらい。しかもインドの伝統的な弁当箱というのは、直径15~20cmくらいの筒型が3~4段重なった巨大なものなので、満員電車に持ち込むのはとうてい無理。汁気の多いものも弁当箱に入れるので、こぼれたりしたら、大惨事になるに違いありません。けっこう昼はしっかり食べるので、朝早く、手の込んだお弁当を作るのも大変。…というわけで、ムンバイでは、伝統的に、「ダッバーワーラー」という、弁当運びの職業が存在します。

 ダッバー(弁当)配達業は、各家庭から弁当を回収し、配達する地区ごとに分けて、方向が同じものをまとめ、それぞれの方向の電車に乗せ、同じ町、同じ地域、同じビルのそれぞれの人に、ランチタイムまでに配達するシステム。毎日5千人のダッバーワーラーが、20万個の弁当箱を、正しい配達先に届けています。ハーバード大学の分析によると、配達先を間違えるのは、たったの600万分の1だというから驚きです。

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 イラは夫と娘との3人家族の主婦。夫の帰りは毎晩遅く、たまに早く帰ってきても、携帯電話や自分の用ばかりで、イラと話すこともない。娘が学校へ、夫が会社に行ったあとは、大急ぎで夫の弁当を作り、ダッバーワーラー(弁当配達人)にゆだねると、あとは一人っきりのアパートで家事に追われる毎日。唯一の話し相手は、近所(上の階?)に住むアンティー(おばちゃん)だが、アンティーも寝たきりの夫がいるので、部屋から出ることはできない。イラとアンティーの間を、籠が上下に行き来し、スパイスや野菜のやりとりをしている。

 

 ダッバーワーラーは、毎日、夫が出かけた後、弁当を取りに来て、夫が帰宅する前に、食べ後のものを届けにくる。ある日、いつものように、ダッバーワーラーからイラが受け取ると、弁当箱は空だった。いつのは食べ残しがあるので、喜ぶイラ。夫が帰宅すると、ワクワクしながら、きょうの弁当はどうだった?と、夫に尋ねるイラ。ところが夫は、いつもと同じようにおいしかった、カリフラワーのおかずがよかったと、答えるだけ。きょうはカリフラワーなんて、入れていないのに…。もしかしたら弁当は夫以外の人のところに届いたのだろうか?

 アンティーに相談して、イラは弁当箱に手紙を入れてみることにした。

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 イラの弁当箱を間食したのは、早期退職間近の会計士、サージャーンだった。数年前に妻を亡くしたサージャンは、あるレストランと契約して弁当を作らせていた。いつもとは大違いのおいしい弁当と、いつもとは違う弁当箱に疑問を抱いたサージャンは、レストランを訪ねる。何かの間違いで、別の弁当が届いたとうすうす感じながらも、イラの弁当に満足していたサージャーンは、追求しないままにしておく。弁当をほめられたレストランは、カリフラワーのおかずが気に行ったのなら、明日も同じものにしろとコックに伝える。

 ヤモメのサージャーンの夕食は、レトルトの袋のカレーと、パック入りのチャパティーだった。

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 翌日もサージャーンの元にイラの作った弁当が届いた。サージャーンは、チャパティーと一緒に入っていた手紙をみつける。早期退職するサージャーンの後釜として入社してきたシャイクが、サージャーンから仕事の引き継ぎをしてほしいとまとわりつくが、手紙に気を取られたサージャーンはそれどころではなかった。

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 イラの元へ帰ってきた弁当箱はきょうも軽い。イラが期待しながら弁当箱を開けると、手紙が入っていた。「きょうのはちょっとしょっぱかった」。完食したのに、賛辞や感謝のことばも見あたらない手紙にがっかりしたイラは、思わずアンティーにグチをこぼす。「そんなやつには、チリを効かせた弁当を食わせればいいんだよ」というアンティーから、チリが入った籠が届く…

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 …というような、弁当箱入りの手紙が何通か行き来するうちに、会ったこともないイラとサージャーンの間が親密になっていくというお話。その合間、合間に、サージャーンの後任者、シャイクのことや、イラの実家、アンティーの事情なども少しずつわかってきます。

 4段のお弁当箱には、上からチャパティー、2段目にご飯、3段目に水気の少ないおかず(サブジー)、一番下には、汁気のあるおかずが入っています。ときどき、デザートが入っていたり、サブジーが2種類入っていることもあるけど、どれもとてもおいしそう!ゴーヤの詰め物も出てきたので、思わず、我が家の最後のゴーヤで作ってみました。サージャーンの好物のナスのカレーもおいしそう。映画では小ナスでしたので、またまたyoutubeでレシピを要チェックです。

 

 イラの手紙はヒンディーで、サージャーンの手紙は英語でした。映画の中に、1990年代にヒットした映画の曲が2曲出てきました。1曲は、主人公の名前と同じタイトルの映画、『Saajan』の「Mera Dil Bhi」、もう1曲は『Raja Hindustani』という映画から「Pardesi Pardesi」。この曲が懐かしくて、映画を見てからずーっと、「ぱ~るでし、ぱ~るでし、じゃなーなひ~ん。むじぇ ちょ~るけ~、むじぇ ちょ~るけ~」と頭の中で鳴り響いていました。

 『マダム・イン・ニューヨーク』に続き、いいインド映画が見られて幸せ。最近、インド映画も日本で上映されることが多くなってきましたが、『マッキー』 とか『タイガー』、『ロボット』、『Ra・One』などなど、よりによってなぜわざわざこういうのを買い付けてくるかな?という映画も多々あります。去年の『スタンリーのお弁当箱』もシネスイッチ銀座で公開されましたが、今回の映画の方がず~っとおもしろかったです。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
また、観たい映画ですね (よもぎ)
2014-10-02 00:37:01
こんにちわ。

ご一緒させていただきました、よもぎです。
この映画の邦題がいいですね。
また、観たい映画です。

いろいろ細かい所が気になって・・・
なんで、電車のドアが開いているのだ?とか(前の日に磐越西線で、ドアが開いたまま走って急停車したニュースを聞いたばかりだったので・・)
常に人の息が掛かる距離の通勤・・・・とか
いちぢくに見えた茄子が食べてみたいとか・・・(これは、私の頭の中に、いちぢくのコンフォートが食べたい。と、思っていたからなのです。)
洗濯機を回している所を観てみたいとか・・・
インドに行ったことがないので、いろいろ興味が出て来ました。

会社にパソコンがない。とか

書き出せばいろいろと・・・

こういう映画も、日本のテレビで放送してほしいけど・・・今は、視聴率を優先するから難しいかな・・・アイドルとかが優先だもんね。

インドの生活を知らない私にとって・・・いろいろ興味がわきました。そんな映画です。

イラの服も素敵でした。
家のなかでもお洒落なイラは、見習いたいくらい・・・・・
でも、私は出来へんかも。

まだまだ、余韻が楽しめる映画でしたなっしーっー。
と、踊りたいくらい・・・・

こんな夜中になんか変なテンション。
そろそろ・・・このへんで・・・・
お邪魔しましたなっしっー


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たぶん来年WOWOWに (とーこ)
2014-10-02 05:30:51
よもぎさん

たぶん、来年にはDVDになって、WOWOWでも放送されるんじゃないかな、と思っています。

そういえば、インドの通勤電車やバスは、長距離移動用以外は、はじめからドアがありません。地下鉄はあるけど。通勤用の電車はあんな感じなので、女子は女性用車両に乗ります。いっぱいで乗れないときは、あの環境で耐えるしかない。

パソコンは、あるところにはありますが、停電が多いので、電卓で計算した方が早いのかも…?お弁当を食べる食堂も完備された、けっこう大きな会社だったみたいですけどね。

実家の庭にいちじくの木があります。今年もたくさんなっただろうなぁ…。
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